第38話 六車ダンジョン
六車ダンジョンには第1階層から2種類のモンスターが出現する。1種類目はゾンビ。2種類目はグールだ。
グールはゾンビより遥かに俊敏で、鋭い爪で攻撃してくる。そして何故か見た目は女だ。
襲ってきたグールの頭を闇の槍で串刺しにしたシシーがドヤッ! と振り返る。魔法なのかヴァンパイアの能力なのか分からないが、この攻撃はかなり強力だ。少なくとも目に見える範囲はカバー出来るし出どころも分かりにくい。
「なぁ。もしかしてシシーって元グール?」
「そうよ。よく分かったわね」
隣りから返答がある。俺と同じように六車も目をつぶってシシーと視覚を共有している筈だ。よくよく考えると女の子の家に上がり込み、同じ部屋で2人目をつぶっているなんてトンデモナイ状況だが相手はあっけらかんとしている。俺だけドギマギするのも妙に悔しい。
「次の階に進んだら言おうと思ってたんだけど、シシーは進化アイテムでヴァンパイアになったの。ヴァンパイアからドロップした」
「今もヴァンパイアは出る?」
「それが一度倒すともう出なくて……」
ふむ。ゴ治郎の時と同じだな。最近リアルダンジョンwikiに進化アイテムの情報が集まってきているが、ゴ治郎やシシーのケースはまだ知られていない。たぶん、レアな進化ルートなのだ。
「ゴジロウも普通じゃないわよね?」
モンスターに普通もクソもないが、言わんとしていることは分かる。
「シシーと同じようなケースだ。第2階層でいきなり襲われたんだ。赤帽子に。鍛えに鍛えてなんとか倒したら、赤い帽子、進化アイテムをドロップした」
「へえ、お疲れ様。ヴァンパイアは銀のナイフを用意したら案外あっさり倒せたわよ」
こいつ、金に物言わせたな。鮒田といい六車といい、俺の周りは金持ちばかりで嫌になる。
「しかし、シシーを見ていると1体でもダンジョンの先に行けそうな気がするけど、違うのか?」
「直に分かるわ。次へ進むには越えなければならない壁があるの。それはシシーだけでは無理なのよ……」
ゴ治郎とシシーは3体のグールを相手取っている。ゴ治郎が前に出て相手の注意を引きつけ、グールの死角から容赦なく闇の槍が頭を貫く。自然と役割が決まってきたようだ。
「もうすぐ次の階だけど、今日はこの辺りでやめておく?」
「まさか。ダンジョンは徹夜が基本だろ」
「水野君、ブラック企業で働く人のマインドね。ダンジョンに就職するの?」
「……就職の話はやめてもらおうか」
「ふふふ。分かった。もう言わないようにする」
ゴ治郎の視界は転移石をとらえている。よし、行くぞ。
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