3. the monster 前編
『声優』とは、映像作品や音声作品において、声を使ってキャラクターに魂を吹き込んでいく役者のこと。
アニメーション以外にも、海外映画・ドラマの吹き替えやナレーション等、様々なジャンルで活躍の場がある。
しかし......
◇◆◇◆◇◆
「やばいぞ、遅刻だ!メシに時間も金もかけすぎだろ!」
「タスクだってガッツリ食べてたじゃない!お互い様だよ!」
こいつの食欲に引っ張られて本来の目的をすっかり忘れていた。
昇級クエストでは監査官が同行するため、南門で合流することになっている。
急いで現地へと走るが、食べ過ぎで腹が苦しい。
"カラーズの街 南門"
「吾輩、待ちくたびれたぞ。遅刻はワーカーとして最も恥ずべきことの1つである。今回は駆け出しということもあり大目に見るが、以後気を付けるように」
二人並んで直角にお辞儀しながら説教されることになってしまった。
しかしこの監査官、
俺たちは何で猫に謝罪しているのだろう。
「監査官のペトルゥである。キミたちにはパンドラの森でモンスターを討伐してもらう。1体倒してギルドに報告すれば完了だぞ。」
「なぜ猫が監査官に?」
「昇級クエストのシーズンは非常に忙しい。とにかく人員が足りなくなるので手伝っていたのだ。それが手を貸している内に出世してな...役職に就くのに喋れないのもマズイので言葉も覚えたぞ」
試しに本当に猫の手を借りたら思った以上に優秀だったわけだ。
それで出世するあたり、こちらの世界の猫は随分とたくましい。
「ゴロゴロゴロゴロ...クエストの期限は5日間。1日1回、吾輩が同行するのでバッチリ合格してほしい...ゴロゴロゴロゴロ」
しゃがみ込んだトールがペトルゥの喉を撫でていた。
ゴロゴロと喉を鳴らし、気持ち良さそうに手にすり寄ってさえいる。
のどかな光景だが話が進まない、さっさと目的地に向かおう......ちょっと撫でたいけど。
【パンドラの森に向かった】
カラーズの街の南に位置するこの森。
ペトルゥが言うには、群れで攻撃したり奇襲をかけてくるモンスターがいないので、新人ワーカーのチュートリアルに最適らしい。
「さて、まずはモンスターを...」
探す必要は無かった。
視線の一直線上に、待っていましたと言わんばかりに仁王立ちする1体のモンスター。
目が合うと、こちらにゆっくりと歩き始める。
「わわわっ!モンスターが!モンスターが来てるよ!!」
「わ、わかってる、大丈夫だ!...大丈夫」
初めてのモンスターとの遭遇に二人して浮足立ってしまう。
こんな世界にでも来ない限り、まず出会うことの無い存在だ。
正直、泣くほど怖い。
「君たち落ち着きたまえよ。まずはフィールドの把握やモンスターの観察をしたまえ」
ペトルゥの言う通りだ、冷静さを失ってどうする。
落ち着け、状況を確認するんだ。
現在、モンスターとは森の中の正方形に開けた場所で、対角線上に対峙している。
相手も歩みを止め、こちらを警戒しているようだ。
そして、そのモンスターの姿は
「あれは......オークか?」
「ご名答!」
人型で筋肉質、顔は醜くブタっ鼻に尖ったキバ。
剣と魔法のファンタジーでは常連客、お馴染みのオークだ。
しかし、その姿にはいくつか違和感がある。
全体的に身体が引き締まっていて、頬は
本来なら腰ミノなどを付けていそうなものだが、着用しているのはトランクス型のパンツだ。
そして両手に装着された......ボクシンググローブなのか?これは。
「こいつはパンドラの森に生息する『パンチャーオーク』だ。いつも減量に苦しんでいるが、一発の威力は強大!別名、緑の剛腕と呼ばれているぞ」
「おい......まさかパンドラの森って」
「うむ、正式名は『パンチドランカーフォレスト』パンチャー系モンスターの縄張りだぞ」
モンスターまでイっちゃってるのか。
もう嫌いだ、こんな世界...何から何まで狂いやがって。
しかし、こいつなら倒せる気がする。
それほど大きくもなく、武器も持っていない。
減量苦で痩せた身体は、とても強そうには見えない。
何のために減量しているかは謎だが...
「いいぜ、サクっと終わらせてしまおう」
「急に凄い自信だけど...大丈夫なの?」
不安そうに肩を引っ張るトールの手を払い前に出る。
「心配するな。チュートリアルの敵なんて適当に叩いても倒せるもんだ。せっかく特典装備を貰ったんだし、試し切りといこう」
そう、こちらには特典装備があるのだ。
形状に少々の疑問が残るが、武器であること変わりは無い。
「覚悟は出来たようだね。それでは、クエストスタート!!」
【モンスターとの戦闘が始まった】
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