第13話 寮生活は快適

 やっと王族方やその取り巻きらしき上級貴族達の荷下ろしが終わり、私達も荷物を降ろす。校舎の建物の前までしか馬車は入れないみたい。そこからは歩きだね。

 ジョージが衣装櫃を下ろしてくれ、メアリーが寮の中まで本や勉強道具などが入った箱を運んでくれる。衣装櫃は、寮の下女が運んでくれるみたい。確か、男子寮と女子寮があって、男子は女子寮には入ってはいけないし、女子は男子寮に入ってはいけない規則があった筈。弟達と別れるのが辛くて寮則は斜め読みだったんだ。

 なので重い衣装櫃も下女が運んでくれるんだ。って事は、男子寮は下男だよね。まぁ、台車とかあるし、なかなか力強そうな下女だから大丈夫なんじゃないかな?

 一階は食堂。ここは男女一緒みたいね。

 食堂には二つ階段があって、右側が男子寮、左側が女子寮になっている。右側が王宮に近い、つまり弟達にも近いのに……。

「お嬢様、この部屋みたいです」

 受け付けで貰った鍵で、メアリーは205号室の部屋を開けた。25歳だったからかぁと変な感慨を持つ。

「こんな狭い部屋……お嬢様、おいたわしい」なんて言うけど、十分だよ。そりゃ、ペイシェンスの部屋の半分しかないけど、私が一人暮らししていた部屋より大きい。それに、なんと暖炉にはパチパチと火がついていた。

「暖かいわ」転生してから始めて身体の芯から暖かく感じる。狭いって素敵だよね。

 私が暖炉に感激し椅子でまったりしている間に、メアリーは衣装櫃から服を取り出して箪笥にしまったり、部屋に付いている布団の上にベッドカバーを掛けたり、箱から勉強道具を出したり、あれこれ働いていた。

 えっ、私は手伝わないのか? メアリーがやっとメイドらしい仕事を生き生きとしているのに、それを取り上げろと? 私はそんな酷い事はしない。身体が暖まったので、部屋のチェックをする。

 部屋は日本風に言うと10畳、ワンルーム、家具付き。備付けのベッド、箪笥、勉強机と椅子、それに暖炉前には簡単な応接セット。

 あの凄い荷物の中には応接セットとか、ベッドとかもあったような、ご苦労様だよ。

「あのう、お嬢様……申し訳ありませんが、机を動かすのを手伝って下さい」

 かくいう私も屋根裏部屋で見つけたぼろぼろなミニ絨毯を修復して持って来ていたのだ。うん、これを敷くとより暖かそうだよね。

 後は、何とトイレとお風呂も付いてた。さすが、王立学園! 何と、魔石も付いているんだよ。太っ腹だね。

「まぁ、これは魔法灯ですわね」

「へぇ、凄いね」

 魔法灯、確かグレンジャー家の食堂と応接室には付いているけど、お察しの通り、魔石切れで機能していない。生活魔法で灯もあるけど、ずっと灯しているのは疲れるんだよ。

 はっきり言って、寮はグレンジャー家より快適だ。でも、ここには弟達がいないのが欠点だよね。

「そうか、ナシウスは2年後、ヘンリーは4年後には王立学園に入学するんだよね」

 できたらそれまでに馬が買えると良いな。寮は快適だけど、朝とお休みのキスができないのは寂しいもの。

 メアリーは「お嬢様一人で」と心残りみたいだったが、家には仕事がいっぱいなので帰っていった。

「昼食は何時からかしら?」

 持ってきた物は少ないし、メアリーが手早く片付けてくれた。余裕ができた私は、寮則を読む。食事の時間は大事だもんね。

「昼の鐘? まだ鳴ってないよね」

 裕福な貴族は時計を持って来ているかもしれないけど、私は持っていない。きっと貧しい貴族は持っていないだろう。その為に鐘が鳴るみたい。

「起床、朝食、予鈴、1時間目、2時間目、昼食、3時間目、4時間目、夕食、就寝……結構、鐘多いわね」

 授業の始まる前と終わった時と2回も鳴るのだ。鐘に追い回されて暮らすのかと溜め息が出る。

『カラ〜ン! カラ〜ン』

 おっ、昼食の時間だ! 急いで部屋を出ようとしたのに、ペイシェンスチェックが入った。このところ、あまり入ってなかったのになぁ。このまま無くなるかなぁと、少し寂しい様なホッとした様な気持ちだったけど、学園ではチェックが多くなるかもしれない。

『令嬢は食堂に急ぐべきではありません』

 まぁ、がっついて見えるもんね。私は洗面所で手を洗ってから、ゆっくりと降りていった。

「お腹が空いたわ」食堂からとっても良い香りがして、階段の途中でお腹が鳴く。少し、早歩きにして食堂へ向かう。

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