第102話
ダンスパーティー。
それは結構長い。アレシアと一回踊った程度でダンスパーティーが終わるわけではない。
そして、僕もいつまでもアレシアと関わっていることは出来ない。
一度踊った後、バルコニーにアレシアを残して部屋の中へと戻った。
「……踊り、お上手なのですね」
今僕と踊っている女性である人が、そう呟いた。
「そう言ってもらえると嬉しいです。この日のために努力してきたので」
「……ッ」
僕は笑顔を浮かべてそう告げる。
それに対して目の前の女性は少し頬を赤く染めた。
「……そういえば、この国では今。各民族同士が争っているようですね……」
「えぇ。実に痛ましい限りです」
僕の言葉に目の前の女性は頷いた。
「我が家も……自らの民族に対して働きかけているのですが……その成果はあまり良いものとは言い難いですよ。プロテスタント……。神国メシアの教会から分かれて新しく出来た出来た派閥。それは異端や異教であっても認めるそうですね……あそこが受け入れらればこの国の宗教問題も少しはよくなるかもしれないとお父様が話していましたわ」
聞いてもないのに、目の前の女性はペラペラと饒舌に状況を話してくれる。
……実に便利だ。なるほどね。この一族はプロテスタントに寛容、と。実に良いことを聞いた。
「なるほど……そうですか」
僕と目の前の女性の話は今この部屋を包んでいる大きな音楽のおかげで回りの人には聞こえていないだろう。
しばらく関係ない話をしていると、一曲終わる。
「終わったようですね」
僕は掴んでいた目の前の女性の手を離し、一歩距離を取る。
「あ……」
「それでは」
残念そうな表情を浮かべている女性を残して、僕は歩き出す。
……時間的には次の相手で最後であろう。
「私と踊ってくれるかしら?」
僕が歩いていると、声をかけられる。
その声をかけてきた相手は第二皇女だ。
「はい。ありがたき幸せにございます」
僕はその手を手に取った。
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