第51話 情報収集
「おっ、珍しいですね。バイト以外で来るなんて」
段田さんはいつも通りピシッとした髪にツヤツヤのベストを着てSMCにいた。最近は定期的にエキシビションマッチの動画配信を行い、新たなスターモンスターの発掘にも成功している。平日でも大盛況だ。
「相談というか情報収集というか。最近、段田さんのところってモンスターにまつわる情報が集まってきますよね。ダンジョンオーナー同士の繋がりで。少し教えてもらいたいことがあるんです」
段田さんの表情が引き締まる。
「……奥に行きましょう」
SMCのスタッフルームにはモニターが幾つもあって闘技場の様子が様々な角度から見られるようになっている。今はゴブリンメイジが火の玉を幾つも操り、ハイコボルトを追い詰めているところだ。
「あのゴブリンメイジ、凄いですね。前に俺と戦った時よりも火の玉の数が増えてる」
「ですね。あんな風に魔法を操る召喚モンスターは他にいないですよ。配信でも人気です」
「ゴ治郎もうかうかしてられないなぁ」
「で、そんな話のためにわざわざ来たわけではないですよね?」
「……あの、召喚モンスターが関わっている犯罪の噂、知ってます?」
「その件ですか。もちろん知っていますよ」
段田さんはペットボトルの水を一口飲む。
「召喚モンスターのイメージダウンは私達にとって致命傷になりかねないですからね。ダンジョンオーナー同士のコミュニティではちょっと前から話題になっていたんですよ」
「でも、テレビとかでは報じられてないですよね?」
「まだ捕まっていないですからね。防犯カメラにモンスターっぽい影が映っていたり、曖昧な目撃情報があるぐらいです」
「具体的にどんな被害が出ているか知ってます? 宝石店とかが狙われていたり?」
「セキュリティーの高いところは狙われてないみたいで、話に上がっているのは一般の民家。それもお年寄りだけの世帯が狙われているようです」
うわぁ。めちゃくちゃ悪質だなぁ。
「曖昧な目撃情報ってのはそういうことですか」
「ええ。夜中、物音がして目を覚ますと何かが動くのを見た。翌朝、現金や貴金属がなくなっていた。みたいなパターンです。召喚モンスターは夜目がききますからね。夜、寝ているところに忍び込まれると対応が難しい」
「うーむ、何か手掛かりは見つかってないんですか?」
「……実は」
段田さんがスマホを取り出し、こちらに画面を見せる。
「カードですか?」
映っていたのは一枚のカード。ニコニコと笑う鬼の顔が描かれている。
「これが複数の現場に残されていたらしいんです」
「随分と子供じみたことをしますね。愉快犯ですか」
「そう見ています。だから報道されないのかも知れません」
「その画像、送ってもらってもいいですか?」
「取り扱いには気をつけて下さいね」
では。と言い残して段田さんは業務に戻っていった。
しばしカードを眺める。鬼かぁ。鬼ねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます