第20話

「みーつけた」

 

 僕は視界の先にいる人たちの集団を見て、口元を歪める。

 

「よっと」

 

 今自分が立っている大樹の枝を勢いよく蹴り、飛翔する。

 

 ダンッ


 僕が地面に降り立ったことで砂埃が舞う。


「どうもー。こんにちはー」

 

 僕は目の前に立っている人たちに笑いかける。

 出来るだけ優しげな笑顔で。

 彼らを安心させるように。

 

「何者!?」


「なっ!?」


「どこから!?」

 

 だが、そんな僕の努力など意味はない。

 いきなり現れた僕に驚愕した目の前の人たちは慌てだす。

 まぁ別に良いけどね。

 安心させるように笑うことは最早習慣だし。

 安心させるような笑顔は愚かな大衆を関わっていく上で最も重要なことの一つだし。

 それに……


「さようならー」

 

 どうせみんな殺すつもりだし。こいつらが何をしようとも関係ない。

 

 抜刀

 

 僕は腰の刀を抜く。

 風魔法で速度を上げ、切れ味を底上げした僕の刀はすべてを斬り裂く。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!?」


「ぐはっ!?」


「な、何を!?」


「い、いてぇ!?」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」


「ぐぉ」

 

 地獄絵図。

 僕の一太刀によって上半身と下半身をおさらばされた目の前の人たちは苦悶の声を、悲鳴を、絶叫を上げる。

 

「『燃えろ。ファイヤー』」

 

 僕は簡単な炎魔法を使い、彼らの切断面を燃やしていく。

 これ以上出血し、死ぬことがないように。


「よっと」

 

 僕は腰を下ろし、無様に地を這う彼らに視線を送る。


「じゃあちょっと尋問の時間と行きましょうか」

 

 僕の言葉は夜の冷たい風に運ばれていく。

 今は夜。

 僕はガナダルシア砦のみんなが静まった夜。一人で遊びに来ていた。

 その理由は情報収集のため。

 今、僕の目の前で地を這っている彼らは遊牧民の戦士たちだ。

 僕が知っている情報はさほどない。

 こんな辺境に僕の手駒を配置していないし、閉鎖的な民族であるこいつらには奴隷を送ったりなんてできない。

 自分の一族以外の人間を絶対に受け入れない。それ故にどんなに頑張っても情報を集められないのだ。

 だからこうして僕自ら動いて直接情報を吐かせるしか無いのだ。


「何か情報を吐いてね」


「誰が……ッ!」


「うるさいよ。僕のためになる言葉以外言わないでね?」

 

 僕は要らない事を話した男の手を掴み、爪を剥ぐ。


「……ぁ!?」

 

「僕だって拷問をしたいわけじゃないんだ。出来るだけ早く情報を吐いてほしいな?何も吐かずにこのまま自分たちが無様に殺され、他の部族の人間が君たちと同じように拷問されていく、なんて嫌だろう?君たちが賢いことを僕は祈っているよ。

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