343_プロでも楽器の音色を聞き分けられない #音楽

「ドイツの作曲家でありピアニストであるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは『音楽は、いかなる知恵、いかなる哲学よりも高い啓示である。私の音楽の意味を把握しうる者は、他のひとびとがはいっている全ての悲惨から逃れうるだろう』と述べています。音楽って素晴らしいですよね」


「やっほー、賢明なる読者様。読むだけで人生よくなる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『プロでも楽器の音色を聞き分けられない』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は耳に自信がありますか?」


「いい楽器と普通の楽器の音色を聞き分ける自信がありますか?」


「え? 『ある』ですか。なるほど」


「よほど素晴らしい聴覚なのでしょうね」


「ストラディバリウスというバイオリンを知っているでしょうか?」


「ストラディバリウスとは、イタリアのストラディバリウス親子が製作したバイオリンのことです。中には億を越える値段がついています」


「有名なバイオリンなので、実際に音色を聞いたことがある人もいるでしょう」


「ですが、高額だからといって、音色が素晴らしいとは限らないのです」


「フランス国立科学研究センターの研究によりますと、ストラディバリウスでも、現代のバイオリンでもどっちでも同じ、という結果が発表されたのです」


「今回は素晴らしい楽器と現代の楽器を聞き分けることはできない、ということについてお話しします」


「聴覚に自信のある読者様が愕然としないことを祈ります」


「研究者は、二つのコンサートホールを使って実験を行いました」


「一つ目は、パリのコンサートホールで300人が入る規模です。音楽に詳しい55人を招きました」


「二つ目は、ニューヨークのコンサートホールで、860人が入る大規模なホールです。音楽に詳しい82人を招きました」


「音楽に詳しいとは、バイオリンの制作者、バイオリン奏者、ミュージシャン、作曲家、オーディオマニア、音響学者、音楽評論家です」


「それぞれのコンサートホールで何を行ったのかと言いますと、ストラディバリウスと現代のバイオリンの聞き比べを行いました」


「プロの奏者にそれぞれのバイオリンを弾いてもらい、聴衆にどちらの音色がよかったか聞いたのです」


「先入観を与えないために、聴衆からは奏者が見えないように衝立がありました」


「さらに、奏者も自分が弾いているバイオリンがどちらか分からないように目隠しをして、弾いてもらいました」


「また、オーケストラの伴奏があるバージョンとないバージョンの両方でも聞き比べを行いました」


「要するに、奏者と聴衆のどちらも先入観のない状態かつ、伴奏の有無で、音色の聞き比べを行ったのです」


「さて、読者様はどれくらいストラディバリウスが圧勝すると思いますか?」


「ストラディバリウスの値段は億を越えます。それだけの高値がつくということは、それだけの音色を持っているということでしょう」


「ですが、結果は……残酷でした」


「二つのバイオリンの音色を聞き比べて、どちらが好きか聞いた所、ストラディバリウスより現代のバイオリンに軍配が上がりました」


「わざわざ、ストラディバリウスを聞く必要なんてなかったのです」


「しかも、聴衆は音楽関係者です。音楽に詳しい人が聞き分けができないのなら、素人の私たちが聞き比べられるわけもありません」


「一般人は大人しく、普通のバイオリンの音色を聞きましょう」


「素晴らしい音色と思われているストラディバリウスも大したことはなかったのです」


「実験では、どちらが好みか、という質問以外に、どちらがストラディバリウスかという実験も行っています」


「いわゆる、格付けチェック的なやつです」


「その結果ですね、聴衆はストラディバリウスを当てることはできませんでした」


「しかも、弾いている当人ですら、正答率は7割でした。一番近くで音色を聞いて、本物に触れているにも関わらず3割は間違っていたのです」


「人間の感覚ってのは当てにならないです」


「私たちは、古い楽器をありがたがっていますが、歴史的な価値しかないようです。年月を減れば、段々音がよくなる、というのは幻想みたいです」


「いえ、音がよくなっているのでしょうが、それは現代の楽器を越えるものではない、というのが正しいのでしょう」


「歴史や科学に裏打ちされた知識で製作された現代の楽器のほうが、素晴らしいのです」


「楽器の熟成より、科学の進歩のほうが早かった。それだけのことです」


「私は決してストラディバリウスを蔑ろにしたいのではありません」


「ただ、技術の進歩を知ってもらいたいだけです」


「現代のバイオリンもストラディバリウスに負けず劣らずなことを知ってもらいたかったのです」


「何より、ストラディバリウスにはロマンがあります」


「決して現代に作られた楽器では得られないものです」


「ロマンを加味すれば、ストラディバリウスのほうが音色が素晴らしくなるでしょう」


「ストラディバリウスにはストラディバリウスにしか出せない味がある、って所で今回のまとめです」


「研究者はコンサートホールに音楽に詳しい人を集めて、ストラディバリウスと現代のバイオリンの聞き比べをしてもらったよ」


「すると、大半の人は現代の楽器のほうが好き、と答えたよ」


「ストラディバリウスと現代のバイオリンの両方を聞いて、どちらかを当てるのも行ったけど、散々だったよ」


「先入観がない状態だと、現代のバイオリンに軍配が上がるよ。覚えておいてね」


「先入観というのはとても大事です。先入観があれば、ストラディバリウスを高く評価するでしょう」


「人は思い込みによって、評価を変えます」


「もし読者様がストラディバリウスの音色を楽しみたいのなら、ストラディバリウスのことを詳しく知ったほうがいいでしょう」


「苦労話、製作秘話、親子の関係など、ストラディバリウスの歴史を知ることで、偉大さを知り、よりストラディバリウスが楽しめるに違いありません」


「読者様、先入観で評価が変わるのは、何もバイオリンだけではありません」


「すべての出来事で起こります」


「要するに、フラットに評価するなど到底不可能ということです」


「必ず評価には、評価者の思いが介入しますよ」


「ということで、今回は『プロでも楽器の音色を聞き分けられない』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」


「お付き合いいただきまして、ありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「次回の『10倍も買いだめをしやすい人の特徴』で、お会いしましょう」


「もしくは、読者様の気になるお話でお待ちしております。バイバイ」



参考文献

Listener evaluations of new and Old Italian violins

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