第40話

「そうですか……」

 

 僕はエリュンデ公爵家、当主の娘の言葉を聞いて神妙な顔つきで頷く。

 話の内容を要約するとこんな感じ。

 平民や奴隷を対象として知識を教えてほしいということだ。


「どう?やってくれるかしら?」


「すみません。お受けできません」

 

 僕はエリュンデ公爵家、当主の娘に向かって頭を下げ、告げる。


「……なぜかしら?メリットしかないと思うのだけど」


「アルマ公爵令嬢様のご考えには痛く感銘を受けました。平民並びに奴隷へのご配慮。ありがたく思います」


「なら……!」


「ですが、現在では必要ありません。すでに貴族の皆様。そして商人の皆様で知識人はすでに十分にこざいます」


「でもあなたのように平民でありながら、絶大な才能を発揮する人もいるわ。それを埋めておくには勿体ないと思うのよ」


「ご心配には及びません。本物の天才であればたとえ平民であろうとも、奴隷であろうとも頭角を現します。僕のように」


「なるほど……」

 

 僕の言葉にエリュンデ公爵家、当主の娘が頷く。

 僕という具体例があるのだ。

 頷かざるを得ないだろう。


「そしてですが。これは不敬を承知での言葉ですが、平民でしか無い私の能力は並みの貴族を遥かに越えていると自負しております。それは僕だけではありません。普通の平民、奴隷が教育を受ければ貴族に匹敵し、そしてそれを超えるような人も出てくることでしょう。平民は貴族は超える可能性があるのです。平民が貴族よりも力を持ってしまったら今までのような政治を行えなくなってしまいます」

 

 民主主義は欠陥だらけのクソザコ政権である。

 普通に考えてどうしようもない馬鹿でアホな奴らの意見を聞きながら政を行うなんて不可能だ。意味がわからない。

 前世のようにある程度文明が進んでいるならともかく、今の中世で。飢饉で餓死者がたくさん出るような文明で民主主義なんて無理だ。産業革命が起きない限りは民主主義なんて大国であればあるほど民主主義の維持なんて出来なくなっていくだろう。


「僕は以上の理由によるお受けできません。それにです。私にはすでにスシャーナ様の秘書という重要な仕事がございますので」


 僕はそう言って自分の言葉を閉めた。

 というか奴隷、平民への教育なんて行われたら僕が困るんだよ。

 貴族たちはそのままずっと奴隷、平民を見下し、油断していてくれ。

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