第119話 アマリリス・カレンはこうでなくちゃ
『やめよぅよ~。ね~え~、本当やめよってば~』
「大丈夫! 大丈夫ですから!! ね、カレンちゃん!! 大丈夫ですから!!」
『せやで!! あ、なんや自分。カレンちゃんが描いたイラスト見たなってきたなぁ!!』
『嘘だぁ……。こんなの見たい人なんていないよぉ~。あ~、やだ~。見せたくない~。や~だ~』
『カレリン。ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ見せてくれるだけでいいから』
『そ、そうだよ。パッと。僕も、……見たいし』
『うあ~。やだ~、怖い~。なんかもう怖い~。やだ~。きっとみんな笑うんだ~』
「そんなことないですって!! カレンちゃんが一生懸命描いたものを笑ったりなんて絶対にしませんから!!」
『そうだよ!! カレリンがいっぱい悩んで、考えて、頑張ったんでしょ? それを笑うなんて絶対にしないって』
『うん! 笑わないから、大丈夫。カレンさんが僕とにーちゃんのために描いてくれたんだから』
『自分らだけやないで! な、リスナーさん。リスナーさんたちだって笑ったりせぇへんよな!!』
そんなエイガの呼びかけにコメント欄が一斉に応えてくれる。
『大丈夫』
『自信もって』
『カレンちゃんのイラスト、好きだよ!』
『絶対笑わない』
『すっごい楽しみ』
あったけぇなぁ!! さすがは俺らみたいな個人勢を応援してくれるリスナーさんたちだ!!
『うぅ……。あぁ~、うぅ~ん。にゃぁ』
「にゃ、にゃあ!?」
『アカン。カレンちゃんがバグってもうた!?』
『カ、カレンさん……』
『カレリン。プレッシャーでとうとうそこまで……。ねえ、東野ちゃん。今日はやめない?』
「ええ、そうですね。せっかくの垢抜け配信の二回目ですが、今日はやめときましょうか」
『僕も。また今度で、いいと思う』
『せやな。今日はみんなでゲームでもしよか。な?』
『なんでそんなこと言うのぉ!? わたしのイラスト見たくないの!?』
「うわビックリしたぁ! あれ、カレンちゃんじゃないですか。いつから人間の言葉をしゃべれるようになったんですか?」
『元から喋れますぅ。なんですか、みんなして。せっかく描いたんですから見てくださいよぉ!!』
『じゃ、見せて』
『み、見せて?』
『うん。見せて。だってカレリン、見てほしいんでしょ? ほら、見せてよ』
『ラナねえさん! なんでそういう言い方するの!? もっとわたしに優しくしてよ!!』
『したら付けあがるかなぁって思って』
『えぇ……』
「あ、皆さん大丈夫みたいです。カレンちゃんがイラスト見せてくれるみたいなので待ってましょう」
『アズマさんまで!? なんで!? さっきまでの優しさは!?』
『優しさは有限なんやで』
『嘘!?』
『楽しみ』
『純粋なレオンハルト君に一番Sっ気を感じるんだけど!?』
『楽しみだよ、カレンさん』
『天丼!? まさかの!? 君もっとコミュ障じゃなかった!?』
『慣れたから、配信に。少しぐらいは』
「おぉ~、さすがですねレオンハルト。一部界隈で、とんでも歌唱力ショタVTuberとして人気になりつつあるだけはありますね」
『あ、そうやで!! レオンハルト! なんでお前までモテ街道を歩み始めとるんや!! 自分を置いていくなんて許さへんで!?』
『もうとっくに置いてかれてると思うけど』
『姐さん!? なんでそないなこと言うん!?』
『事実だから』
『……』
「あ、エイガ死にました?」
『南無』
『南無ってなんやぁ!? レオンハルト!! お前調子のんなや!! すぐに追い付いたるからなぁ!? 待っとれよ!!』
『追いつくからって。もう負けてるの認めてるじゃん』
『ちゃうねん。これから逆転するまでの布石やねん。兎と亀やねん』
「シンデレラと意地悪な義姉じゃないですか? もうどうやっても逆転出来ないところとか、そっくりじゃないですか」
『ぅおおいっ!!!! なんなん!? なんでみんなして自分には辛辣なん!? さっきカレンちゃんに優しさはどこにいったん!?』
『優しさは有限って言ったの、ポチじゃん』
『せやった!!!!!! アカン! やってもうた!!!!! 過去最大の墓穴やん!』
『みんな、聞いてよ!!』
「あ、カレンちゃん」
『カレリンじゃん』
『カレンさんだ』
『カレンちゃんやん』
『え、なんでそんな『あ、いたの』みたいな反応なの!? みんな今日は何のためにここに来てるの!?』
