第20話 ラフォーレ公爵家に行くよ!
金曜はアンジェラがサティスフォードに帰ってしまうので、少し寂しく感じた。そう言えば、異世界で女の子の友達って織物の3人しかいないかも? それもクラスが違うから、授業の時にしか会わないし。それって友達というか、知り合いだよね。
マーガレット王女といつも一緒だから、家政コースでは友達が作り難いと思っていたけど、同じ授業は裁縫と外国語だけだよ。
「私って、女の子の友達が少ないわ」
前世では友達が多い方だったのに、何だかショックだ。アンジェラも私に慣れて楽しくお喋りしていたから、帰ってしまうのが寂しくて愚痴ってしまう。
「まぁ、ペイシェンス。令嬢なら普通ですわ。気楽に外を出歩く庶民ではあるまいし。それに、社交界にデビューしたら友達も増えますよ」
アンジェラの馬車を一緒に見送っていたリリアナ伯母様に慰められた。
「それに貴女はマーガレット王女様の側仕えではありませんか」
それは、そうだけど……側仕えと友達は少し違うよ。前よりはマーガレット王女と親しい関係だけどね。お金は直接は貰っていないけど、大学の奨学金は頂いたし……何だかそれが壁になっているんだよ。
それに、王立学園にいるのだから、もう少し女の子の友達が増えても良い筈なんだけど……あっ、やはり文官コースと錬金術クラブが原因かも。あそこら辺は男子学生ばかりだもん。
アンジェラを見送ったら、午前中は勉強だ。明日は私とサミュエルは音楽会に招待されているから、留守の間の勉強する範囲を指示しておく。
「ナシウスとヘンリーはお留守番だけど、ここら辺まで勉強していてね。ヘンリー、分からない所はナシウスに質問するのよ」
もうナシウスならヘンリーの勉強を任せても大丈夫だ。ただ、私が可愛い弟に教えたいからしているだけ。
「「はい、お姉様!」」二人とも良い返事だね。
ここからは音楽会に行くサミュエルと打ち合わせだ。
「私もリュートの曲を弾きたいけど、やはりサミュエルの方が上手なのよね」
夏休みの間にリュートを練習しようと思っていたのにさ、乗馬ばかりしている気がするよ。ぶーぶー!
「ペイシェンスはいっぱい作曲しているから、他のメンバーと被らなければ良いから楽だろ?」
何曲かサミュエルと合奏したりして、音楽会の準備を終えた。と思ったんだけど、リリアナ伯母様との準備は、ここからだった。
「ねぇ、ペイシェンスはどのドレスを着て行くつもりなの?」
服装チェックから始まった。夏の離宮へ行く時に着たドレスなんだけど、駄目かな? メアリーに持ってきて貰う。
「そうねぇ、少しあっさりしているわ」
こちらの服装は、私には装飾過多に思える。だから、私のドレスは控え目と言えるね。
リリアナ伯母様のドレスはフリフリでは無いから、これで良いと言われると思っていたよ。
「これに同じ色のリボンだったわね。少しアクセサリーで華やかにしても良いと思うわ」
生憎、貧乏なグレンジャー家には宝飾品などない。なんて内心で愚痴っていたら、リリアナ伯母様の侍女が小さな宝石箱を持ってきた。
「これは嫁に行った娘達が、若い頃に使っていたアクセサリーなの。結婚した貴婦人が付けるには可愛い感じだから置いてあったのよ。ペイシェンスが今付けるには丁度良いと思うわ」
えっ、貰っていいの? 差し出された宝石箱を受け取る。
「ありがとうございます」
蓋を開けてみると、細い金飾りや、可愛い花のブローチ、小さな宝石が付いた指輪、そして小さな真珠の首飾りがあった。
「これは……高価なのでは?」
異世界では真珠は高い。マーガレット王女も寮には持って来ていないが、夏の離宮の晩餐でつけていた。
「この真珠は海で取れたものでは無いの。だから、然程高価では無いから、ペイシェンスが普段使いにしたら良いわ」
