第40話 水曜はアンケート調査
今朝はマーガレット王女の髪型を少し変えた。アップして下すけど、片流しにしないでポニーテールっぽいけど、結び目は三つ編みにした髪で括っているように見えるやり方だ。
それに下ろしている髪は大きなカールにしたから、凄く華やかになった。
「まぁ、良い感じだわ! 浮き浮きする髪型ね!」
頭を動かすと、髪の毛がフワフワと揺れる。
「素敵ですわ」とリュミエラ王女も褒めるから、マーガレット王女もご機嫌だ。チャンス!
「あのう、今日も学食に行かなくてはいけませんの。経営学2の課題の調査に、パーシバル様とフィリップス様とラッセル様と行きます」
マーガレット王女は、パーシバルの付き添いがあるなら、他の男子学生も変な気にならないでしょうと許可してくれた。
経営学2の授業で最終確認してから、アンケートの実施をしようと思っているんだ。もうガリ版は刷ってあるよ。
前世のミニ鉛筆はないけど、ペンはフィリップスとラッセルが用意してくれている。
学生は筆記用具は持っているけど、職員は持っていないかも知れないからね。
国際法では、ラッセルとパーシバルが調べた国際法ができた歴史を中心に授業が進んだ。
異世界には国際連合とかないけど、エステナ聖皇国、ソニア王国、コルドバ王国、デーン王国、ローレンス王国、そしてカルディナ帝国と、南の大陸の一部の国家が基本的な法律を共有しているみたい。
でも、領土については武力解決をする場合も多いみたいだよ。
犯罪人の引き渡しも難しいみたい。自国に有利な犯罪には甘いみたい。
特許とかも一応は、ほぼ全部の国が合意しているみたいだけど、カルディナ帝国ではキチンと守られていないようだ。
商売熱心だけでは駄目だよね! 信頼が薄れる気がするけど、そこら辺はまだ事情が分かっていないから保留だね。
経営学2では、私の作ったアンケートを他の3人でチェックして、実施する事に決めた。
ケインズ先生が、そのアンケート用紙を目ざとく見つけて「これは面白いな!」と笑っていたよ。
「ラッセル、ずるいぞ! ペイシェンスを抱え込んでいるな」
他の男子学生から野次が飛んだけど、ラッセルは知らぬ顔だ。
「お前は赤組じゃないか!」と青組の学生が怒ったけど、外交学2とは別だよね。
それに青組にはカルディナ帝国の歴史と行政組織のプリントを配布する予定だから、文句を言われる筋合いは無いよ。
授業が終わったら、学食に急ぐ。
まぁ、私は私なりに早足だけど、パーシバルやフィリップスには先に行って貰ったよ。
いつもは、どちらかがエスコートしてくれるけど、今日はアンケートを渡す方が優先だよ。
学食に着いたら、パーシバルの周りに女学生が群がっていた。やれやれ!
「このアンケートに協力して下さい」とパーシバルは、次々と渡しているけど、女学生は他のラッセルやフィリップスからは受け取らない。
「私も配るのを手伝うわ」
何故か男子学生から手が伸びる。
女学生からアンケート用紙を貰っても同じだと思うけどね。
授業終わりのラッシュが終わってから、交代で昼食を食べる。
先ずは、ラッセルとフィリップスに食べて貰おうと言ったのに、レディファーストだってさ。パーシバルと二人で食べたよ。
「お先に頂きました」とラッセルとフィリップスと交代する。
もう、来る学生はいないけど、今度はアンケート用紙の回収だよ。
箱を用意していたけど、パーシバルに手渡す女学生が多い。人気者だね!
「おお、かなり回収できたな!」
ラッセルとフィリップスが食べ終わったようなので、私は職員にアンケート用紙を配りに行く。
後片付けもあるけど、もう一時の忙しさは終わったようだからね。
「あのう、これは学食の改善案のアンケート調査なのです。ここで働いている方の意見も参考にしたいので、ご協力お願いします」
おばちゃん達は、改善案と聞いて少し身構えたけど、アンケート用紙は受け取ってくれた。
やはり負担が増えるのを警戒しているのかも?
