第9話 血まみれの廊下
闇が包んでいる。
部屋が暗闇に覆われている。
闇は落ち着く。闇は毛布のようにあたしを包み込む。
その中を白い手が泳いだ。
あたしは眠る。なんて心地良い空間だろう。
白い手が泳ぐ。
あたしに近づく。
あたしは眠る。
手が、あたしの肩を掴んだ。
「……あ、ごめん。起こしちゃった?」
杖の先を光で照らしたトゥルエノが、あたしの顔を覗いていた。あたしは目を擦り、ぼんやりと瞼を上げる。
「どうかしたの……?」
「……ううん。まだ時間あるから、寝てていいよ」
「……んー……トイレ行く……」
「あ、ルーチェ、待って」
「え?」
トゥルエノが先にトイレのドアを開けた。トイレにはトイレしかない。あたしは眉をひそめてトゥルエノを見ていると、トゥルエノが振り返った。
「ごめん。大丈夫」
「……お、お、おばけでも現れた?」
「……あの、実は……あー、先に、トイレしておいで」
「あ、うん」
あたしが用を済ませると、トゥルエノが廊下に繋がるドアに耳をつけていた。何やってるんだろう。
「トゥルエノ? どうしたの?」
「……さっきね、すごい音がしたの」
「すごい音って?」
「何かにぶつかるような、すごい、なんていうか、ドーンっていう音。廊下から。それで私も起きて……ルーチェも起きてるかなって思ったら……」
(そのタイミングであたしも起きたのか)
「それで……廊下が……すごく静かだから……普通、誰か気づいて廊下に出たりしないかなって。だって、すごい音だったから」
「ちょっと見てみれば?」
「あ、ルーチェ」
あたしはドアノブをひねり、ドアを押してみた。そして――寝ぼけていた頭が、急速に目を覚まし、思わず悲鳴を上げた。
「ひっ!?」
「なに……これ……」
廊下の地面に血の跡がついていた。何かが引きずられたようなそんな血痕。
「ルーチェ、何かがホテルの中に入ったのかも」
「殺人鬼?」
「これ、人の血じゃないんじゃない? 魔力を感じる」
「……あ、本当だ」
「起きてる人いないのかな?」
「見る限りいー……ないみたいだけど……」
「……様子見に行った方がいいかも」
「えっ、危ないよ。い、一回、先生達に伝えに行かない?」
「もしそれで誰か犠牲になったら?」
「でも、あたし達も対応できるかどうか……」
「様子見に行くだけ。……ルーチェはここにいていいから」
「いや、それは……心配だから、待って」
あたしは部屋に戻り、ベッドに置いてあった杖を持った。
「ごめん。お待たせ。行こう」
「……ごめん。ルーチェ。……ありがとう」
トゥルエノとあたしがそっと部屋から抜け出し、血のついた廊下を今一度眺め、血痕が続いている方へと歩き出した。
廊下は不気味なほど静かだ。誰も部屋から出てこない。もしかしたら部屋に誰もいないのではないだろうか。あたしとトゥルエノが寝ている時に、避難放送が流れて、みんな外に避難しているとか。窓を見てみる。窓には夜景が広がるだけだ。
(どこまで続くんだろう)
血痕を追いかける。いつまでも続くかと思われたが、やがて血痕は終わりを見せる。
(ここで血痕がなくなってる)
あたしは顔を上げた。エレベーター。
(エレベーターで移動した……? やっぱり人?)
「……エレベーターに乗ったのかな……」
トゥルエノが眉をひそめた。
「ルーチェ、ホテルの人に言いに行こう。一階のホールに受付の人とかいると思う。多分、こういう時に対応できる人もいると思うから」
「うん。……エレベーター乗る?」
「……いや、階段で行こう」
「だね」
あたしとトゥルエノが階段を下りて一階までやってきた。やはり廊下は非常に静かだ。
(……なんだろう)
あたしとトゥルエノが時々目を合わせる。
(なんか……)
「……ルーチェ、なんか……」
「うん」
「変だよね?」
「うん」
「アウデ・アイルってこういうこと……多いの?」
「まさか。こんな状況初めて」
「それに、なんだか……寝るよりも……」
ホールにたどり着く。
「妙な……魔力を感じるっていうか……」
――後ろから走ってくる何かの気配を感じて、あたしとトゥルエノが息を呑み、慌てて左右に分かれると、その間を影が凄まじい勢いで突っ込んできた。思わず二人で悲鳴を上げる。
「ルーチェ!!」
(何こいつ!)
