第67話 的中かよ!?

 久しぶりに朝の『占い』を観て少しだけ不安を感じていたけど……


 と、とりあえず放課後まで何事も無かったぞ……

 あとは部活だけだな……


 ガラッ、ガラガラッ


「こんにちは~っす」

「こんにちは~」


「ウフッ、今日もお二人仲良く一緒に部室に来られましたね?」


「えっ? 美代部長、俺達、別に仲良く一緒に来た訳じゃないんで。同じクラスだから一緒に来ただけですから!!」


 っていうか、美代部長の様子がいつもと違う様な気がするんだが……

 もしかしたら今朝の『占い』を観ているんじゃないのか?


「ひ、一矢っ!! いちいちそんな事を美代お姉ちゃんに言う必要がどあるの!? 別に私達、仲が悪い訳じゃ無いんだしさ!!」


「あっ、そうだな。ゴメンゴメン……」


 なんか舞奈の奴も朝から気が立っている感じがするし、もしかしたら舞奈も朝の『占い』を観ているのかもしれないな。言葉に気を付けないと……


「ふ、二人共こんにちは……きょ、今日はみんなやけにピリピリした感じがするんだけど、だだだ大丈夫なの? 何かあったのかな? わ、私は全然大丈夫なんだけどね!! ただ今日は早起きをしたから朝から眠たくて仕方が無いんだけどね!!」


 菜弥美先輩、早起きをしている時点であんたもアウトだし、話し方がどうもたどたどしいし……で、菜弥美先輩は何座なんだ?


 ってか、テルマ先輩なんて寝てるじゃないか!!


 なんて可愛らしい寝顔なんだ。だ、抱きしめたいって言っている場合じゃ無いよな!?


 これは間違いなくテルマ先輩も早起きして、あの『占い』を観ているな?

 で、テルマ先輩は何座なんだ?


「ほんと今日は全員様子がおかしいねぇ? もしかしたら僕だけが絶好調かもしれないぞぉ」


 まぁ、そうみたいですけど顔を横に向けながら言われても全然説得力が無いんだよ、子龍先輩!!


 しかし、美代部長と舞奈の星座は知っているけど他の人達は一体、何座なんだろうか? めちゃくちゃ気になるけど酷い占いばかりだったから、なんか聞き辛いんだよなぁ……


 できることなら俺が観ていた時間帯の星座で無い事を願いたいぜ!!




 ガラッ、ガラガラッ



「オ―――ッス、ウジ虫共!! 元気にしているか―――っ!?」


 げっ、こんな雰囲気の時にルイルイが来ちまったよ!!


「おっ、何だ? 全員、随分しけた顔をしているな? 何かあったのか?」


「べっ、別に何も無いですよ。私達はいたって普通ですから……」


「そっ、そうよ。そんな事よりもこないだの合宿先にルイルイも居たそうじゃない!? それも『所長代理』としてなんて、どういうことなのよ!? 最近では珍しくルイルイが部活に顔を出さないから、おかしいなって思っていたらまさかこんなことになっていたんなんて」


「ハハ、そう言えばお前達に伝えるのを忘れていたよ。でも別に私が部活に顔を出しても出さなくても、あまり関係は無いだろ?」


「いっ、いえ、僕はルイルイさんが居ないと寂しいです!!」


「お~、そっかそっか。そんな嬉しい事を言ってくれるのは『シリシリ』くらいだな!!」


「あっ、有難うございます!! こ、光栄です!!」


 それにしても不思議だな。なんで子龍先輩はルイルイの前だけは顔が正面に向くんだろうか? これだけ頑張っている俺にでもまだ40度位の角度なのにな。


「しかし、先日の『謎めいた合宿』はなかなか楽しかったなぁ? 色々と謎も解けたし……なっ、ヒトヤン?」


「えっ? あ、あぁ……そうだな……」


 でも俺達も、あんたの謎を親父から思いっきり教えてもらってるんだからな!!


「合宿の夜にヒトヤンとソファーに2人きりで身体を寄せ合いながら話をしたのが私は一番楽しかったぞ」


「えっ、何ですって!?」

「か、身体を寄せ合いながら!?」

「一矢っ、そっ、そんな事があったの!?」

「一矢君! それはどういう意味だい!?」

 ムクッ!!


