058_視線が合うのは気のせいじゃない? #認知 #芸術

「やっほー、賢明なる読者様。読むと人生が変わる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『視線が合うのは気のせいじゃない?』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は絵画の『モナリザ』をご存じでしょうか?」


「え? 『当然知っている』ですか。確かに有名な作品なので知っていて当然ですね」


「知らない読者様のために軽く説明します」


「『モナリザ』はイタリアの芸術家レオナルド・ダ・ビンチの作品で、世界で最も知られた絵画として有名です」


「1503年~1519年に16年かけて制作されたとされ、モデルの女性はフィレンツェの商人フランチェスコ・デル・ジョコンドの妻リザ・デル・ジョコンド夫人と言われています」


「現在はパリのルーブル美術館に所蔵されています。今もなお人々を魅了する美術界の宝です」


「有名であると同時に数々のいわくのある作品でもあります」


「盗難にあったり、偽物が出回ったり、モデルが不明であったり、別バージョンがあったり、謎の多い作品です」


「そこで読者様は、モナリザ効果、という言葉をご存じでしょうか?」


「レオナルド・ダ・ビンチの絵画『モナリザ』はどこから見ても、自分が見つめられているように感じます。このことから絵画の人物と目線が合うことをモナリザ効果と呼びます」


「読者様も、一度はモナリザの不思議な魅力に引き込まれたことがありませんか?」


「レオナルド・ダ・ビンチの卓越した技術があるから、モナリザ効果が生まれるのだ、と主張する人がいたりもします」


「確かにレオナルド・ダ・ビンチの技術が素晴らししいのは間違いないです」


「そんなモナリザ効果を実際に研究した人がいるのです。世界には不思議を探求をしちゃう病気の方々が尽きませんね」


「研究の云々かんぬんは一旦横に置いて、読者様はどうですか? 絵画の人物と目があった経験はありますか?」


「え? 『絵なんか見ないよ』ですか。目が合う以前の問題でしたっ!」


「気を取り直して、本題に戻ります」


「ドイツのビーレフェルト大学の研究チームは、モナリザ効果が騒がれているが実際に絵画の『モナリザ』を使ってテストしたことないよね、ということでモナリザを使って実験を行いました」


「盲点です! 実は、当のモナリザでは実験が行われていなかったのです。実はモナリザは置いてきぼりにされていたのです」


「あるあるです。モノマネ芸人のネタが有名になったけど、実は本人は言ったことがないみたいな現象ですね」


「本当に人間の心理って面白いですね、大事な部分を見落しがちです」


「さて研究者は、被験者を24人集めて実験を行いました。コンピュータの画面にモナリザを映し出し、被験者の間に定規を設置して、モナリザがどこを向いているか確認しました」


「被験者とモナリザとの距離は66cmです。他にも、モナリザの顔を30%~70%の範囲で拡大と縮小を行って、15パターンのモナリザの顔を作成しました。それぞれで印象が変化するかも確認しました」


「また、モナリザの位置を横に3.4cmずらした場合も確認しています。すべてのモナリザの映像はランダムで写し出されていました」


「様々な条件で調べたため、2000件を越えるデータが集まりました。頑張りましたねー、研究者」


「私は研究者に言いたい『お疲れさまです』と。そして、面白い実験をしてくれて、ありがとう!」


「惜しむらくは本物の『モナリザ』で実験ができていない点です。もし本物で行われていたら前代未聞の研究になっていたことでしょう」


「分析の結果、モナリザが真正面を向いているのを0度とした場合、モナリザは平均して15.4度右側を向いていると被験者は感じました」


「あれあれ? モナリザさんは右側を向いている……ですか? おかしいですね?」


「視線が交わっていたら、右側を向いている、なんて感じないですよね?」


「つまり、右側を向いているので『モナリザ』でモナリザ効果は確認できませんでした。『モナリザ』とは目が合っていなかったのです!」


「この結果に研究者は、『誰かに見られたい』もしくは『注目を集めたい』という願望の表れかもしれない、と語っています」


「わからなくもないですね。誰だって注目されたり、認められたい欲求があります。だからこそ、絵画の人物に見られているという錯覚を生み出したのかもしれません」


「『モナリザ』でのモナリザ効果は思い込みでした!」


「どうやら研究者は、モナリザ効果そのものは存在する、と語っています」


「皮肉ですね。モナリザ効果の由来の『モナリザ』では確認できないのに、モナリザ効果は存在する」


「フォローのつもりでしょうか?」


「いやはや、人の心って本当に面白いです」


「この結果を聞いて、レオナルド・ダ・ビンチはどう感じるのでしょうか? がっかりするのか、それとも狙っていたのではないから『知らない』と答えるのか。妄想すると面白いです」


「それでは今回のまとめです。『モナリザ』を鑑賞している際の見られている感じは思い込みだったぞ。モナリザ効果は思い込みなんだぞ」


「モナリザ効果は自意識過剰が生み出した錯覚でした」


「つまり、日常生活で失敗して注目を集めるのと同じです。失敗すると異様に視線が集まると思ってしまいまずが、自分が思っているほど、周りの視線は集めていません」


「自分が思っている半分くらいしか、実は見られていません」


「面白いのは、この現象が絵画で起こっているということです」


「人は他人の視線が気になりがちですが、絵の視線まで気にしたくないです」


「おそらく、脳は本物の人間と絵画の登場人物の区別ができないのでしょう」


「読者様も絵画鑑賞をする際は、見られているのは錯覚だー、と思いながら美術館を巡ってはいかがでしょうか?」


「ということで、今回は『視線が合うのは気のせいじゃない?』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」


「最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「それでは、次回の『ADHDでも世界的に超有名人がいるよ』で、またお会いしましょう」


「もしくは、読者様の気になるお話でお待ちしております。バイバイ」



参考文献

The Mona Lisa Illusion—Scientists See Her Looking at Them Though She Isn’t

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