047_【超激レア】平凡な見た目の主人公は絶対に存在しない #見た目 #肉体

「やっほー、読者様のプラスになる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『平凡な見た目の主人公は絶対に存在しない』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は”何の取り柄もない平凡な主人公”を見たことがありますか?」


「え? 『ラノベでよく見かける』ですか。確かにそうですね」


「ですが、平凡な人間というのは超貴重です。ガチャの最高レアリティより、よっぽど貴重なんです」


「知ってましたか?」


「つまり、平凡という個性は、誰よりも特徴のある個性なんです」


「今回は平均的な人間は存在しないことをお話しします。それでは、どうぞ」


「1940年代のアメリカ空軍は、あることに悩まされていました。それは飛行機の事故の多さです」


「まだまだジェットエンジンは黎明期、どんどん高速化が進んでいました。操縦も次第に複雑になっていきました」


「そんな中、飛行機は突如急降下したり、着陸に失敗したり、消息を絶ったりと様々な事故が発生していました」


「一番最悪な日には17人のパイロットの尊い命が亡くなりました。お悔やみ申し上げます」


「当時を知る退役軍人は『飛行機を飛ばすのは大変だった。無事に帰れる保証がなかった』と語るくらいです」


「空の上で飛行機が操縦不能になったら絶望的です。死を覚悟して乗り込んでいたことでしょう」


「何より、これらは事故です。戦闘とは関係のない災難です。国を守るための軍人にはやるせない事故だったでしょう」


「あまりにも事故が頻発するものだから、政府が動き出します。見過ごしていては、いたずらに軍人を失います」


「事故を調べた結果、パイロットエラーが原因ではないか、と指摘しました」


「実は、飛行機の機器が異常を起こすことは滅多になかったのです」


「整備不良や飛行機の構造の欠陥などはないのです。では、何が問題だったのか?」


「もしかして、パイロットの操縦スキルが未熟だった?」


「いいえ、違います。過酷な訓練を乗り越えたパイロットの操縦には問題がありませんでした」


「飛行機にも人間にも問題はなかった。これには、政府も軍人もお手上げです。いったい、真犯人はどこの誰なのか?」


「真犯人が見つからないと、軍人がいつまでも犠牲になります。何としても見つけ出さないといけません!」


「事件が迷宮入りするかと思いきや、一つの仮説が浮かび上がります。コックピットの設計が間違っている、と」


「実は、コックピットは1926年にパイロットの体の寸法を測って、設計されていました。何百人ものデータを集めて当時の最適解を出したのです」


「ちなみに計測したのは男性だけです。女性がパイロットになることは夢にも思っていなかったみたいです。時代ですね」


「20年以上昔のデータに基づいて、コックピットは設計されました。技術者は昔より、『軍人の体が大きくなったのではないか』、いつしかそう考え始めました」


「体の大きさがコックピットに合わないから、エラーが発生したのだ、と」


「空軍は最新の体の大きさを測定するため、大規模な調査に乗り出します。1950年、オハイオ州の空軍の研究者はパイロット4063人の体を測定しました」


「実に140ヶ所を測定しました。基本的な身長、体重はもちろんのこと。親指の長さや目から耳までの距離もありました」


「一通りのデータを集めて、理想のコックピットを作るため平均値を割り出しました」


「平均値に従えば、大抵の人の体にフィットするはずです」


「誰もがこれで飛行機の事故は減ると思いました」


「ですが、そうは問屋が卸さないのです」


「4063人から集めたデータを使って、コックピットのデザインに必要な10の項目を抜き出しました」


「たとえば身長の平均は175cmです。さすがに研究者も、175cmぴったりの軍人が少ないことは承知しています。誤差を平均値から30%まで認めたのです」


「ここで、読者様に質問です。4063人の内、全10項目で、平均値に収まったパイロットは何人いたと思いますか? 直感で答えてください」


「ちなみにデータを集める際に、明らかに平均を逸脱している軍人は最初から計測されていません。大きすぎる、小さすぎる人は舞台に立つことすら許されませんでした。パッと見、平均的な軍人が調査の対象です」


「1割の400人? 3分の1くらいですか? それとももっといると思いますか? いやいや、もっと少ない100人くらいかな?」


「正解は、0人です!」


「本当に驚きの結果です」


「4063人のパイロットに10項目全てが平均値に収まる者は誰一人としていなかったのです」


「そう、世界には平均的な人なんて存在しないのです」


「人というのは、必ず体のどこかが大きかったり小さかったりするのです。人と違って当たり前なんです」


「10項目が多すぎるのではないか? 研究者は3項目に絞って再計算しました」


「10項目では0人でも、3項目ならそれなりの人数が当てはまりそうですね」


「ですが、当てはまったのは3%しかいなかったのです」


「たった3項目でも、平均値に収まるのは3%なんです。もう一度言います、この世界に真に平均的な人間はいないのです!」


「平均的な人間がいないのはわかった。では、平均値の許容範囲を誤差の90%まで広げたら、どうなるだろうか?」


「さすがに誤差90%なら、大抵の人が当てはまるだろう、と読者様はお考えかも知れません。ですが……」


「当てはまったのは半数に満たなかったのです」


「いやはや、本当に面白い結果です。人は何かと、平均値を出したがりますが、当てはまるのは極稀な出来事なんです」


「思い出してください。テストが行われたら、平均点を発表しますよね。平均点と同じ点数を取った経験はありますか?」


「私は一度もないです」


「平均値は人間に都合のいい数値に過ぎません。自分を平均な人間だと思わないでください。そんな人はいません!」


「何かしら突出したものを絶対に持っています!」


「4063人いて、誰一人当てはまらないのです。もし、平均的な人に出会えたなら、それはとても得難い体験です。誇っていいですよ」


「それでは、今回のまとめです。空軍のパイロットの体を測定した結果、平均値に収まる人間がいないことが判明したぞ」


「人間には必ず極端な部分があるぞ」


「極端な部分を伸ばすことで、人とは違うことができるのかもしれませんね」


「そうそう、最後に一つ。平均的なパイロットがいないことが判明した空軍は、コックピットをどのように設計したと思いますか?」


「コックピットに人を合わせることができないなら、逆転の発想です。コックピットが人のサイズに合わせればいい、です」


「今では当たり前のリクライニングや車のミラー調整は、ここから始まったのです」


「パイロットが自分に合わせてカスタマイズできるコックピットを設計したのです」


「使いやすくなった結果、飛行機の事故は減ったとさ、ちゃんちゃん」


「ということで、今回は『平凡な見た目の主人公は絶対に存在しない』のお話でした。読者様の参考になれば、私はとても嬉しいです」


「最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございます。高評価や応援コメントはどんどんお願いします。質問やリクエストも待ってまーす」


「それでは、次回の『ぼっち主人公がすごい理由』で、またお会いしましょう。バイバーイ」



参考文献

『平均思考は捨てなさい』トッド・ローズ著(早川書房 2017年)

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