第132話 裁き
氷の結晶となって堕ちていく神を眺めながら、僕はゆっくりと降りていく。
そして、僕は呆然と崩れ落ちる教皇の前に立つ。
「終わりだよ。教皇」
「……」
目の前に立った僕。そして、そんな僕から声をかけられているにも関わらず教皇は何の反応も示さない。
ただただ呆然と座り込んでいる。
「私は……神が、全てをお救いに……」
「救う?何を戯けたことを。お前らがしたことはただの虐殺でしかない。神の名のもとに数多くの人たちを、他国から誘拐して自国へと拉致して人体実験を繰り返したことを僕は知っている。お前らが汚職に走り、多くの人の自由を奪ったことを僕は知っている。お前らがしてきた悪行を語り尽くすことなど出来ない」
「……嘘だ……嘘だ」
教皇は信じられないと言わんばかりに蹲り、ぶつぶつと呟き始める。
「こっちを見ろ!世界最低の犯罪者がッ!!!」
僕は教皇の胸ぐらを掴み、視線を合わせさせる。
「お前は……!」
「黙れ!黙れ黙れ黙れ!神よ!おぉ!神よ!何故……何故!あなたが世界を救ってくださると……!」
「世界を救うだと?あの怪物で?壊れた神で!何が出来る!?何をするつもりだった!?世界に大戦の火を撒き散らしたお前らが!」
「神は……!神は全てを救うのだ!救ってくださるのだ……!」
「なら、何故……!他国への侵略なんて行ったのだ!何の意味があって……!」
「要らぬ要らぬ要らぬ!この世界に必要なのは神の庇護下にある我らが神国メシアのみ!世界の全てを滅ぼし、神国メシアによる恒久的な世界秩序を完成させるのだ!」
教皇は狂ったように叫び続ける。
「神の庇護下にない蛆虫どもなど死んで当然なのだ!死するべき存在なのだ!死ね死ね死ね!神に愛を捧げし我々は……!」
「黙れ」
「ぐえっ」
僕は掴んでいた教皇を蹴り飛ばし、背中を向ける。
「僕は貴様を殺さない。両親を愛した祖国を滅ぼされた。両親を殺された。慕っていた義姉を殺された。……だが、僕は貴様を殺さない」
一度口を止め、そして再度口を開く。
「僕が殺したらただの復讐だ。暴力による醜い復讐だ」
教皇に背を向け、僕は歩き始める。
「お前を裁くの世界だ」
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