第72話

「美味しい」

 

 僕はウェイトレスに貰ったコーヒーを口に流し込む。

 ふむ。実に香り高く美味しいコーヒーだ。


 さてはて。

 僕は美味しいコーヒをすすりながらm後ろの女性について考えていた。

 ……ここで接触するべきか否か。それを僕は考えているのだ。

 

 リーエ。

 僕の仮の姿の名であり……そして『クロノス』が円卓メンバーが一席、アインスの本名である。

 そして、このリーエと後ろの女性の関係性は非常に近く、従姉妹に該当する。

 

 かつて。この世界には二つの大国と一つの超大国が存在していた。

 一つの超大国。

 それは言わずもがな、ローオス帝国である。

 二つの大国のうちの一つは神国メシアであり……そして、もう一つの大国の名をトイ王国と言った。


 トイ王国。

 かつて存在していた大国の一つにして、すでに滅ぼされた国。

 

 今から50年前に突如として出現し、各国を暴れ回り世界中の国々に多大な被害を齎した魔導生物が存在した。

 その魔導生物を誕生させた、と神国メシアによって弾劾された国がトイ王国だ。

 

 このことを理由にその国は世界中の国から忌み嫌われ、その王家は蛇蝎の如く嫌われ、唯一被害がなかったローオス帝国以外の全ての国によって滅ぼされた。

 その国が滅んだ時期。

 それは──────その国が完全に滅亡したのはつい最近の、リーエが生まれた頃と同じくらいの時期である。

 

 ちょうど国が滅亡するその少し前に、トイ王国国王と正妻との間に一人の子どもが生まれた。

 その子どもこそが『リーエ』であり、そして、その子どもこそが僕の計画の始まりの子だ。


 今は無きトイ王国、唯一残された国王と正妻の子ども。次の王位を受け継ぐに最も相応しい人物がリーエだ。

 そのリーエの従姉妹にあたる人物がこの国に存在していた。


 それが今、僕の後ろに座って食事をしている女性なのだ。


 何故そんな人がこの場にいるのか。

 それはグニギラ連合国の誕生にはトイ王国の滅亡と魔導生物の存在が大きく関わっているからだ。

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