「へぇ、面白そうだね! でも、働く時間が増えるなら、給料をアップして欲しいな」
「それはアンケートの下に意見欄がありますから、書いておいて下さい。でも、給料がアップするかは私にはわかりませんわ」
「違いないね!」
「ちびっ子さんでは無理だよ」
ガハハと笑うおばちゃん達もアンケートに答えてくれたよ。
アンケート用紙を回収して、パーシバルやラッセルやフィリップスの元に帰ると、少し呆れられていた。
「ペイシェンス嬢は、気軽に話をされるのですね」
ああ、貴族の坊ちゃま達は使用人とは距離を置くのが普通かも。メアリーが私を台所に入り浸らせないようにするのと一緒だね。
立場が違う者同士は、馴れ馴れしくしないのが慣習なのかも。
「ええ、グレンジャー家は気楽な家風なのです」
メアリーが聞いたら、叱られそうだけど、貧乏を乗り切った仲間だもんね。
アンケート用紙を回収して、
「結構、要望を細かく書いてくれているな!」
丸をつけているだけの用紙もあるけど、意見を書いてあるのも多い。
「集計して、意見は別に書き出しましょう!」
これは慣れている私がする事にした。
アンケートの集計なんか、他の人はした事がなさそうだからね。
単純に計算してBクラスとCクラスの学生が6学年分。
中等科3年生になると毎日登校している学生は少なくなるから、320枚を刷ったけど、ほぼ渡して300枚を回収している。
なかなかの高回収率なのは、新学生会長のパーシバル効果かも。
それに騎士クラブの男子学生は全回収だよ。部長にはならず、騎士クラブも辞めたけど、やはりパーシバルは尊敬されているんだね。
先ずは、女学生と男子学生に分ける。それによってアンケート結果が変わるからね。
そして、マルが付いている箇所を普通を0にして、良いをプラス1、とても良いをプラス2、少し不満をマイナス1、不満をマイナス2で、各項目ごとに集計する。
「ペイシェンス嬢、それは素晴らしい集計方法ですね!」
フィリップスに褒めて貰えたよ。
これは、ザッとした全体の印象を見るのに有効なんだ。後で、各項目ごとの集計もちゃんと取るよ。
「やはり女学生は、量が多いと、メニューに不満、席も少ないにマルをつけている学生が多いわ」
簡単な集計だけど、マイナスが多いポイントはわかりやすい。
「ペイシェンス様、よく問題が分かります。それに男女比の違いが的確に分かります」
パーシバルも褒めてくれた。ラッセルが難しい顔をしている。
「この働いている人達のアンケートを見ると、改善案が難しくなるな」
確かに、これ以上の仕事を増やして欲しくないとの要望が多い。
でも、中には改善案を書いてくれている人もいた。
「喫茶を開く事に賛成のマルをつけてくれた人も多いわ。私達は、こうしてお茶をしているけど、学食では無理ですもの」
アンケートの集計結果は各自に渡すけど、そこからは自分で考えないといけない。
皆がどんな改善案を書くのか楽しみだな!
昼からの織物2で、ダービー先生に染めて裁断して残った皮を渡した。
「まぁ、まぁ、皮をこんなに色鮮やかに染めたの?」
方法を話したらガッカリされちゃったよ。
「生活魔法を使える学生もいますけど、きっと魔力不足だと思うわ。でも、試してみます。それにこの皮を貰っても良いのですか?」
端切れ皮だけど、小物ぐらいは作れるよね。
「ペイシェンス様、とても綺麗な色の皮ね!」
他の女学生は、全員が手芸クラブだ。わいわい集まって何が作れるか話している。
ついでに、私が考えているセット販売について聞こう。
「あのう、この口金をつけたハンドバッグを考えていますの。カルディナ帝国の鮮やかな布に、ビーズ刺繍をして、この口金をつけたら、可愛いハンドバッグになると思うの。このセットを販売したら買う人はいるかしら?」
小さなハンドバッグには、バラのビーズ刺繍をする予定。ザッとしたスケッチだけど、食いつきは良い。
「私なら買うわ! それに自分でできなくても、メイドにさせる人も多そうよ」
ああ、あの女学生達の裁縫能力の無さを考えていなかったかも。
でも、メイドとかはできそうだよね!
「ダービー先生、漂白剤のお礼にクラブメンバー分のビーズと布と口金をプレゼントしますわ。それと、錬金術クラブからはカエサル部長が洗濯機を進呈すると話しておられました。何回も洗わないといけない場合には重宝します」
ダービー先生は、にこにこ笑って受け取ると言ってくれた。
やはり、貴族はタダで物は貰わないのが常識みたいだね。
「これが上手くいけば、青葉祭のバザーに出せそうですわ。簡単な模様のを作って販売すれば良さそうよ」
ああ、来年の青葉祭の準備もしているんだ。
錬金術クラブもしているけど、その前にメンバーを集めなきゃいけないんだ。
四時間目は、錬金術クラブに行く。
料理クラブにも惹かれるけど、ハンナに聞いたら今日は私が前に渡したミルクレープを作るみたい。あれは作り方を知っているからパス。
それに、カエサル部長がワークショップについて話し合いたいと、火曜に言っていたからね。
どうも、意見が二つに割れているみたいだ。放課後、全員で話し合う事になっている。
だから、四時間目から行くんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます