1-12 帰るまでがクエスト










「な、、、、」


「う、うそ、」


「やりやがった、」


 驚愕するウィル、リサ、キース。


 ケンゴは3人のもとに駆け寄る。


「大丈夫でしたか?怪我はないですか?」


 そこに全てのゴブリン達を倒したハクも駆け寄ってくる。


「ウォン!」


「ヨシヨシ、ハクもありがとう、偉いぞ!」


「クゥ〜ン」


 甘えてくるハクを撫でて労うケンゴ。


「ケ、ケンゴさん、この度は、ほ、本当にありがとうございました!!!!」


 基本丁寧なウィルがさらに丁寧にケンゴに礼を言う。


「ど、どうしたんですか、ウィルさん?そんなに気負わなくても、」


「いいえ!そんなわけにはいきません!もしケンゴさんがいなかったら、僕たちはこうして生きていませんでした!」


「お、俺からも、本当にありがとう!この恩は一生忘れねえ!」


「私も、ありがとう!!!!」


 続けてキースとリサも深く頭を下げる。


「き、気にしないでください!大丈夫です!」


 全員に低姿勢で来られ、大慌てのケンゴ。


「そう言うわけにはいかねえ!ルーキーだからって上から目線で調子に乗って、挙句こんな事に巻き込んじまったんだ!」


「でもケンゴくんすごく強かったから、こうやって感謝の気持ちを表せるのよ、」


「強かったと言う次元ではありません、正直言って、恐ろしいです。ですがあなたがいたからこそ今こうして五体満足でいられるのです。ありがとうございます。」


「み、みなさん、」


 純粋な感謝の気持ちを受けて、どうしていいかわからなくなるケンゴ。


「クゥ〜〜ン、、、、」


 そんなケンゴの手をペロペロと舐めながら早く行こうと急かすハク。


「と、とりあえず、帰りましょう。帰って美味しいものでも食べましょう。」





 ------------





「な、なるほど、武術なんだな、」


「あのような人間離れしたことができる武術、、、、」


「ごめん、ちょっと信じられない。」


「あ、あはは、、、、」


 帰りの道中、ケンゴは3人から自分の力の秘密を聞かれていた。


「俺の記憶では、あの体格の変異ゴブリンを素手で破壊できるやつはいねえな、」


「確かに、、、、」


「はい、そんな人は空想上の英雄かSランク冒険者達ぐらいですね。」


「そ、そんなことないですよ、み、皆さんお世辞がお上手ですね、」


「「「・・・・」」」


(((悪気はないんだろうけど腹立つなぁ、、、、)))


 ナチュラルに反感を買うケンゴ。

 一行は帰り道、ケンゴの力の秘密について訪ねていた。


「ざっくりとした質問だけどよ、そ、その武術ってのはどんなスタンスなんだ?」



「スタンス、ですか?」


「なんつぅんだろうな、とにかく強く打つとか、逆に相手の力を利用するとか、」


「・・・・」


 おそらく剛よく柔を断つ、柔よく剛を制すだろう。


「そうですね、相手の力を受け流すこともしますが、どちらかというと自分の力を利用することが多いですね。足の踏み込み、腰の回転、関節の可動、そこから発生する力を体を循環させ、それらを時に防御に、時に攻撃に使っています。」


「「「な、なるほど」」」


(なんか、あれがあれしてああ何だな。)キース


(身体操作の究極形?)リサ


(身体強化魔法を極めた結果でしょうか?)ウィル



「元々は火山の噴火や滝の流れ、津波などの天災、陣地の及ばぬ物を人間の体で再現できないかと考えられて始まったらしいです。」


「へぇ〜、ケンゴの技もそうなのか?」


「あ、はい、僕のは僕の知っている武器を再現してみた物です。」


「武器?槍とか、剣とかか?」


「ええ、あとは火薬の爆発を利用した武器を参考にしたものが多いですね、」


「火薬?何だそれ?」


「あ、えっと、ぼ、僕の村で使われてる火がつく薬ですよ、ぼ、僕の村は魔法に疎いですので。」


「へぇ〜、そんなもんがあるんだなぁ、」


(危なかった〜、火薬はこっちじゃ存在してないんだな。)


「にしても、未だに信じられません、拳撃や蹴撃であのレベルのモンスターを完膚なきまでに叩きのめせるなんて、」


「ほんとよね、それにこんなに強くて可愛い使い魔までいるものね。」


「ウォン!!!!」


 ピンチ後の平和な時間を満喫していると、いつのまにか一向は街にたどり着いていた。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ハァーーーー!!!!生きて戻ってこれたぜー!!!!」


「本当にね、よかったわ、」


「街に着いたことで、改めて実感しました。僕たちは生きているんですね。」


 完全に夜になった頃。噴水のある広場にて、キース、リサ、ウィルは無事に街に辿り着けた事実を噛み締めていた。


「改めて、ケンゴ、本当に助かった。ありがとう。」


「ありがとう、ケンゴくん。」


「ありがとうございます。」


 深々と頭を下げる3人。


「ほ、本当に気にしないでください!あ、頭を上げてください。」


「そうはいかねえさ、お前は命の恩人だ。」


 そう言ってキースは頭を下げ続けた。


「よし、このクエストは今週が期限のクエストだ、いい時間だし、今日は一旦帰って疲れを取るってのはどうだ?」


「賛成よ!」


「はい。」


「わ、わかりました。」


「よし、じゃあ明日の朝の鐘のなる頃にこの広場に集合だ!ケンゴも忘れないでくれよな!恩返しができねえから!」


「は、はい!!!!」


 こうして、とんでもない事になったゴブリン退治は無事に終わりを迎えた。


 その後ケンゴは真っ直ぐイリスとレナの待つ屋敷に向かう。


「おかえりなさいませ!ケンゴ様!」


「おかえりなさいませ、ケンゴ様」


「こ、こんな僕に、わ、わざわざお出迎えありがとうございます。」


「ウォン!!!!」


 2人の熱烈な歓迎に押されるケンゴ。


「少し遅いおかえりでしたねケンゴ様、ちょうどよく夕食の時間ですので食堂へどうぞ。」


「はい、ありがとうございます。」


「ケンゴ様!今日の冒険はどのような冒険でしたか?是非ともお聞かせください!」


「はい、喜んで。」


 ケンゴの激動の1日が暖かく終わったのであった。








 




 ☆前回登場モンスター☆


 ゴブリンロード

 ランク=限りなくSに近いA

『バーサーカー』『ウォリアー』『ハンター』

 通常のゴブリンが濃い魔力を取り込んだ上で幾多の闘争を繰り返す中で身体的にも戦闘技術的にもとてつもない進化を遂げた個体。

 鉤爪を持った個体がバーサーカー

 槍を持った個体がウォリアー

 杖を持った魔法を使う個体がハンター

 通常ゴブリンは単体の脅威としては下位に分類されるが、なぜ彼らがロード種になるほどの濃い魔力があったのかは不明。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る