影が振り返った。首が三つ、体が一つの狼があたし達を見て、遠吠えをした。口と目からは血を出して、充血した目であたし達を睨み、右の頭の狼が唾のように血を飛ばしてきた。あたしとトゥルエノが転がってそれを避け、急いで立ち上がる。
「ルーチェ!」
「どうする!?」
「昼間と同じ! 気絶させるよ!」
「わかった!」
トゥルエノとあたしが杖を構え、それぞれ呪文を唱えだす。
「稲妻よ、怒声を轟かせ。太鼓を叩け。暴れ回れ」
「太陽神よでんでられんけん。アマテラス大御神のお通りだ」
トゥルエノの杖から稲妻が走り、三つ頭の狼に電気を食らわせる。あたしの杖からは炎の魔力が姿を変え、あたしのイメージのアマテラス大御神が現れる。アマテラスは四本の足を走らせ、三つ頭の狼に近づき、炎を吹いた。三つ頭の狼は体を揺らして、真ん中の頭の狼がアマテラスに血を飛ばした。するとあたしの魔力で出来たアマテラスは簡単に溶けていく。あたしは再び杖を構え、唱える。
「真夜中暗闇光はいかが、眩しかろう、眩むだろう」
杖を振ると眩しい光が左の首の狼に照らされた。左の首の狼は怯んだが、右の首の狼は吠え、真ん中の首の狼は首を伸ばし、、トゥルエノに噛みつこうとした。トゥルエノが杖を振る。
「ばちばち電気をプレゼント!」
静電気を与えられた真ん中の首の狼が怯み、しかしその頃には左右の首の狼が襲いかかってくる。あたしとトゥルエノが逃げて避ける。
(切りが無い!)
三つの頭を一斉になんとかしないと何も出来ない。
「ルーチェ」
「ん!」
「動きを止める方と、攻撃する方、どっちが得意?」
「えっと」
狼があたし達に向かって突っ込んできた。避けると、壁に激突する。ホテルが揺れる。
「止める方かな!」
「了解! 任せるよ!」
「やってみる!」
あの巨大な獣の動きを止める。
(だったら……)
本当は光魔法の方がいいんだろうけど。
(ジュリアさんもいないし……いいよね!)
あたしは杖を構えた。
「ヤミヤミ」
魔力が闇に色を変える。
「影よ夜よ深くなれ。濃い闇、夜に、恋い焦がれ。暗闇、闇夜を、乞いて舞え」
あたしの杖から闇が現れ、地面に入り込み、三つ頭の狼の影を捉える。杖をグイと引っ張ると、影が縛られた狼は地面に倒れた。
「トゥルエノ!」
叫ぶように呼ぶと、トゥルエノが杖を構えていた。
「空の鬼が太鼓を叩く。雨、風、嵐がやって来る、竜巻ハリケーンやってくる、違った、これは、雷だ!」
トゥルエノの魔力が電流となり、雷となって押さえつけられる狼に襲いかかった。痛みから左の首の狼が叫び、真ん中の首の狼は暴れまわり、右の首の狼は血を飛ばしてきた。それをトゥルエノの上から被った。しかし怯むことなく魔力を込める。狼が電流に包まれる。
「電流よ……!」
トゥルエノが唱えた。
「意識を飛ばせ!」
電流が狼の体内を駆け巡り、三つの頭の狼の目が白目を剥き、その場に倒れた。踏み潰されそうになったあたしは慌てて魔法を解除して逃げ出す。トゥルエノが手を下ろし、額から汗を流して息を吐いた。
「はあ……怖かった……」
(……気絶した……?)
