3—3
* * *
「そのリカって女が、今回の犯人なんだな?」
「そうです。あの日、本人がそう言っていました……」
友野は東に死の直後の向井の霊から、犯人の名前を聞いた。
「リカに殺された」と何度も何度も……
その事ばかり繰り返していた。
そして……
「まぁ、今もここにいるんですけど……」
友野は自分の左後ろを指差す。
もちろん、東と南川にその姿は見えないが……
————リカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカ
ノイローゼになりそうなくらい、ずっと繰り返している。
葬儀も納骨も終わったが、このまま事件が解決しないままだと、四十九日を過ぎても成仏できない可能性が高い。
「……そ、そうか。ということは、被害者と犯人は顔見知りってことだな……苗字はわからないのか?」
友野は首を横に振る。
「名前しか言わなくなってしまったので……本人に俺が会えばまた違う反応があると思うんですけど……」
「それなら、被害者の知り合いのリカという女で、なおかつ背の低い女ということか……」
「背の低い女?」
「あぁ、古島が言っていたんだ。加藤と名乗っていたそうだが、突き落とすように指示したのは、背の低い……古島よりは少し年が上の女だと」
————リカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカ
向井の声が大きくなった。
友野は間違いなく、その女がリカであると確信する。
そして、友野の脳裏に病院のエレベーターですれ違った小柄の女性の後ろ姿がよぎる。
長い髪を後ろで一つに束ね、あまりよくない空気を纏っていたあの女……
さらにもう一人……————
————リカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカ
* * *
「どうして、私の周りに?」
渚からの質問に、三好は戸惑った。
犯人は自分の知り合いだということだろうかと……
「先生が言っていたんです。犯人のリカという女はあなたの顔を知っていたからこそ、この古島優羽さんを利用したのではないかと——……それに————」
渚は事件の核心に触れる。
「————学校で見たそうです。犯人と同じく小柄で、なおかつ、あの日向井さんがいた病院ですれ違った女性と同じ空気を纏っていた女を」
「……学校で?」
三好の身近な人物で、小柄な女性は数人いる。
だが、学校となると思い当たるのは一人しかいない。
下の名前も、確かリカだった。
「田村先生……?」
「田村先生って……もしかして、最初に三好さんのドッペルゲンガーを見たっていう?」
「そうです。確かに、あの人は小柄で、名前も……え」
田村りか————三好に似ている古島を一番最初に目撃した同僚の教師だ。
「……でも————田村先生とノブくんに、一体どんな関係が?」
「まだ詳しくはわかってませんが……その田村先生って、髪は長いですか?」
「え、ええ。いつも長い髪を後ろで一本にまとめてるけど……」
そこまで同じなら犯人だと確信した渚は、スマートフォンを取り出して友野に電話をかけようとした。
「それも一致しています。先生ということは、この時間はまだ授業中ですかね?」
「そ……そうですね。今はお昼を過ぎたばかりだし」
時刻は昼の一時を少し過ぎたところだ。
三好は動揺しながら、コルクボードの上に掛けられた時計を見上げる。
「あ……」
コルクボードには、向井との写真以外にも思い出の写真が貼られている。
その一番上に、副担任だった一昨年、年引率した修学旅行の写真も。
その時、担任だった田村も写っている。
左手の薬指で光る指輪……ホテルで同室だった三好は、洗面台に置かれたその指輪の内側を偶然見たことを思い出した。
「N&R……」
一昨年……三好が向井と出会ったのは、その頃だ——————
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