第61話 最上位デーモン到達手段

――――――――


〇地味ライダー2号

 アナフィラキシーフルーツの量産はそのままじゃ無理だったって事?


〇両性ニンフ

 うん。ミュータントを強化しない内包魔素であそこまでの効能を発揮する果実はトレントには生産出来ない。

 同一効果の魔法果実でも最低Rランクの魔素量は要るんだ。


〇地味ライダー2号

 万能バナナみたいに将来的に量産できたりもしないのかな。

 箱庭内で大量繁殖させれば起源種みたいにニンフの基礎異能で増やせるようになるんでしょ?


〇両性ニンフ

 逆にそっちだと今はまだNランクが限界だけどね。理論的には可能だよ。

 でも、実際にやろうとするとアナフィラキシーフルーツの植生が足を引っ張る。

 ギリギリまで計算され尽くした魔法植物としての設計モデルが繁殖力を極限まで低下させてるんだ。

 普通に増やそうとするのは僕にすら不可能だよ。良くも悪くも芸術めいた果実って訳だね。


〇地味ライダー2号

 そっか。グレープちゃんでも、これ以上のアナフィラキシーフルーツ改良は難しいって言ってたし、Nランクフルーツとしての大量生産は現実的じゃないみたいだね。魔法少女と女神がタッグを組んで尚、不可能な事ってあるんだ。


〇両性ニンフ

 僕が進化してSSRになればアナフィラキシーフルーツの育成も出来るかもしれないけど、現状じゃちょっとね。

 魔法少女に部分的だけど追いついたと思ったんだけどなぁ。レシピを忠実に再現する事すら難しい。


〇地味ライダー2号

 いや、サルマちゃんは凄いよ!

 だってフルーツマジックの皆にだってアナフィラキシーフルーツの継続的な量産は出来ないんだよ?

 つまりURにすら出来ない事をやり遂げたんだ!!


〇両性ニンフ『@』

 トレントと箱庭あってこその成果だけどね。

 じゃあ、Rアナフィラキシーフルーツの継続売買の打診お願い。現物はこのメールに添付しておくよ。


〇地味ライダー2号

 おk

 今度は間違いなく許可でるから楽しみにしてて★(*^-゚)⌒☆


〇両性ニンフ

 今のうちに言っておくけど上の許可が下りなかったらRアナフィラキシーフルーツはショップ販売するからね。

 人肉食に否定的なミュータント勢力の構築は是非ともやりたい。政治力学が障害になってあの果物が表に出ないのは勿体なさ過ぎる。


〇地味ライダー2号

 その時はたぶん、フルーツマジックの皆も影ながら協力すると思う。

 ミュータントを強化するといってもRならたかが知れてるし。

 もし却下されたら、それはもう融和派に対する魔法少女支援組織内にいる強硬派の妨害だからね。

 ミカンさんがミュータント傭兵の異常な偏向報道は強硬派も一枚噛んでるかもしれないって怖い顔してたし。


〇両性ニンフ

 おぅ、なんという派閥政治。たとえ魔法少女でも人の性からは逃れられないと言うのか。

 あ、それじゃ超高純度鉄の方はどんな反応?

 戦略物資の商取引とかもろ利権の塊だけどさ。


〇地味ライダー2号

 うーん、そっちの方はね。

 取引きそのものは可能だし需要もあるんだけど……。


〇両性ニンフ

 え、何か問題ある?

 潜在的な敵であるインベーダーとすら取引きしてるんでしょ?


〇地味ライダー2号

 サルマちゃんそれ何処から聞いたの?

 超高純度鉄関連情報は絶対に漏らすなって私、凄い脅されたんだけど。


〇両性ニンフ

 あーあ。肯定しちゃったよ。

 そこは惚けなきゃ駄目でしょ。


〇地味ライダー2号

 あ! ああああ!!

 サルマちゃん、鎌掛けたね!?


〇両性ニンフ

 何かの拍子にポロっと僕の情報まで拡散されそうで不安だなぁw


〇地味ライダー2号

 うぅ酷い……。

 乙女の純情を弄ぶなんてぇ。


〇両性ニンフ

 はいはい。ゴメンね。


〇地味ライダー2号

 情報漏洩を黙っててくれたら許す。


〇両性ニンフ

 このガバガバ感よ(汗)

 僕って弱いから本気で情報漏洩には気を付けてね。


〇地味ライダー2号

 はーい。気を付けまーす。

 それで話を戻すけど超高純度鉄の売買契約の前に画面越しで良いからちょっと会って欲しい人が居るらしくて。


――――――――



 灯さんとのメールを終えて僕はうーんと伸びをした。

 今の所、事業拡大の準備と箱庭の成長は驚く程に順調。そのせいで権力者のお偉いさんにすら注目されてしまったみたいだけど、まぁキロ億の超高純度鉄に手を出そうとしてるんだし仕方ない話だ。でも、日本に住んでる鈴原達にまで影響したらマズいな。サルマ商会はPLショップのみで活動してる人外商会だから普通はバレないと思うけど。相手にも異能者の手駒ぐらいは居るだろうしなぁ。万一の際はサルマ商会の従業員は箱庭で保護した方が良いだろうね。


「鈴原はともかく、まだ他のミュータントを箱庭に入れたくはないけどさ」


 ミュータントの急成長する性質は単なる領民としては最悪の部類のものだ。

 もし格下だからと油断して眷属にせず放っておいて、箱庭最強のSR黒き仔山羊の抜け毛触手でも口にされたら僕では止められなくなる。簡単に下克上されてしまう恐れがある。だからミュータントを箱庭内に招くのなら眷属化は必須なんだけど、どうやらミュータントを眷属にしてデーモン化したら食料摂取による急成長が出来なくなるらしいんだよね。しかもデーモンになっても魔術の勉強をしなきゃ簡単には次元転移を出来ないそうなんだ。


 だから貧困を理由にデーモンPLの配下になったとしてもミュータントPLはデーモンの眷属になりたがらないんだ。

 元は同じPLなんだから対等だって意識もあるだろうしね。そりゃ生殺与奪の権利を完全に握られたくはないでしょ。それにミュータントの力を失ってしまったら完全に単なるモブデーモンだしさ。


 でも、デーモンPLも何時爆発するか分からない地雷をそのままにはして置きたくない。だから話は簡単には纏まらない。

 こんな利害の対立でPL側にシンパシーを感じるミュータントは最近、デーモンではなくインベーダー陣営に接近するようになった。

 あっちも洗脳や解剖してくるかもって疑いは消せないから数はそこまで多くはないみたいだけどね。移住に成功したら宇宙産の娯楽を手にできるかもって利点は強い。VRゲームで遊べるよって勧誘されてホイホイ着いていったミュータントPLの心情は分からないでもない。


「ミュータントPLをURまで強化して眷属化とか出来たら最高なんだけどね。強化素材と必要魔素が全然足りない」


 そしてそういうのが入手できるような段階になった時にはPLの選別も終わっていて配下に出来るようなミュータントPLなんていなくなってる訳だ。

 うん。スタートダッシュの重要性が良く分かるな。成長が遅いデーモンだろうとのんびりしてちゃ駄目だね。可能な限り早くリソースを稼がないと。


 PL異能持ちの初代突然変異っていう黄金の人材資源が枯渇しちゃうよ。

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