あたしは立ち上がり、倒れた狼を観察し――ホテルの庭に落ちていた魔法石を思い出す。
(ひょっとして……魔法石の影響じゃ……)
「うう、べとべと……」
「(あ)大丈夫? トゥルエノ?」
「私は大丈夫……。血反吐を被っただけ……」
「……お風呂入らないとね」
あたしはそっと狼に近づいてみた。
(魔法石が近くに落ちてるかも)
「ルーチェ、危ないよ」
(ジュリアさんが極秘調査って言ってた。動物凶暴化の件かも。だったら……)
辺りを見回す。
(魔法石があるはず)
あたしは顔を上げた。狼の手がぴくりと動いたのが見えた。
(……ん?)
「っ! ルーチェ!!」
(えっ)
振り返ると、真ん中の狼の首が一直線にあたしに伸びていた。
(しまっ……!)
口が開けられる。大量の鋭い歯が見えた。どんどん近づいてくる。呪文を唱えてる時間はない。あたしは目を見開く。口がどんどん近づく。
食われる。
手が伸びた。
あたしの浴衣の襟を掴み、思い切り引っ張り、後ろにあたしを放り投げた。
(えっ)
目を見開いた視界に見えたのは――黒き魔女の大きな背中。
「光よ」
国の英雄。
「意識を飛ばせ」
光の玉が飛ばされ、あまりの眩しさに狼が目を閉じた。口が止まる。すると光の玉の一部が狼の口の中に入っていった。食道を通り、胃に到着すると、急に三つ首の狼が苦しみだした。唸り、喉から声を出し、また唸ると、右の首の狼が大量の血を吐き出した。すると、血に紛れて石がころんと出てきた。その瞬間、狼の体の皮膚が三つに剥がれ、大きさも縮み、標準サイズの三匹の狼となり、一体ずつその場に倒れた。
(……あれ……?)
「……え……」
トゥルエノが唖然とした声を出すと、奥からマリア先生と先輩の魔法使いが二人走ってきた。マリア先生が倒れた三匹の狼を見て、血反吐がついたトゥルエノを見て、腰を抜かしたあたしを見て――その前に立つ魔女を見た。
「ミランダ!?」
「はあ。これはマリア先生、こんばんは」
ミランダ様のマントに隠れていた黒猫が下りて、あたしの前に着地した。にゃーお。
「あなた、どうしてここにいるの! ルーチェ、それに、トゥルエノまで!」
「あ、そ、その……変な音が聞こえたので……」
トゥルエノが慌てて声を出した。
「様子を見に来たら……首が三つになった狼がいて……急に襲ってきたので……気絶させて、その、報告しに行こうかと」
「危険行為です。それに……、……はあ、……話は後です。二人とも狼をお願い」
先輩の魔法使い達が頷き、狼に治癒魔法をかけ始めて、あたしはそっと顔をあげると、一瞬だけミランダ様と目が合った。しかし、言葉をかけてくださることなくミランダ様が離れようとして――マリア先生に肩を掴まれた。
「ミランダ」
「奇遇ですね。こんなところでお会いするなんて」
「本当に奇遇ね。……ここで何してるの?」
「昔同じ隊で戦ってた友人から少々仕事を頼まれましてね。……その途中です」
「泊まりなの?」
「三泊四日の長期依頼です」
「それはご苦労ね」
「ええ。あなたも」
ミランダ様が狼に振り返った。
「凶暴化した三匹の狼が融合してたみたいですね」
「ええ。ホテルから通報があって捜していたら……」
マリア先生があたしとトゥルエノを見た。
「ミランダ、助かったわ。ありがとう」
「これからお仕事ですか?」
「ええ。生徒指導という名のお仕事よ」
マリア先生があたしの前に立って足を止めた。
「ルーチェ、怪我は?」
「……ありません」
「トゥルエノ」
「……血反吐を浴びました」
「寝る前に調合薬を飲んだのはどっち?」
「え?」
「あっ」
トゥルエノが少しおかしな声を上げたのを見て、マリア先生の顔がトゥルエノに向けられた。
「何を飲んだの?」
「え、えっと……」
「通報があってからみんなが起きないように私が睡眠の魔法をかけました。だけど魔法の対象にならない場合がある。それは調合薬の魔力が体に含まれた人がいる場合」
(……だからトゥルエノだけ目が覚めたんだ。……何か飲んでたっけ?)
