第61話

 堂々と。

 何のためらいも、何の躊躇もなく。

 堂々と中央の正門から、街へと入る。

 イグニス公爵家の屋敷が存在している。イグニス公爵領の中心である都市へと入っていく。


 彼ら。

 ギリア族が手にしているのは剣ではなく大きな旗。

 皇帝家の家紋が描かれた旗と、イグニス公爵家の家紋が描かれた旗。


 ガチャガチャ。

 

 まずはじめに彼らが。

 馬に乗るギリア族の面々が領内へと入り、正門からイグニス公爵家の屋敷まで続く大通りの道の脇に止まり手に持っている巨大な旗を掲げる。

 皇帝家の家紋が描かれた旗と、イグニス公爵家の家紋が描かれた旗がはためく大通りの道をゆっくりと僕は馬に乗って進む。

 

 ざわざわ

 

 そんな光景を見て領民たちはざわつく。

 当然だろう。彼ら、彼女らはお父様が反乱を起こし、当主の座を奪ったことを知っているのだから。

 そんな中堂々と大通りを通っていれば驚きもするだろう。


「当主様……」

 

 誰かが呟き……膝をつく。

 何がその一人を跪かせたのか。ギリア族の精強な馬か、長い距離を渡って移動したギリア族の面々の鎧が一切汚れておらずピカピカに輝いているからか、僕の威光か、僕の身にまとう炎の鎧か。

 何かはわからない。

 

 だがしかし、一人が跪けばそれは波及する。

 次々と領民たちが跪き、僕を拝む。


 そんな中僕は進み、とうとうイグニス公爵家の屋敷にまで辿り着く。


「あ……え」


「ど、どう……」


 屋敷に集結していた騎士たち。

 彼らは攻撃するか、しないか。

 自分はどう行動すれば良いのか。悩み、動揺が走っていく。中には僕に跪こうとしている者までいる。


「戦えッ!」


 そんな中、お父様の声が響く。


「あれは逆賊だッ!私に冤罪を着せて当主の座についた逆賊だッ!あれを殺せッ!」

 

 お父様は僕を、すさまじいまでの殺気が込められた瞳で睨みつけ、叫んだ。

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