 オイオイッ、みんな一体何なんだよ。その反応は!?

 それに今まで寝ていたテルマ先輩までムクッと起きちゃったぞ!!


「ルッ、ルイルイ!! 変な誤解を招くような言い方をするんじゃねぇ!!」


「別に私は本当の事を言っただけなんだが?」


「か、身体を寄せ合いながらソファーには座ってねぇだろ!?」


「へぇ? そうだったかなぁ? まぁ、そんな事は別にどうでも良いじゃないか」


「どうでも良い事ねぇんだよ!!」


「私はあの夜、1つ気付いた事が有ってな……そしてある結論に達したんだよ……」


 俺の突っ込みをスルーしやがったな!?


「ルイルイ、どんな結論に達せられたのでしょうか?」


「一体何に気付いたのよ!?」


「フフフ……」


 な、何か怪しげな笑い方をしているような……ルイルイは何の結論に達したんだ? 全然、見当がつかないんだけどな。


「ヒトヤン?」


「えっ? な、なんだよ?」


「いや、ヒトヤン様……」


「は―――っ!? だ、誰がヒトヤン様だ!? その呼び方は俺の親父にだろ!?」


「フッ、それは昔の話だよ。今日からはお前が『ヒトヤン様』だ」


「はぁ? 何を言っているのか俺には全然分からないぞ!!」


「私は子供の頃に恋をし、そして失恋をした……」


 またしても俺の突っ込みをスルーしやがったな。


「あぁ知ってるよ。親父に失恋したんだろ?」


「その通りだ。そして私は傷心し、恐らくこれも聞いて知っているだろうが、芸能活動も傷心を引きずったままだったのでドンドンやる気を無くしていき、すぐに引退をしたんだよ。まぁ部活の方が面白かったというのもあったがな」


 おいおい、俺の分析通りじゃないか!!

 俺、すげぇな!?


「その後、私は彼の事を忘れようと色んな男と付き合ってはみたが全然物足りなかった。やはりあの『ヒトヤン様』の様な方は世の中に居なかったんだ!!」


「それは分かったけど、だからって何で一矢君の事を『ヒトヤン様』って呼ぶのよ!?」


「そっ、そうだぞ。菜弥美先輩の言う通りだ!! 俺が『ヒトヤン様』って呼ばれる意味が分からねぇぞ!!」


「フッ、だから気付いたんだよ。初めてヒトヤンに会った時から何か懐かしさを感じる面もあったのはたしかだった。そして呼び名が『ヒトヤン』になったのも当初はたまたまだと思っていた。でも合宿の夜、ヒトヤンがあの『ヒトヤン様』の息子と分かり、私は納得したと同時に気付いてしまったんだ」


「だ、だから何に気付いたのよ!?」


 うわっ!?

 め、珍しくテルマ先輩がルイルイに突っかかっているぞ!!


「『ヒトヤン様』と結ばれる事を諦めていた私の目の前に今度は息子の『ヒトヤン様』が現れたんだ。これはもう『運命』としか思えない……そう思った瞬間から私の心は前に突き進むだけだ。もう誰にも私を止める事は出来ない!!」


 何言ってるの、この人は?


「私は決めたんだ!! ヒトヤン、いやヒトヤン様!! 私と……け、け、結婚してくれ――――――っ!!」



 ・・・・・・・・・・・・は?


「は――――――――――――っ!?」


 ルイルイが俺にプロポーズだとーっ!?


 ルイルイの事だ、きっと俺の困る顔が見たいだけで悪い冗談を言っているに決まってるよな!? いや頼む、冗談だと言ってくれ!!


 今日はエイプリルフールじゃないんだぞ!!

 マジでやめてくれ!!


 あっ、そうだ。

 実は俺、まだ寝てるんじゃないのか?

 そうだ。そうに違いない。そして悪い夢を見てうなされている途中なんだ!!


 じゃないと……


「占い通りになってしまうじゃねぇか―――――――――――っ!!!!」

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