「トゥルエノ。何を飲んでたの?」
「……持ってきた……美容薬です。お肌に良いから、寝る前に毎日飲んでるんです……」
「なるほど」
「怪しい調合薬じゃありません。ちゃんと自分で作った……お肌に良いやつです」
「私が言いたいのは、トゥルエノ、就寝時間は過ぎてます。ルーチェもよ。部屋から出るのは規則違反じゃないの?」
(いや、だって廊下に血があったし)
「でも、マリア先生、変な音がしてドアを開けてみたら廊下に血があって、すごく様子がおかしかったので、こうするしかなかったんです。本当はこのまま先生達にこのことを伝えに行く予定でした」
(そうです、そうです。トゥルエノの言う通りです)
「どんな予定であれ規則は規則です。学校で動いてる以上、この状況は見過ごせません」
「ペナルティですか?」
「マリア先生、ろ、ろ、廊下に、血がついてて、その、それで、部屋にいろという方が、む、む、無理があります。魔法使いとして、状況は確認しないと」
「部屋の電話をなぜあると思いますか? しおりにも書いてます」
トゥルエノが思い出して、バツが悪そうな顔をした。
「……異常が起きた時、まずは内線電話で先生方に連絡する」
(いや、知るかよ)
「魔法使いたるものホウレンソウをしっかり心掛けるよう日々指導してます。二人とも、宿泊学習ではそういうところも見られるのよ。パニックになってたでは通らないの。魔法使いは常に冷静な判断が必要となります。いいですね。罰は明日にします。今夜は部屋に戻りなさい」
「はい……」
「(はい)うっざ……」
「は?」
ミランダ様が素っ頓狂な声で聞き返し、あたしもはっとした。
(あ、やべ)
「ルーチェ・ストピド」
言いたかったことと逆のことが出てしまった。見上げると、いつも優しいマリア先生が般若の顔であたしを見ていた。あたしはすぐに白旗を揚げる。
「あ……すみません」
「今すぐペナルティが欲しいならあげるけどどうする?」
「すみません。そ、そんなつもりじゃなかったんです」
「じゃあどういうつもり?」
「きょ、今日は、あのこんや、今夜は、も、もう戻ります。すみませ……あっ!」
立とうとしたあたしがその場に転がると、トゥルエノが目を丸くした。
「こ、腰が抜けた……!」
「ルーチェ、大丈夫!?」
トゥルエノが駆け寄ってきて、返り血だらけの手であたしの腕を掴む。
「掴まって! 私が! 運ぶから!」
(めっちゃ体ぷるぷるしてる。あたし、そんなに重いかな……)
「むふー!」
「はあ。全く」
マリア先生が杖を振ると、あたしの下半身に力が入るようになった。あ、すごい。流石マリア先生。
「ありがとうございます」
「二人とも寄り道しないで戻るのよ」
「「はーい」」
黒猫があたしを見上げる。
(じゃあね、セーレム)
チラッとミランダ様を見れば、ミランダ様の視線は狼に向けられていた。
(お仕事で出張なんて何も聞いてないけど……)
「ルーチェ、行こう。部屋で浴衣洗わないと……」
「あ、だね」
(ミランダ様も3泊するんだ……)
――二人だけで会いたいな。
(流石に駄目か。帰ってからお話しよう)
「はあ……べとべと……」
「トゥルエノ、ゾンビみたい」
「噛まれたら感染するから気をつけてね」
「あはは。……浴衣、お風呂入ってる間にあたしがあー、洗っておくよ」
「え、いいの?」
「うん。魔法でやっとく」
「ありがとう。ルーチェ」
(明日は二人でペナルティかー。部屋の掃除でもするのかなぁ)
「……ありがとね」
「え?」
「マリア先生に……うざいって言ってくれて」
「……あー……」
あたしは苦笑した。
「言うつもりなかったんだけど……なんか出ちゃった」
「でも、ちょっと報われた気がした」
「そう?」
「うん」
「それなら……良かった」
「「うふふっ!」」
あたしとトゥルエノが同時に笑いあった。
「ミランダ・ドロレス、初めて生で見たけど、すごい迫力だった」
