241_大体の人は引き算ができない #計算 #アイデア

「『Less is more』」


「やっほー、人生よくなってる読者様。使える知識をお届けする世界一の美女サクラです! 今回は『大体の人は引き算ができない』のお話をしますよ」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は引き算ができますか?」


「え? 『当たり前だろ』ですか。確かに、四則演算の引き算は義務教育です。引き算はできるでしょう」


「ですが、人はあることについては引き算ができなくなるのです」


「どのような時に引き算ができなくなるか、読者様は見当がつきますか?」


「正解は……改善です」


「何かをよくするために改良を施すのは、よくある光景です。ですが、その際に足して考えることはできても、引いて考えることができないのです」


「引き算が苦手なことを調べたのはアメリカのバージニア大学です」


「研究者は1153人の参加者を集めて、様々な課題に挑戦してもらいました」


「たとえば、パズルであったり、ブロックで作られた家屋の安定性を高める方法を求められたり、ゴルフコースの改良を求められたりしました」


「改良の際にどのような手法を用いるのか調べたのです」


「ブロックで作られたおもちゃの課題を紹介しましょう」


「四角い土台の上に大きな屋根が乗っています。しかし、屋根は土台の角にある一本の柱で支えています。屋根が落ちてきたら危険ですので、屋根が落ちないようにしてください。ただし、追加していいブロックの数は10個までです」


「読者様ならこの課題をどうやって乗り越えますか?」


「おそらく大半の読者様は、土台に柱を追加して屋根を支えることでしょう。実験の参加者も同じでした」


「課題をクリアする、という意味でしたら問題ありません。ですが、実際にはもっといい方法があるのです。読者様は分かりますか?」


「支える柱を追加する以外でどうやって屋根を安定させることができるのでしょうか? 少し考えてみてください」


「5、4、3、2、1、」


「正解は…………柱を取り除く、でした!」


「柱を取り除いて土台に直接乗せるのが一番です」


「屋根というのは大きいです。土台を覆う大きさがあります。柱を二本、三本と追加したら安定性が増しますが、それでも限界があります」


「四本の柱よりも土台のほうが大きいので、屋根を直接土台に乗せるほうが安定します」


「一本の柱より四本の柱、四本の柱より大きな土台のほうが大きいのです!」


「読者様はこの解決策を思い付きましたか?」


「とは言え、私が先に人は引き算が苦手と答えを言っていたので、柱を取り除く考えに至った読者様も多いでしょう」


「ですが、ヒントがなければ思い付いていましたか? 実験の参加者の中で引き算で物事を考えられたのは僅かでした」


「人は、引き算があると教えられないと、引き算のことについて一切考えない生き物なんです」


「他の研究でも引き算が苦手なことが判明しています。よりよいサービスを提供するために、どのようなことができるか考えてください、という課題では、サービスを減らしたり、排除したり、という引き算の改良案は全体の11%に過ぎなかったです」


「もう一つ、引き算が苦手な例を紹介します。10×10のマス目を用意して、複数のマスに駒を適当に配置しました。参加者に駒を左右対称になるようにしてください、とお願いしました」


「結果、駒を取り去ってバランスを取ることはなく、駒を追加することで左右対称にしていました」


「人の頭の中には、改良といえば要素を追加すること、という思い込みがあります」


「ブロックのおもちゃを使った実験で判明しているように、要素を追加することが必ずしも正解というわけではありません」


「たとえば、昨今のスマートフォンは色々な機能が追加されています。しかし、お年寄りにはハードルが高いです。そこで企業が取った戦略は、余計な機能を排除して、シンプルなデザインにすることでした」


「この引き算の発想がお年寄りに受けて、お年寄りにスマホを普及させることができました」


「機能が増えて嬉しい人もいれば、ごちゃごちゃして使いにくくなったと感じる人もいます。追加することが最善とは限りません」


「改良というのは、要らないものを排除して、求められているものを追加する作業です」


「時には引き算で物事を考えましょう」


「特に焦りは禁物です。今回の研究でも参加者を焦らせると、足し算の解決策を取る傾向が顕著に現れました」


「余裕がないと、ついつい足して考えてしまいます。気を付けてください」


「しかし、軽く引き算を示唆するだけで、引き算の解決策を選びやすくなります」


「大半の読者様の頭の中には引き算の考えを考慮しません。それでは、よりより改良を望めません」


「ちょっとした工夫が、新しい解決の糸口となることがあります。引き算することを忘れないでください」


「要らないものを後生大事に取っておく必要はない、という所で今回のまとめです」


「たくさんの人を集めて、改良に関する課題を与えたよ」


「すると、ほとんどの参加者が何かを追加することで、課題の解決に取り組んでいたよ」


「どうやら、人の頭の中には改良=要素の追加、という考えがあるみたい」


「でも、時には要素を減らすことが最善の解決策になるよ。覚えておいてね」


「引き算の解決策は意識させないと考慮してくないよ」


「引き算を軽く示唆するだけでも、引き算の解決策を考えてくれるよ。だから、解決策が一辺倒にならないように、人が集まったら引き算のことを思い出させてあげようね」


「読者様も、会社で常に改良を求められいることだと思います。そんな時は追加するだけでなく、引き算で考えましょう」


「やらなくていいことをやらないのも立派な改良です」


「引き算の考えは『無駄を減らす』と言い換えてもいいですね。読者様も是非、無駄を減らしましょう」


「ということで、今回は『大体の人は引き算ができない』のお話でした。読者様の人生の潤いになれば嬉しいです」


「最後まで、ありがとうございます。高評価や応援コメント、お願いします」


「読者様が『こんなことが知りたい』というリクエストも受け付けてます!」


「次回の『レストランのカロリー表記は誤差がひどい』で、お会いしましょう!」


「もしくは、読者様が気になるお話でもいいですよ。目指せ、知識の宝物殿。バイバイ」



参考文献

People systematically overlook subtractive changes

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