第36話 六車凛
フードをかぶった女子大生、
・庭に穴があった
・どうやらこれは世間を騒がすダンジョンらしい
・wikiを参考にして召喚石を手に入れた
・1人でダンジョンアタックしていたけど、行き詰まった
・Twittorでパーティーを募った
・出会い厨ばかりでうんざり。無理
・パーティーメンバーを探しに最近話題のSMCへ行ってみた
・なかなか強い召喚モンスターを見つけた
・そのモンスターは赤い帽子をかぶったゴブリン
・その召喚者はモブ
・完全に非モテキャラ
・安全じゃね?
なるほど。否定する要素はない。要素はないが! ないのだが! なんだかスッキリしない!! だがしかし、新しいダンジョンにアタックするチャンスであることは間違いない。それをふいにするのか? いや、ここはぐっと堪えるべき。
そう結論付けた俺は、六車が指定した駅の改札の外で待っている。待ち合わせは18時。そろそろ現るはずだ。
帰宅する人達の波に邪険にされながら待っていると、フードを目深にかぶった女の子を見つけた。その姿には覚えがある。六車凛だ。誰かを探しているように見える。
仕方がない。少し恥ずかしいが手を振ってやろう。
「……」
おかしい。一度こちらを見たあと、目を逸らした。もう一度手を振る。
「……」
全然関係ない人が不思議そうにこちらを見ている。なんだこの居心地の悪さは。居た堪れなくなって六車の方へ歩くと、流石に気が付いたのか目が合った。
「ちょっと、手を振るのやめてよ」
なんでだ!? こっちは親切でやったのに!!
「知り合いに見られない内に行くわよ」
「えっ?」
「いいから、行くわよ」
この女。なめやがって。
#
六車の家はなかなか立派な和風建築で歴史を感じさせるものだった。ウチの実家3軒分ぐらいありそう。こいつ、お嬢様なのか?
「さっ、入っちゃって」
数寄屋門をくぐると随分と手の入った庭が広がっている。こんなところにダンジョンが出来たのか。ウチの裏庭とは大違いだ。
「いきなりダンジョンってのもなんだから、先ずはお茶にしましょう」
当たり前のように玄関の中に入って行くが、俺の足はここで止まった。ちょっと待て。これから同年代の女の子の家に入ろうというのか? ダンジョンにばかり気を取られていたが、これは相当難易度が高い。
「ちょっと、何してるのよ。早くきてよ」
「……入っていいのか? 夕飯時だろ?」
「ウチはいろんな教室をやってて人の出入りが激しいから誰も気にしないわよ。それに、水野君モブじゃん」
そうだね! なんせモブだからね!
六車はスタスタと歩き、俺は恐る恐るついて行く。そして案内された客間で待っていると、六車がお茶を運んできた。
「なんでソワソワしてるの?」
「む、武者震いだ」
「まさか、女の子の家に上がるの初めて?」
「そ、そんなわけないだろ!」
そんなわけあります。
「まぁ、想定通りだからいいけど」
気を落ち着かせるために緑茶をすすると、香りがスッと広がった。これはいいお茶。
「まず最初に召喚モンスターの顔合わせをしましょう」
そう言って六車はポケットから小さな宝石入れを取り出した。座卓の上に一つの召喚石が置かれる。
「たっぷり吸ってね」
六車の血を吸って召喚石の光が強くなる。
「出ておいで、シシー」
妖しい光が広がった。
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