「え? あ、……そうなんだね」
「話だけは聞いたことあったんだけど……なんていうか……」
トゥルエノが顎に触れた。
「すごかった。あの人の魔法」
「……うん」
そうなの。ミランダ様は、本当に素晴らしいお人なの。ホテルの窓を全開にして、アウデ・アイルの住民全員に聞こえるくらい大きな声で自慢したくなるくらい。あたしの憧れの人。尊敬しているお師匠様。
「あたし達もああいう風になりたいよね」
「だね」
ミランダ様を一目見て、俄然やる気がわいてきた。明日は課題の発表だ。ペナルティがあったとしても、十分に練習して挑もう。大丈夫。別にミランダ様が見るわけじゃないんだから、何も怖くない。
(ひとまず……今夜は何時間眠れるかな……)
部屋に戻って、トゥルエノはシャワー。あたしは浴衣を水魔法と火魔法を駆使して汚れを落とし、なんとか三時間の睡眠時間は確保した。
目覚ましアラームが鳴って絶望する。
(眠たい……まじで眠たい……朝いらない……寝てたい……)
「ルーチェ、食堂行くよー……」
(あ、トゥルエノもリボンが曲がってる……)
廊下に出ると、血痕は跡形もなく綺麗に取れていて、10代前半のクラスメイトが元気に歩いている。
「トゥルエノちゃんとルーチェママおはよー!」
「おはよう」
「おはー……(あー……駄目だ……。昨日貰った目覚まし薬飲もうかな……。……いや、勿体ないから珈琲飲みまくろう……)」
「トゥルエノとルーチェ、おはよー」
「おはよう」
「おはよー。レベッカ」
「今日午前中に魔法の練習してから各チームごとでチェックだよね」
「あー……確か、そうだっ……け? ルーチェ」
「確か……」
「もう見せる魔法決まった?」
「うん。大体」
(まじで昨日寝る前に話し合っといて良かった……)
「先生誰だろうね? マリア先生かな?」
「個人的にフィリップ先生がいいな」
「先輩達がチェックするケースもあるかもよ?」
(あたしはマリア先生がいいな)
見る人によって大体こんなことを言われるだろうという予想もできるし。マリア先生なら大体予想できる。
(ま、大丈夫でしょ。誰であれ、最大限できる魔法をやるだけなんだから)
この後の展開を知っていれば、あたしは呑気に「大丈夫でしょ」なんて思わなかった。朝ご飯を抜いて、必死に発声練習を繰り返していたことだろう。
その日、研究生クラスに嵐がやってきた。
「というわけで、急遽、特別講師で来てくれました」
笑顔のマリア先生が肩を叩いた。
「このヤミー魔術学校の看板を背負う代表魔法使いと言っても過言ではありません。ミランダ・ドロレスです。お仕事の都合で来てたそうで、たまたま昨夜会いまして、このような形で皆さんの魔法を見てくださることになりました。最終日は私が見るので、もっとどうしたらいいか、このミランダからアドバイスをもらってください。こんな機会滅多にないので、各チーム、全力を出すように」
研究生クラスの全員が目を丸くした。目の下にクマをつけたミランダ様がため息混じりに口を開いた。
「……お手柔らかに頼むよ……」
マリア先生に 長 時 間 説 得 されたんだ!!
(ぎゃぁあああああああ!!!! なんて恐ろしいペナルティーーーーー!!!)
ミランダ様が特別講師!
(殺されるぅううーーーー!! 心のえぐること言われて繊細なハートをズタズタにされた挙げ句今日こそ破門にされる!! 見限られる!! 捨てられるぅううーーー!!)
「すげえー……」
「ミランダ・ドロレスだ……」
「本物すぎて……言葉出ねえ……」
(いやぁあああああああーーーーー!!! 特別教室嫌ぁああああああーー!!! ぎぃぃやぁあああーーーーー!!!!)
青空にツバメが飛ぶ朝のことであった。
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