第82話

 ガイア本人が、グニギラ連合国でのんびりとしている間。

 イグニス公爵家領内で、ガイアの代わりをしているフィーアは大忙しだった。


「それではリネス商会、アコレール商会にプロテスタントを支援するように要請しておきます」


「うむ」

 

 フィーアは文官の言葉に対して横柄に頷く。


「他国に対してはいかが致しましょうか?」


「うむ……そうだな。ではまずは汝らの意見を聞いてやろう。自由に議論するが良い」

 

 フィーアは次に会議の許可を出す。

 今、フィーアがいるのはイグニス公爵家の会議室。ここにはイグニス公爵家領内の有力者、イグニス公爵家派閥の貴族の当主などが集まっていた。

 

「そうだな。やはり他国に対してプロテスタントを支援するように要請すべきだろう」


「そのために騎士団の派兵は決定だな」


「いやいや、待て待て。慎重に行くべきじゃないか?今はこの国でも内戦が起きていることだし」


「イヤ!そんなことは関係ない!我らイグニス公爵家様派閥だけで強国足りうる!」


「しかし、強国止まりだッ!超大国ではない!」


 ……む。

 フィーアは貴族たちの言葉を聞いて僅かな不快感を覚える。

 スキア様の領地が……ローオス帝国なんて言うしょぼいのより弱いわけがないのに……。

 不安に思うことはあれど、それを表現したりはしない。


「だが……これ以上の好機はないぞ?」


「いや、そもそも神国メシアを警戒する必要などあるのか?」


「いや。我ら帝国だって多くの傷を抱えている。慢心は良くない」


「あぁ。そうだ。いつでも挑戦者たるべきだ」


「それで……プロテスタントの支援だが……義勇兵、という形なら問題はないか?」


「いや、流石にそんな言い訳は通じぬだろう」

 

 数多の貴族たちの意見を聞きながら、フィーアは自身の脳みそをフル回転させ、どうするのが最善かを考える。ある程度のことは決められているものの、細かなところはフィーアの采配に任されている。

 スキア様に任された以上、完璧以上にこなしてみせる。 

 フィーアはやる気を漲らせていた。

 

 神国メシアとローオス帝国の内戦によって、イグニス公爵家は今までにないほどの激動の時間を過ごしていた。

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