1—3
「おい、友野? どこいくんだ!?」
「まさか、蛇が見つかったか!?」
そんな友野の後を追って、ヒロタクと部長もついて来た。
黒い蛇は、ゆっくり、ゆったりと……だが、確実にどこかを目指して進んでいく。
「おい、俺たちが探してるのは白い蛇で、こんな黒い蛇じゃないぞ?」
この神社には、脱走した白蛇以外にも金色の蛇もいるし、他の蛇がいたって何も不思議なことはない。
ヒロタクがその蛇を見てそう言ったが、友野はやはりその蛇が気になって仕方がなかった。
一瞬とはいえ、蛇の頭が人間のように見えたのだから……
「わかってる。でも、おかしいと思わないか?」
「何が?」
「あの蛇、頭が……人間みたいで——……」
「は!?」
「頭が人間!?」
ヒロタクと部長には、友野が言っていることがわからなかった。
どう見ても普通の蛇としか、二人には思えない。
しかし、友野の目にはそう映っているようで、妖怪か、それとも、蛇に何か悪霊でも取り憑いているんじゃないかと、オカルト研究部としては期待してしまう。
「もしかして、この先に例の白蛇がいるんじゃないか!?」
「そうなのか!? だったらすごいぞ!」
「いや、そこまではわからないけど……」
普段なら無視するのだが、友野はどうもその蛇に妙に惹かれるものを感じ、にょろにょろと林の方へ進んでいく黒い蛇だけを見ていたせいで、うっかり『立ち入り禁止』と書かれていた看板を見落としてしまった。
そして、気がついた時にはすでにかなり奥の方まで進んでしまっていて————
蛇が行き着いた先には、白蛇神社の立派な白い鳥居とは違う、小さなボロボロの手入れの行き届いていないひび割れ、
鳥居の前には、白蛇神社と同じく狛犬ではなくとぐろを巻いた石像が置かれていたが、苔生していて鳥居同様に手入れをされていないのかところどころヒビが入り欠けている。
「なんだここ……神社か?」
友野の問いかけに、返事は返ってこなかった。
振り向くと、後ろにいたはずのヒロタクも部長もいなくて————
「……え、誰?」
その代わり、見知らぬ少女が友野を見上げて立っていた。
赤いワンピースにピンクのランドセルを背負ったその少女は『呪いの本』と書かれたなんとも怪しい本を抱えている。
「名のるような者ではのうござる。お主こそ、何者でござるか?」
そしてなぜか、侍口調だった。
「この
□ □ □
「まったく……蛇に殺されたなんて、そんなこと————」
東は相棒の北山とともに白蛇神社に来ていた。
闇雲にさがすより、改めて逃げ出した状況を最初から確認すべきだと思ったからだ。
しかし面倒なのが、神主に話を聞こうと社務所へ向かう途中、時折北山が「キャッ」だの「うわぁっ」だの悲鳴をあげることである。
どうやら、この神社のいたるところにある作り物の蛇の石像やら絵なんかにいちいち反応しているようだ。
「おいおい、北山……そんなでかい図体でどんだけ蛇が嫌いなんだよ。いい加減にしろよ」
「し、仕方がないだろう! 俺は蛇が苦手なんだよ!!」
普段は頼り甲斐のある相棒が、今日は本当に情けない。
一体、蛇に何をされたんだ……
あぁ、でも聞いた後に自分も苦手になったら捜査が進まない……と、東はとにかく北山の反応は無視して先へ進んだ。
だが、蛇に対する恐怖で北山の息はどんどん荒くなり、心拍数も上がって嫌な汗が出てしまう。
それは子供の頃のとあるトラウマのせいであるが、さすがにそんな話を相棒には言えないと我慢していた。
「ひっ……」
人間の顔に、体が蛇だった女の妖怪に殺されかけたなんて、非現実的な話、刑事のする話じゃない。
もし、この連続殺人事件が脱走した蛇の仕業たというのなら……
それは多分、あの時の蛇と同じなのではないかと……
思い出すだけでも気分が悪くなっているのを、必死に我慢して、我慢して、北山は東の後ろを歩いた。
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