第4話 僕は今日、築き上げて来たアイデンティティが崩れていくのを感じた!
僕は
あまり感情を表に出さない狭間さんの表情が緩み、それに応えるように、ナメくんの頭のぼんぼりがハートの形になった! 狭間さんはそれを見て……飛びっきり可愛い微笑みをくれた。
「この子……
「……ペットと言うより『相棒』だよ。 実は、ナメくんはスゴい能力を持ってるんだ! ……試しに……コホン……ナメくん!」
「にゅ?」
「僕達3人以外の時間を止めて!」
「にゅうっ!」
「……さ、狭間さん! こっちに来て!」
……僕は狭間さんと、窓から校庭を見下ろした。
……部活の人達が不自然な体制で静止している。 そして、ボールやバトミントンのシャトルが空中で止まっている!
僕はポケットから小さなケースを出し、カットしたきゅうりを取り出して、驚いて目をパチクリさせている狭間さんに渡し……
「これを、ナメくんにあげて貰える? これから『冒険』に出発するから」……と言った。
……この前、ナメくんが、急にお腹が空いてちっちゃくなっちゃった経験から、僕は、常にナメくんのご飯を持ち歩いているんだ。
狭間さんは、少しだけ震えながら、ナメくんにきゅうりを食べさせた。
……良く漫画の表現で『シーン』というのがある。 時間が止まると、ホントに『シーン』と聞こえる気がして『シャクシャク』とナメくんがきゅうりを齧る音だけが、いつにも増して大きく聞こえた。
……それを見ていた狭間さんは、緊張が解けたのか、僕とナメくんを交互に見て、ニコニコしている。
ナメくんの栄養補給が終わったので、僕は狭間さんの手を握って階段を降り、靴を履き替えて、校門を出た。
無意識だったけど、僕は今、女の子と初めて手を繋いでいる。 ……僕ってこんなに積極的だったかな?
更に、これから『冒険』と言う名のデートにいくんだ! しかも、学校を飛び出して!
……時間を止めて貰っているとは言え、僕は背徳感があり、スゴくドキドキしていた。
ナメくんに『ナメくんバイク』をお願いし、二人乗りした。 ……バックミラーを覗き込むと、狭間さんもピンク色の可愛らしいヘルメットをかぶっている。
……本当に『いたれりつくせり』だ。
「じゃあ、出発するよ! 僕にしっかり掴まっててね!」と言って、ナメくんバイクに「発進!」……と、お願いした!
見る見るうちに地表が遠ざかり、あっと言う間に、スカイツリーよりも高い位置に到達した。←目測
学校の上空を旋回しながら狭間さんに……「何処か行きたい場所のリクエストある?」……と聴くと、信じられない返事が返って来た!
「いいえ……ただ……もう少しだけ……輪音君と……こうして居たい……」
そして、狭間さんが、僕の腰に回した腕にぎゅうっと力を入れたのか、狭間さんの体温が、更に熱く伝わって来た!
……!
……あれ? 僕が昔、捨てた筈の『この人を、もっと幸せにしてあげたい』って気持ちが……
……なんか……また……湧いて来ちゃった!?
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