第124話

 何を言っているのかわからない。そういう表情を三人は浮かべている。


「どうした?お前ら?そんなアホ面を晒して」


「……つまらない冗談は要らないわ」


「冗談だってよ?面白い話だとは思わないか?」


「えぇ。全くです」

 

 僕の言葉にリーエは頷く。


「トイ王族の生き残りであるリーエは女だよなぁ?」


「はい。私の下半身にはついていません。ふたなりですけど」

 

 ……リーエはふたなりの女の子。生まれたとにアレがついていたため男と勘違いされたが、リーエはれっきとした女の子である。


「ふ、ふたなり?」


 ふたなりが何なのか知らない第二皇女は首を傾げる。


「あぁ。そうだよ。リーエは女だ。お前らが知っている男のリーエなどおらん」


「何を言っているの……?リーエは私の側近でよく働いてくれたのよ?」


「いいえ。居ませんよ。第二皇女殿下」


 魔術を発動させる。彼女たちには僕が『リーエ』。嘘っぱちのリーエに見えていることだろう。


「「「……ッ!?」」」


 三人に驚愕の表情が走る。


「ふっはっはっはっはっはっはっはっは!それだ!それが見たかったんだ!お前の知っているリーエなどいない!全ては嘘っぱちだ!」


「そ、んな……」

 

 呆然と呟く。信じられない。そう言わんばかりだ。


「どうだ?全て我の手のひらの上で転がされていた気分は。スシャーナの躍進も、ミリアの活躍も、


「「……」」


「う、嘘……!ならなんで!?」

 

 呆然としている第二皇女や第三皇女とは対象的にアレシアはあり得ないと言わんばかりに叫ぶ。

 まぁ、そうだろうね。『彼女ならそう思う』だろう。


「これがただ一つの真実だ。リーエは虚構の存在で、我はずっと全員を騙していたのだ。全てが我の手のひらの上だったのだよ」


「何が!?何が目的なの!?」


「このまま神国メシアとローオス帝国は戦争状態に入る。多くの騎士を失ったローオス帝国のもとをイグニス公爵家が完全に離れたとき……果たしてローオス帝国は神国メシアを圧倒できるか?神国メシアが倒れ、ローオス帝国が瀕死となった時……その時こそイグニス公爵家による世界統一が可能になってくるんじゃないか?」

 

 第二皇女の疑問に僕は『当初の予定』を話す。『クロノス』を作る前から僕はこうすることを望んでいた。

 そして、色々と問題はあったけどなんだかんだ予想以上に上手く行ってこれを実行出来そうなところまで持ってきた。

 まぁ、無理なんだけどな。


「貴様ァ!!!」

 

 第三皇女は僕を睨みつける。視線だけで僕を殺せそうな勢いだ。


「はぁー」

 

 それに対して僕は深いため息で返す。


「僕は失敗したよ」

 

 僕の独白はまだ始まったばかりだ。

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