第76話 弟達の能力判定
アマリア伯母様から王立学園の制服や子供用の防具などのお古が送られてきた。
「何故、はじめに頂いたのが女の子用の制服だけだったのかわかるわねぇ」
制服は毎日着るから袖口や裾などが擦り切れたりテカッたりしている。ラシーヌのお下がりも古びていたが、男の子用は引っ掛け傷や綻びが多かった。でも、私には生活魔法がある。全部、新品にしたよ。
「お嬢様の生活魔法は本当に役に立ちますね。それに前よりも力が強くなられたように思います」
そりゃ、毎朝マーガレット王女を起こしたり、身支度を手伝っているからね。それに内職でも使っているし……使いまくっているよね。本当!
子供用防具も色々なサイズがある。木剣も大中小とあるから、新品にしておく。
「ナシウス、ヘンリー、防具を当ててみましょう」
2人に防具を付けさせる。皮のバンドで調整可能なので、手直しは要らないみたい。
「こら、ヘンリー! 部屋の中で木剣を振り回してはいけない」
騎士になった気分で木剣を振り回すヘンリーをナシウスが叱る。
「駄目ですよ。遊びでは無いのですからね」
とは言え、男の子はチャンバラごっこ好きだよね。ジョージを呼んで、庭で稽古させる。ナシウスも頑張ってね!
その間に、私はワイヤットと話さなきゃ。2人に能力チェックを早く受けさせなきゃね。
「ワイヤット、少し時間を良いかしら?」
いつもながら、ワイヤットは私が何をしに来たのか知っているみたい。
「ええ、お嬢様。何かご用ですか?」
なのに知らん顔をして聞くのが曲者っぽいんだよね。
「お父様はナシウスとヘンリーの能力判定について、どうお考えなのでしょう。王立学園では魔法実技があるのです。早く練習しないといけませんわ」
本来なら父親が気をつけるべき事柄なのだが、ペイシェンスも本当にギリギリに能力チェックを受けた。まぁ、病気で死にかけていたから仕方ないのかな? いや、他の貴族の子はもっと早くから受けていると思うよ。キース王子とか自信満々だったもん。ずっと前から練習していた態度だった。
「そうですね。子爵様にお伝えして、教会に連絡を致しましょう」
金貨2枚は痛いけど、これは必要経費だ。特にヘンリーは身体強化系だと思うから、正式な剣術訓練を始める前から使えた方が良い。
やはり金貨2枚は痛いんだね。ワイヤットが壊れた骨董品をそっと4つ差し出してきたよ。ちゃんと新品に修復するよ。高く売ってね! それにしても壊れた骨董品、多くない? 蚤の市とかで壊れたの安く買ってきているのかな? 蚤の市があるなら行ってみたいな。
次の日、父親が弟達を連れて教会に行った。男の子は、侍女の付き添いは要らないんだね。それに余所行きの服はメアリーと用意していたよ。
「さぁ、お祝いをしなきゃ!」
あの貧しかった去年でもお祝いをしたんだよ。可愛い
「ナシウスは梨が好きですから、梨のタルト」これは決定だよ。
「ヘンリーはお肉が大好きですから、奮発して大きなステーキにしたいのですが……」
エバが首を横に振る。大きなステーキは無理なんだね。でも大丈夫。量は増やせば良いんだよ。
「エバ、肉を包丁で細かく叩いて。それと玉ねぎをみじん切りにして炒めて。古いパンをちぎってミルクに漬けてね」
そう、少ない肉を玉ねぎやパンで嵩ましするハンバーグだよ。
「材料をまとめてボールに入れたら、人数分に分けて丸めて平たくするの。それをフライパンで焼いたらハンバーグステーキになるのよ。ソースはトマトソースにハンバーグステーキを焼いた肉汁を煮詰めてね。付け合わせは任せるわ」
料理はエバに任せて、私は温室で薔薇を切る。高く売れる薔薇だけど、お祝いだもの。
食卓にはテーブルクロスが掛けてある。その真ん中に薔薇を低く生ける。これは前世のテーブルセッティングで見たんだよ。高く生けると相手の顔がよく見えないから駄目なんだって。弟達の顔はよく見たいもの。
私もメアリーに手伝って貰いドレスに着替える。お祝いだからね。ペイシェンスも栄養が足りて、頬もふっくらして可愛くなったね。前はガリガリで、目ばかり目立っていたけど、今も目は大きいけどギョロッとはしてない。うん、かなりイケてるよ。
馬車が帰ってきた。玄関で出迎えるよ。
「お帰りなさい」
父親と弟達と食堂に向かう。
「ナシウス、ヘンリーおめでとう」
ヘンリーは薔薇が飾ってあるのを見て「綺麗ですね」と喜ぶ。ナシウスは「お姉様、良いのですか?」と心配そうだ。薔薇を高く売っているのを知っているんだ。幼いのに金の苦労をさせてごめんね。父親は薔薇には気づいたらしいが、金の事は知らないみたい。子爵家のお坊ちゃん育ちだからね。
「2人のお祝いですもの」
席に着くと珍しく父親が口を開いた。
「今日はナシウスが風の魔法を、ヘンリーが身体強化の魔法をエステナ神から賜った。おめでとう」
普段は信仰深く無さそうだけど、魔法を無事に賜り、嬉しかったみたいだ。私もホッとしたよ。貴族はほぼ魔法を賜るけど、例外はどこでもあるからね。
「さぁ、食べましょう」
前菜は野菜のパテだよ。スープは蕪のクリームスープ。そしてメインはハンバーグステーキだ。
「お姉様、とっても美味しいです」
ヘンリー、お腹いっぱい食べてね。
「これは柔らかくて食べやすいな」
父親にも好評みたいだ。
「お姉様、ハンバーグステーキとは何処の料理ですか? 地名ぽい名前ですが」
おっとナシウス、まずいな。
「さぁ、
誤魔化したよ。ごめんね、まだグレンジャー家では
デザートは梨のタルトだ。梨はコンポートしたのを薄く切って並べてある。本当にエバは薄く切るのが上手いよ。
「わぁ、梨のタルトですね」
ナシウスの大好物だからね。ここで出さないでいつ出すんだよ。
「お姉様、とっても美味しいよ」
ヘンリー、そんなに急いで食べなくても誰も取りませんよ。ナシウスはゆっくりと味わっている。まだグレンジャー家ではスイーツは贅沢品だからね。
「2人には私が魔法の使い方を教えよう」
父親と同じ風の魔法のナシウスは大丈夫だろう。ヘンリーも使い方ぐらいは教えられるのかな。姉達に説教されたからか、父親としては積極的だ。良い傾向だね。この勢いで就職してくれれば良いのだけど。
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