第73話 新歓シーズン

「毎週飲み会あります! テニスサークルです!」

「ガクチカ対策も万全! 就職に有利なサークル!」

「ゆるキャンやりましょうー。サークルで山借りてます」

「地球の未来について真剣に考えてみませんか?」

「投資を始めるなら学生のうちから! FIREサークルです!」

「大人になんてなりたくない! ママー! ママー!!」


……新歓シーズンのキャンパスは賑やかだ。サークル勧誘のビラ配りで大学正門はごった返している。少々おかしな声も混じっているが、春だから仕方ない。春だから。


「ダンジョンに行きたいかー!!」

「召喚石、貸し出しまーす!! 召喚サークルでーす!!」

「召喚免許取得まで全面サポート! 優しく指導します!!」


去年までは見なかった新しいサークルもある。ダンジョン系というか召喚系のサークルだ。新入生も興味があるようで人だかりが出来ている。


「お願いしま……すません」


ビラを出した手が引っ込められた。纏う雰囲気で気が付いたのだろう。4年生をサークルに勧誘するなんて馬鹿な奴だ。企業からのお誘いなら喜んで受けるが、サークルで遊んでいる場合ではないのだ。俺は。


「ウチは都内でも最強の召喚サークルです! 一緒に高みを目指しましょう!!」


なかなか豪気な誘い文句が聞こえてきた。振り返るとモンスターカードを手に持った男がカップルに声を掛けている。


「ふん。最強だと? 星3のリザードマンで偉そうに」

「ちょっとテツオ、やめなさいよ!」


カップルの男が召喚系サークルの勧誘に突っ掛かった。なんとも若い。


「おっ、活きのいい新入生は大歓迎だよ! もしモンスターカードを持っているなら、一戦どうだい? 俺が勝ったらウチのサークルに入ってもらうけど」


「俺はいいけど、恥をかくことになるぞ。センパイ」


他人事だが見ているだけでムズムズする。どうして召喚者っていうのはこうも芝居がかっているのだ。もっと普通にやれないのか?


「よーし、決まった! 皆んな集まってくれ! 俺は召喚サークル"血の制約"の副代表だ! これから新入生と対戦する!」


ォォオオオ!!


俄に歓声が上り、わっと人垣が出来る。そして、すぐさまテーブル運ばれてきた。もちろんコロッセオ付きのテーブルだ。


「センパイ。俺は容赦しないぜ」


カップルの男が耳のピアス──召喚石のついた──に手をやる。あぁ、間違いない。こいつは召喚免許の試験会場で絡んできた奴だ。入学早々にイキってやがる。


「新入生にわからせてやるのも、センパイの役割なんでね! 恨むなよ!」


2人は同時にモンスターを召喚した。

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