若い男が公園のベンチに座り、泣いている。片思いの女性が結婚してしまい、彼は想いを打ち明けられなかったことを後悔していた。すると、不思議な老人に話しかけられ、出た目の数だけ過去に戻れるというサイコロを渡される……。
タイムリープはSFでは定番ですが、設定を十二分に駆使して、主人公の運命を巧みに転がしていきます。そして、本作の魅力である最後の一文にたどり着くのです。フリを丁寧に積み上げて、最後に回収し、物語の厚みを一気に作り出す手腕に脱帽しました。
この後、どうなるんだろう……。思わず自分の頭の中で続きの物語を想像してしまう、鮮やかな短編小説です。
(カクヨムWeb小説短編賞2021 “短編小説マイスター”特集/文=カクヨム運営)