2章 遊び焦がす夏
21. Let's dress up 前編
『装備』とは、
RPGなどの世界では主に、強敵と戦うための武器や防具のことを指す。
店で売られている物や、ダンジョン内の宝箱、モンスターからのドロップ品等、入手手段は多い。
当然のことではあるが、武器や防具は持っているだけでは意味が無く、装備をしないと効果は出ない。
しかし......
◇◆◇◆◇◆
フォックスオードリーでの件にカタがつき、パーティー全員カラーズに帰ってきたことで、また普通の日常が戻ってきた。
もっさりと伸びきったヒゲを剃り、今日も筋トレに励む。
つくづくこの世界は、体力がモノをいうと思い知ったからだ。
「ムァッハッハッ!精が出るな!そろそろスクワットだけじゃなく、ベンチプレスもやってみるかい?」
声をかけてきたのは、ジムの管理者にして
「そうだな。武器が少し重くなったし、腕の筋力もつけたほうがいいかもしれない。ダンベルが欲しいな」
「ムァッハッハッ!おやすいご用だ!存分に鍛えてくれたまえ!」
ボディビルダーだけあって、フランキーはトレーニングの教え方がうまい。
かけ声などで、こちらのモチベーションを維持させつつ、飽きない筋トレメニューを考えてくれる。
この調子で頑張れば、新装備のブラフマンもつかいこなせるはずだ。
「ムゥン!それがフォックスオードリー旅行で手に入れた、新しい武器かね?」
「あぁ、ミリオンペンディング
「ムァッハッハッ!結構なことだ!だがな、大きな力には、やはり大きな代償が
最後の一言で、心についての解説が全部持っていかれた感ある。
そういえば、アスモダイも
とは言え、手にした力を存分に使ってみたい好奇心もある。
グシャ!!
「ムォォ!?軽く掴んだリンゴが
なるほど、日常生活に支障が出る場合もあるのか。
"パンドラの森"
昇級クエスト以来、久しぶりに訪れたパンドラの森。
俺には、ここでどうしても決着をつけないといけない相手がいる。
「なんで今更、こんなザコしかいないとこに来るんだよ?アタシはもっと強いモンスターがいるとこがいいよ」
「試験の時にコテンパンにされてるから、タスクはリベンジがしたいんだよ」
「え?こんなとこで負けることってあるのか?」
不服そうなプラリネにトールが説明している。
「トールだって一緒にボコボコにされただろがい!まぁ今日の所は、新しい武器の試し斬りだ。俺に任せて後ろで見てればいいさ」
そう、リベンジなんて小さい事にこだわってはいない。
俺はただ、自分の実力を確かめたいだけなんだ。
アスモダイに貰ったルーンの単語帳で、しっかり勉強してきたのだから。
「おい...モンスターが来たぞ...」
「よし!お前ら手を出すなよ。この
【クエスト:パンチャー系モンスターの討伐】
現れたのは、俺がこの世界に来て初めて戦った相手、パンチャーオークだ。
一発の攻撃力は高いが、射程の外から攻撃すれば攻略できる。
「いくぞ豚野郎!俺のペルスでお前のベルカナをスリサズして、圧倒的オースィラに達してやる。今更フェフしても遅いぜ?マンナズはもうゲボってんだからな!ウニョー!」
「やめてタスク!徹夜でルーンを覚えてきたんだろうけど、なんか下ネタみたいに聞こえるから!」
いかんいかん、勉強したことが口をついて出てしまう。
「フゴォ!フゴォ!」
オークが待ちきれないと言わんばかりに興奮し始めた。
今日こそは俺の前に
カーーーン!!
戦いの合図が鳴らされ、ゆっくりとオークが前進を始める。
接近されるわけにはいかない、遠距離攻撃で勝負をつけてやる。
「スキル『疾筆』そして衝撃のルーン『ウルズ』」
新しい武器『ブラフマン』は、ペン先が二つになったことで、スキルとルーンの同時使用がやりやすくなった。
衝撃を放つルーンを、最速のスキルで撃ち出すロングレンジアタックだ。
「フゴォ!フ......フゴォ!」
面食らったオークが、両腕でガード態勢を作る。
防御しながら接近しようって腹か。
「無駄ムダァ!このままワンサイドゲームにさせてもらうぜ!『連載疾筆』」
バシュ!バシュ!バシュ !
遠距離からの攻撃を防御し続けるオーク。
だがガードの上からでも、ダメージはある。
こいつは、気が狂うほど気持ち良い。
「さぁ!俺TUEEEの時間だぜ!」
ヒュンッ!!
外れた?いや、一発くらい外れても問題は無い。
こちらの優勢は変わらないはずだ。
ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!
どうなってるんだ、急に攻撃が当たらなくなった。
オークの動きに注目してみると、上体を激しく振って的を絞らせないように動いている。
「フゴッ!フゴッ!フゴッ!」
更には、その動きを続けたまま、前進してくるではないか。
まるで
まずい、非常にまずい。
攻撃は当たらないし、あの動きは絶対にやばいやつだ。
遂には接近を許し、オークの射程距離に入ってしまった。
「フゴォォォォ!!」
「こいつ!?この動きは、まさかデン......プシァアアア!!」
激しい振り子運動で体を揺らすオークから、強烈な往復パンチが打ち込まれる。
回避と攻撃がセットになった完全無欠の必殺技の前に、あえなく地に這いつくばる結果になってしまった。
「あきらかに前より強いじゃん......モンスターの成長は...反則だろ......ガクッ」
カンカンカンカーン!!
【ノックアウト!勝者パンチャーオーク】
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