第59話
「ふわぁ」
僕は大きなあくびを浮かべながらダラダラと馬に乗って歩く。お供はいない。
気楽な一人旅だ。
「おや?そんなところで一人旅ですかな?」
のんびり馬を歩かせていると、馬車に乗った行商人らしき人に話しかけられる
こうして旅をしていると、案外よくあることだ。
長い旅で一人は寂しいので、暇をしている旅人や、行商人なんかは結構初対面でも話しかけて長話を楽しむものなのだ。
「えぇ」
僕は行商人と思わしき男の言葉に頷く。
「おぉ。それはそれは。一人で危なくないですかな?」
丸腰で馬に乗っている僕を見て行商人と思わしき人は心配そうに声を掛けてくれる。
「問題ありませんよ。私はこう見えても武芸の心得がありますので」
それに対して僕は笑みを浮かべて言葉を返す。
「それはそれは。そうですか。余計な心配でございましたね」
「いえいえ。心配されることもありがたいものですよ」
「えぇ。それは違いないですな。誰からも心配されなくなってしまえばおしまいですからな。ところで何処に向かっていらっしゃるのですかな?」
「あぁ。イグニス公爵領に向かってですね」
「イグニス公爵領ですかな!?あそこはおすすめしませんぞ?どうやら今、ごたついているらしくてですな。裏組織と繋がった罪で捕まった前当主が、現在の当主が王都に行っている間に反乱を起こしたらしくてですな。いやぁーあれは荒れますぞ」
そんな行商人らしき男の言葉。
「なのでさっさと返してもらおうとか思いましてね。あれは我の席故」
それに僕は笑顔で返した。
「……え?」
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