第39話 バレンタインデー
おくさんは昔からバレンタインチョコを手作りする人ではない。
大学生で付き合ってた頃、バイトで頑張ってお金を貯めてそれなりにいいチョコを買ってくれるのが嬉しいながら申し訳無い気もした。
でも「もっと安いのでいいよ」というのも、彼女には頑張りたい気持ちがあってこれが喜びで、それを軽く踏んづけることになるかも知れないと思うと臆病な僕はどうとも言えなかった。
ちなみにいつも無表情でチョコをくれるから、そこから察することも出来なかった。
ある年、彼女が少し申し訳無さそうに「今年はチロルチョコでいいかな」と言った。
「いいよ! 全然いいよ!」
僕は彼女が使命感じみたものから解放されたような、僕らの関係はチョコの価値じゃないと信じて打ち明けてくれたような気がして嬉しかった。
小さな小さな一粒のチロルチョコを大切に噛み締めようと思った。
当日、業務用みたいなダンボールを抱えた彼女とエンカウントした。
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