あっ、前世でも淡水真珠があったね。もう少し暖かい海なら真珠の養殖をしたら良いのかも。
メアリーに淡水真珠の首飾りをつけて貰うと、まだ幼いペイシェンスには十分な華やかさだ。
「よく似合っているわ。そういえば、ペイシェンスの社交界デビューはどうなっているのかしら?」
うっ、気の重い事を思い出す。リュミエラ王女も一緒にマーガレット王女と社交界デビューするんだよね。どんな王女か分からないし、不安要素がいっぱいだよ。
「ビクトリア王妃様からマーガレット王女様と一緒に来年の秋に社交界デビューするようにと言われていますが、まだ早いのではないでしょうか?」
キャッとリリアナ伯母様は胸の前で指を組んで喜ぶ。
「まぁ、ビクトリア王妃様から声を掛けられて社交界デビューだなんて! とても名誉だし、素敵だわ! 13歳でデビューは少し早いですが、その時、ペイシェンスはもう中等科2年なのですから良いと思います」
リュミエラ王女の件は内緒だよ。秋に王立学園に入学されたら、リチャード王子との婚約は全員が察すると思うけどね。
だってコルドバ王国の王女がわざわざローレンス王国の王立学園に留学するって事は縁談だと分かる。
リリアナ伯母様のテンションMAXなのに圧倒された。どうやら王妃様の言葉を受けての社交界デビューはとても名誉なことのようだ。前世では庶民だったし、社交界デビューなんて全く関係ない生活だったからね。
「ペイシェンスは母君を亡くしているから、私かアマリアお姉様かシャーロッテお姉様が後見人になるわ」
後見人って前世のヨーロッパ映画で見たことがある。舞踏会とかで椅子に座って扇子で口元を隠しながら、噂話をしているイメージしかないけど、社交界デビューするには後見人の貴婦人が必要なんだな。やれやれ厄介だよ。
ラフォーレ公爵家へは、昼食に間に合うように出かける。つまり、朝早くからメアリーに起こされて、着飾らされた。リリアナ伯母様に頂いた淡水真珠のネックレスをつける。
「まぁ、お嬢様、とてもお似合いですわ」
前は、メアリーは援助をしてくれなかったリリアナ伯母様に批判的だったが、今回の招待でかなり好意を持ったようだ。それに装飾品は貴族の令嬢に相応しいと喜んでいる。どうやら母親の装飾品は売ったみたい。仕方ないよね。
簡単に朝食を済ませて、私は念入りにナシウスとヘンリーに挨拶してから馬車に乗る。今回の馬車にはノースコート伯爵夫妻とサミュエルと私が同席して、メアリー達侍女や従僕は2台目の馬車だ。それに警護の兵がつく。
「ペイシェンス、私が今日は後見人なのですから、私の許可無しに離れてはいけませんよ」
リリアナ伯母様に言われるまでもなく、側を離れる気は無い。監禁されたら怖いよ。
これはマーガレット王女にかなり叱られたからね。私はどうも現代人の感覚で、11歳の子供だから大丈夫だろうと気楽に考えてしまう癖がある。
異世界の貴族は怖いと、マーガレット王女にこんこんと説教された。そう、近頃は、かなりマーガレット王女と親しく話すことが増えた。音楽以外の事でもね。
でも、友達なのかと聞かれると、身分の差を感じちゃうから首を捻っちゃうな。
なんて事を考えているうちにうとうとしたみたいだ。朝早かったからね。サミュエルもうとうとしたのか、2人でもたれあって寝てしまった。
「サミュエル、ペイシェンス、もうすぐ着きますよ」
リリアナ伯母様に言われて、ハッと目が覚めた。サミュエルも私と距離が近いのに慌てて、馬車の反対側に退く。
「2人ともよく寝ていたな」
ノースコート伯爵に笑われてしまったよ。まぁ、でも寝て体力温存できたから、音楽会を乗り越えるぞ!
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