第14話 王族って大変そう
令嬢らしく少し遅れて食堂に着いたが、そこにはかなりの学生がいた。
『なんだ、皆んな腹ぺこなんだ』なんて思っていたけど、どうも雰囲気が違う。同じ灰色の制服なんだけど、違うんだ。
あっ、皆んなの制服はサイズがぴったりなんだ。私のはお下がりの小さいサイズを修復して着ている。メアリーが肩とかスカートの裾とか袖丈とか縫い縮めてくれているけど、そのうち大きくなるからと、少し大きい。
成る程、お金があるからジャストサイズで良いわけだ。成長した時は買い直すんだ。それに、生地も高級そうだ。お金があるって大事だね。
そんなお偉い学生達が何故ここにいるのか? すぐに分かったよ。階段から部屋に置いてあったベッドとか応接セットとか勉強机とか、地下に運び込まれている。この人達の部屋は大改造中なのだ。予め、しとけば良いのに……とは口に出さないよ。
どうやら、食堂はセルフサービスのようだ。お盆を持って列に並ぶ。私は列に並ぶのなんて平気だけど文句つける馬鹿が1人ぐらいいるんじゃ無い? と思っていたら、やはり揉めているよ。
「何だって、自分で運ぶのか?」
「この列に並ぶのか?」
こんな人達には関わらないでおこう。どう見ても新入生ではなさそうだ。身長は170センチ以上ある。これで10歳とかだったら笑うよ。上級生なんだろうけど、お子様だね。フン!
「学園の
ほほう、学園には
まぁ、制服代とか諸経費はいるんだよねぇ。生活魔法のお陰で何とかなったけど、貧乏な貴族にはかなり負担だよ。そして、寮には特別室とか呼ばれる部屋があり、そこは課金しなきゃいけない。これも私には無関係だね。そんなお金ないし、205号室で満足だもの。
やっと私の番になった。美味しそう。涎が出そうだけど、それは令嬢らしくない。
できるだけお淑やかそうにお盆を差し出そうとしたのに、横入りされた。
『お前、殺すぞ!』と睨み付けたが、全く相手にされていない。
「おい、横入りするなよ」
私の後ろに並んでいた男子学生が怒った。
「何だって、これはキース王子の……」
ハッと全員が圧を感じて後ろを振り返る。金髪、緑の瞳、威圧感ばんばんの学生が立っていた。
「お前はキースを甘やかして取り入るつもりか。父上が私達を寮に入れたのは、自立させたいと考えられたからだ。そのご意志に反させるつもりか」
どうやらリチャード王子のようだ。めちゃ圧強いよ。15歳なら最上級生だな。この1年、関わらない様にしておこう。と思っているのに……
「キース、ここに来て、この女学生に謝りなさい」
いやいや、平気ですよ。関わりたく無いんです。逃げ出したい気分だけど、それも許されそうにない。
「兄上、私はそんなこと頼んでいません。こいつが勝手に……」
あっ、そんなの言ったら火に油を注ぐ様なものだ。
圧が強くなり、これは何かの魔法ですか? 横入りした男子学生とキース王子は、膝を突いた。威圧って魔法があるのかな? 後で調べておこう。
『見つからない様に逃げたい!』
チビなのを利用して、こそこそっとお盆を差し出して、置いてもらった皿を持って素早くその場を離れた。
食堂の隅の人が居ないテーブルにお盆を置いて、椅子に座る。
『はぁ、王族って大変そう。絶対に関わりたく無い』
ペイシェンスが王子様の前から逃げ出すなんてとか、ぶつぶつ文句を言っている気がするが、恐ろしげな兄弟喧嘩に巻き込まれたくない。あのキース王子って同級生なのか……違うクラスだと良いな。
折角の濃いシチューなのに、あんな兄弟喧嘩のせいで味わえなかった。さっさと食べて部屋に逃げ込む。
リチャード王子の怒りがとけ、キース王子に謝らそうとしたけど、誰もいなかったと噂になっていたみたい。
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