第97話 夢

 まだ僕らが付き合ってすらいなかった頃。


「君が昨日夢に出て来た」


好きな子にこう言われて嬉しくない男子はいない。


でも興奮マックスも恥ずかしい奴なんで、僕は平静を装った。


「へぇ〜そうなんだ。どんな夢だったの」

「歯にイチゴの種が挟まって、取れないから取ってって頼んだら」

「何それ……」

「手元が狂ったのか歯茎に爪楊枝立てやがったから腹が立って手に噛み付いてやった」

「えぇ……」


これが数年越しに正夢になるとは僕も彼女も思わなかったことだろう。

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