第16話 出ない
「やっぱり出ないな」
「ギー」
第1階層で進化したゴ治郎の慣らし運転を終えた俺達は、第2階層に来ていた。その目的は色々あるが、一番は赤帽子が再度現れるかについて確認することだ。
前回、前々回と赤帽子は第2階層の転移部屋のすぐ近くで出現していた。しかし、今回はいない。かなり入念に探したがその影はない。
「レア、下手するとユニーク個体だったのか……」
進化アイテムを落とすようなモンスターだ。モブな筈はない。
「ギ?」
「うーん、まぁ、運が良かったってことだよ」
「ギギッ!」
喜んだゴ治郎がくるんとその場でバク宙をした。視界も回るがもう慣れたものだ。
「となると、他のモンスターが出る筈だ。油断するなよ」
「ギッ!」
ゴ治郎は警戒した足取りで進み始めた。
#
「撃ってくるぞ!」
「ギギッ!」
ローブを着たゴブリン、ゴブリンメイジ(仮)はこちらを見つけると手を前に突き出して構えた。輝く靄のようなものがそこに集まり──。
タンッ!
ゴ治郎が踏み出すと、もう視界にはゴブリンメイジの背中がある。残念だが、わざわざ魔法をくらうわけがない。ゴ治郎のバックスタブだ。
標的を見失って狼狽えるところに無言で縫い針ナイフを突き刺す。ややあってからゴブリンメイジは魔石になった。魔石は普通のゴブリンと同じく透明だが、少しだけ大きくて微かに光っている。食べたゴ治郎のリアクションを見る限り、美味いようだ。
赤帽子のいない第2階層に出現するのは、今のところゴブリンメイジ(仮)とハイゴブリン(仮)だ。ゴブリンメイジは魔法を使えるようで、火の球を飛ばしてくる。
一方のハイゴブリンはゴブリンの強化版だ。肌が緑から黒っぽくなり、縦にも横にも大きく、屈強になっている。縫い針ナイフを刺しても直ぐには死なず、反撃してくる厄介な奴だ。
とはいえ、一体であれば両方ともゴ治郎の敵ではない。ゴブリンメイジは背後を取れば一撃だし、ハイゴブリンの攻撃はゴ治郎に当たることはない。跳び回りながら何度か急所を狙うと沈黙する。
「よし! しばらくは魔石集めと宝箱探しだな。縫い針ナイフでずっと戦うのは無理がある。上等なナイフを手に入れたいところだ」
「ギギギッギッ!」
夏の終わりが近づいていた。
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