第194話 For keeps(14)

せめて



結婚でもして、孫の顔でもみせてやれば


どんなに喜ぶかなあ。



泉川は初めてそんな風に考えてしまった。



そしてすぐに



怜子の顔が浮かんだが



慌てて打ち消した。





「・・そう、ですか。  いいお父様ですね、」



怜子に電話で報告した。



「ちょっと泣きそうになっちゃいました。 ガラにもなく、」



泉川は照れて笑った。



「沢藤さんにも頑張ってほしいですね。」



「ええ、」



会話がふっと途切れた。




「じゃあ・・おやすみなさい。」



と、電話を切ろうとすると



「あ、あたし。 あさってから北海道の実家に帰るんです。」



怜子からそう言われた。



「え? 実家に?」



「今の病院に移ってから最初のお盆には忙しくて帰れなかったので。 暮れにも帰れなかったから、院長先生が少しゆっくりしてきなさいって言って下さったんで。 お言葉に甘えて4日ほど。」




「そうですかあ。 良かったですね。」



「もう・・何年ぶりか。 両親も喜んでくれて。」



彼女の声も嬉しそうだった。



そして



「なにか。 お土産を買ってきます。 まあ、何もないところですけど・・」




と言われて



「えっ・・おれに???」



ドキンとした。




「ええ。 あんまり期待をしないでください、」



「も~~~、なんでもいいです。 レイコ先生がおれにお土産なんか・・」



とろけそうだった。



「オーバーですって。」



怜子はクスクスと笑った。



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