第103話

 この部屋を美しい音楽が包み込む。

 そんな部屋の中央で、僕と第二皇女は優雅に踊っていた。


「そっちはどうだったかしら?」


 小さな声で第二皇女は僕に話しかけてくる。


「はい」


 そして、僕も小さな声で返す。


「……彼女に関して言えばかなり深刻だと思いますが、第二皇女殿下の策に上手く乗ってくれるでしょう」


「あら、そう。それは良かったわ……」


 第二皇女が安堵したように声を漏らした。


「他は……?」


「全て問題ないかのように思わえます。全て計画通りに行くでしょう」


「あら、そう……あなたにそう言われるとほっとするわね……」


「僕なんぞの意見を聞かなくとも、第二皇女殿下の作戦が揺らぐことはないでしょう」


「えぇ。そうね。そうでなければならない……。でも、一人というのは、頂点というのは孤独なの……誰でもいいから上手くやれている。そう言ってくれる人が……欲しかったのよ」


 ……。

 僕は想定外の第二皇女、スシャーナの言葉に……何も言えなくなった。言葉を失う。


「……これが、甘えなのは理解しているわ……でも……少しくらいは頼らせて頂戴?」


「……えぇ。僕で良ければ喜んで」

 

 僕は第二皇女に対してそう言葉を返した。


「良かったわ。……さて、次は私が集めた情報についてね……」

 

 ダンスを踊りながら、僕は第二皇女の言葉に耳を傾け、自分の予想との差異がないかどうかを確認していた。

 よし。今のところ何も外していない……僕の計画は何の問題もなく進んでいる。

 ……僕は甘えられない。

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