第14話 器用貧乏?

 木曜は行政、料理、習字、染色だ。行政はルパート先輩のお勧めサリバン先生だ。でも、法律と行政の授業には改革の波は来てないみたいだ。一気に改革はできないのは分かるけど、残念だね。

「料理も変わっているみたいだわ。上級生が騒いでいたもの」

「前は出席すれば単位をくれると聞いていましたけど、どう変わったのでしょう」

 2人で朝食を取りながら首を捻る。受けてみたら分かる事だ。マーガレット王女も考えても無駄だと話を変えた。

「昼からの習字も一緒ね。これはお母様にも勧められていたの。綺麗な字を書くのは貴婦人の嗜みだと言われていたの。でも、古臭く感じて取らないって言ったの。そうね、古臭いとハリエットが言っていたから感化されていたのだわ。お母様がよく手紙を自ら書かれているのを見ていたのに、私は全く理解していなかったのね」

 王妃様から自筆の手紙を貰ったら、受け取った貴婦人は誇らしいし、嬉しいだろう。でも、その字が汚かったら台無しだ。

 マーガレット王女がどこに嫁がれるにしても、手紙を書く機会は多そうだ。その時、代筆では礼を欠く事もあるのを心配されて習字を勧められたのだろう。

 私はカリグラフィーが格好良いって思ったからだけどね。あっ、そうか。代筆の内職も有りだ。すぐに金儲けを考えちゃうの私の欠点かもしれない。

「あっ、そうだわ。金曜は王宮に行くわよ。どうやらキャサリン達の親からお母様に学友を外されたと苦情があったみたいなの。貴女も連れていらっしゃいと手紙が来たの」

 マーガレット王女は平然としているが、『ええええ、大変じゃない!』と私は内心で叫んでいた。でも、1年の側仕えで私のマナーも向上している。

「そうですか、わかりました」と何でもない様に応えた。

 4年Aクラスのホームルームは行く価値を感じない。このカスバート先生、担任には向いてないよね。碌に連絡事項もない。中等科になって初めて専門コースに分かれるし、必須科目とか選択科目とかどれを取れば良いか悩んでいる学生も多い筈だよ。なのにフォロー無しだもん。あっ、だからカエサルみたいに必須科目を履修登録し忘れる学生も出てくるんじゃないかな? なんて他の事を考える。

 だってキャサリン達と一緒なのが神経に障るんだもん。嫌な視線がバサバサ飛んでくるんだよ。家でなんと言われているのか、察しがつくよ。マーガレット王女が我儘だとかの文句も言っているだろうけど、私の悪口に集中しているだろう。親だってマーガレット王女の悪口は止めるよね。でも、免職中のグレンジャー子爵の娘の悪口は、その通りだと受け入れて一緒に怒っているのかもしれない。

 親から苦情が来ているのなら、王妃様に側仕えクビになるかもしれないが、それならそれで仕方ない。そう割り切って、悪意の視線に耐える。


 サリバン先生の行政の授業は面白かった。でも、基本は教科書に沿って行われる。それに1回目の行政の授業はパターソン先生から受けているので同じ内容だ。

 やはり、法律と行政には改革の波は来ていないようだ。模擬裁判とかシャドー内閣とかしたら面白そうなのにな。授業は楽しいけど、法律と行政はアルバート部長の真似をしよう。教科書を丸暗記して終了証書を貰う事にする。パターソン先生と違ってサリバン先生には2年と3年の教科書を貰いやすい。放課後、職員室で貰おう。

 何故、終了証書を欲しがるか? キューブリック先生の魔法使いコースに勧誘された訳じゃないけど、錬金術とマナーが飛び級したから、時間割表と睨めっこしていたら、薬草学と薬学を見つけちゃったんだ。

 ほら、ペイシェンスって肺炎で死んじゃったでしょ。だから、治療できたら良いなぁと考えていたんだ。でも、治療って光か風か水なんだ。特に病気は光みたい。

 でも、私の生活魔法ってちょっと変で、野菜とか育てられるじゃない。薬草を育てて金儲け、いや、家族が病気になった時、早めに薬を飲ませたら良いんじゃないかな。ええ、そうですよ。金儲けも大事なんです。

 それと薬草学とセットの薬学。薬学クラブは錬金術クラブの隣にあるんだよ。手芸クラブ、錬金術クラブ、薬学クラブ、どれを選ぶか悩むね。当たれば大きいのは錬金術クラブ。楽しいのは手芸クラブ。そして将来も収入に困らないのは薬学クラブだ。

「文官コース、家政コースだけでも大変なのに魔法使いコースの選択科目を4つも取るなんて馬鹿げてるよね」

 なんて言いつつも、薬草学と薬学のコマが空き時間に無いか探しちゃったんだ。あら、ぴったしじゃない。これって取れって言われている気がするよ。内職する時間に当てようと思っていたけど……今の10チームを取るか、将来の10ロームを取るか。決まったね。取ろう!

 月曜の4時間目が薬草学、そして水曜の3時間目に薬学。でも、一度も受けずに履修届けを出すのは不安だ。時間割表と睨めっこする。

「金曜の1時間目、薬学だ」ここは、サリバン先生の法律だけど、法律の第1回目はパターソン先生で受けている。なので、こちらで試してみたい。全く無理そうだとか、面白く無かったらパスしても良いからね。

 サリバン先生、ごめんなさい。行政の1回目はもう受けているし、先生の雑談はちゃんと聞いたよ。でも、科目の方針だからか教科書の読み上げが多くて、やはり他の事ばかり考えてしまいました。だから、うん、丸暗記して終了証書貰いたいのです。

 私の履修届、3コースに跨っているよ。何か欲張り過ぎているのかな? 一度、父親と相談した方が良いのかもしれない。

「何になりたいのだ?」と呆れられるかも。

 そう、初めはペイシェンスも考えていた通り女官とか文官を目指して文官コースを取ったんだ。

 そして、マーガレット王女の側仕えとして嫌だけど家政コースも取ったんだ。でも、織物、染色、習字、刺繍、外国語は面白いんだよ。

 その上に錬金術に惹かれて、魔法陣も取って、それに上乗せして薬草学や薬学に興味が出たんだ。

 最初の文官コース、行政と法律は丸暗記で終了証書を取る予定だ。それに経営学は面白い。世界史と地理はまだだけど、ルパート先輩の推薦の先生なら面白いんじゃないかな? 経済学は金曜だから、まだ分からないよ。私は前世では経営学部卒だった。就職に有利だから選んだんだよ。まぁ、無事に就職はできたけど、異世界に来たから活用できてないね。経済学を選ばなかったのは数学が必須だったからだ。異世界ではどうだろう。少し不安だ。

 そんな事を考えているうちに授業は終わったよ。本当に申し訳ない気分だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る