「雑談」
『お喋り』
『は、話すため』
『駄弁り場やね』
『垢抜け配信だよね!? そうだよね!? なんでみんなしていつもの雑コラボになってるの!? わたしのイラストを見に来たんじゃないの!?』
「だってカレンちゃんが見せたくないって言うんですもん」
『わたしのせいかぁ~……』
「他に何があるんですか?」
『そこは『カレンちゃんのイラストを見に来ました』って言うところじゃないのぉ!?』
「久しぶりだから忘れてるみたいですね」
『? なにを?』
「カレ虐は俺たちの人気コンテンツです」
『はっきり言うなぁ──ッ!!!!!』
「ですけど、ねぇ?」
『せやな』
『しょうがないよ、カレリン』
『盛り上がるから』
『レオンハルト君までそういう認識なの!? 味方! わたしの味方は!? リスナーさん!!』
『カレ虐GG』
『カレ虐GG』
『カレ虐GG』
『カレ虐GG』
『カレ虐GG』
『敵しかいないよぉ!? え、嘘でしょ!? 本気!?』
「カレンちゃん。いつどうなるか分からない俺たち個人勢が配信で手を抜くわけないじゃないですか」
『そういう意味じゃない!! もぉ! なんでなの!? もっとみんなわたしを可愛がってよ!!』
『じゃあ、にゃあって言ってみてよ』
『ラ、ラナねえさん……?』
『可愛がって欲しいんでしょ? ほら、鳴いてみてよ』
『う、嘘だよね……?』
『本気』
『え、ちょ。み、みんなぁ!?』
「……」
『……』
『……』
『……にゃ、にゃぁ』
『どう?』
「期待してたほどでは」
『なんや、照れがあるな』
『中途半端』
『レオンハルト君が一番ひどい!!』
『あ、う。……ごめん』
「カレンちゃん。レオンハルトを困らせないでください」
『自分らの可愛い弟分が頑張ったんやから、むしろ褒めたろうや』
『レオンハルトきゅん、大丈夫だからね?』
『わたしが悪者なのぉ!?』
『だってレオンハルトきゅんって可愛いし』
『そりゃ、ラナねえさんはそうだろうけど』
「甘いですね。俺なんてレオンハルトの歌枠は自分の配信予定を変えてでも聞きに行ってますよ」
『ふ、甘いで。自分なんてすでに何回か赤スパ投げてるで』
『わ、わたしなんてメンバー入ってるもん!!』
『カレリンだってファンじゃん』
『それじゃあ、自分らの事どうこう言えへんよなぁ』
「そこらへん、どうなんですか? カレンちゃん」
『そうです! わたしはレオンハルト君のファンなんです!! これで満足!? だからキャラデザだってめちゃくちゃ気合入れたんだからね!? 見てよこれ!!』
「ちょ、ま。いきなりですか!?」
『自分らの心の準備は!?』
『──ぁッ!? 尊。死』
『……カッコいい』
『そうでしょ!? カッコいいでしょ!? わたしもう、すっごい頑張ったんだからね!! ほっと褒めて!!』
「いや、褒めてって。誉め言葉が思いつかないぐらいいいんですが!?」
『マジかこれ……。え、ほんまに? これ、カレンちゃんが描いたん?』
『ありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございます』
『げ、限界オタクだ……』
ひとまず壊れたラナさんは置いておくとして、だ。
いや、冗談抜きでめちゃくちゃいいぞ!?
何て言うか、すごいレオンハルトっぽい!! それでカッコいいし、なんならショタみって言うの? レオンハルトが見せる幼さみたいなところもあって、え、待って。良すぎない?
『これが、僕?』
『うん。イヤ……?』
『イヤじゃない。イヤじゃないよ! すごい、いい!!』
『ホンマやで!! めっちゃええ!! カレンちゃん天才や!! な、姐さん?』
『ありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございます』
『アカン。ホンマに壊れてもうた……。どないすんねん、これ』
『あ、あはは。ラナねえさんっぽいって言えばそうなんだけど……』
『にーちゃんにーちゃん! すごいよ!! これ僕だって!!』
「めちゃくちゃすごいですね! いやもう本当に!! お世辞抜きですっごくいいですよ、カレンちゃん!!」
『ふふん。じゃあ、この流れでアズマさんのも見せちゃおうかな』
「待って。心の準備がまだです!」
『待ちませ~ん。はい、ドーン!!』
こ、これが俺──ッ!?!?!?!?
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