第31話

 僕は懐かしの王城を歩く。

 残されたガナダルシア砦の仕事を終えた僕は第三皇女とともに王都に帰還していた。

 第三皇女は皇帝陛下の元へ、僕は第二皇女の元へ。それぞれ報告に向かう。

 

 今頃ギリア族はイグニス公爵家の北の領地に着いたはずだ。

 北の領地。ギリア族のために用意しておいた土地だ。ギリア族が住みやすいような場所を選んだつもりだ。

 

 変身魔法という魔法を使うことが出来る特別な一族の娘。『クロノス』の円卓のメンバーの一人であるフィーアが、僕として、ガイアとして変身して動き、ギリア族の対処を僕の代わりにしてくれるだろう。


 フィーアの一族は変身魔法を使い、様々な人間に成り代わり、様々な職務に携わってきた。それが、遥か昔より迫害され続けてきたフィーアの一族の生き方なのだ。

 それ故にフィーアの一族は、様々な経験と教訓を持っている。

 心に傷を負った人間くらい簡単に狂信者に仕立て上げられるだろう。ギリア族にはぜひともイグニス公爵家のために命を捧げ、優秀な軍馬を繁殖させてほしい。

 この中世の世界において。たとえ、魔術や魔法なんて言うデタラメなものがあっても、騎兵は最強の兵科なのだ。

 

 僕がそんなことを考えていると、一つの部屋の前に辿り着く。

 第二皇女の部屋だ。

 僕は扉へと手をのばす。


 コンコン

 

 ノックの音が響く。

 

「どうぞ」

 

 久しぶりな声が聞こえてくる。

 『リーエ』の主君の声だ。


「失礼します」

 

 僕は扉を開け、部屋の中に入った。

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