第13話 時代の流れ

――――――――


〇両性ニンフ

 じゃあ、鉱石資源と食料資源の物々交換そのものはOKって事?


〇肥満オーク

 ああ。うちの箱庭はNイノシシを繁殖させて食肉として売る事で魔素を稼ぐ方針だからな。食料が豊富な程、繁殖スピードが上昇する有利特徴があるんだが環境が山地で困ってたんだ


〇両性ニンフ

 鉱石を採掘しての資金稼ぎはしないんだ


〇肥満オーク

 デーモンの鍛冶師は先祖代々、専門の業者から買い付けてて新規参入には厳しい

 インベーダーは魔素を受け取りはしても還元はしねぇから商売相手としちゃ失格だ

 おまけに鉱物なんぞ幾らでも宇宙にある。考慮に値しねぇな


〇両性ニンフ

 なる程。それでインベーダーのコピー商会に食料を売ろうとしても駄目だったんだ

 でも地球とは商売しないの?

 食料は農家保護を理由に断られたけど希少鉱物ならミュータント商会を介せばいけると思うよ


〇肥満オーク

 いずれ滅ぶ星の金を貰って何になる。あんな物は単なる紙切れだ


〇両性ニンフ

 魔法少女が大勢いる地球が滅びる? 本気で言ってるの?


〇肥満オーク

 逆に聞くが何で滅びないと思ってんだ

 銀河帝国の一企業と星の数程あるデーモン国家の一つに攻められた程度でピーピー言ってんだぞ


〇両性ニンフ

 でも原作じゃ、4作目以外は魔法少女側が勝ってたじゃんか


〇肥満オーク

 ああ。地球の軍隊じゃなく魔法少女が、勝ってたな

 どういう原理で覚醒してるのかもよく分らん

 遺伝で力が子孫に継承もしない謎の存在が


〇両性ニンフ

 まあ、そうだけど

 でも戦力はピカイチだし数もそこそこいるんだよ?


〇肥満オーク

 だから何だ。インベーダーは太陽系に侵略基地を築いて補給線を形成してるじゃねーか。侵略する野生デーモンだって日々増えてる。

 誰かが地球の次元座標を広めてるんだ


〇両性ニンフ

 そんな。……地球って何時まで持つと思う?


〇肥満オーク

 間違いなく千年後には滅びてるぜ


〇両性ニンフ

 いや、なげぇーよ


〇肥満オーク

 うるせぇな。魔法少女が強すぎて計算できねぇんだよ

 インベーダーも星間文明にすら到達してない星を本腰入れて侵略はしねぇだろうしな


〇両性ニンフ

 野生デーモンだってミュータント強化の餌になってるみたいだし

 本当に滅ぶのかな?


〇肥満オーク

 魔法少女の意図的な増強も科学文明の飛躍的な進歩も無理ならそりゃ滅ぶだろ

 インベーダーの植民地かデーモンの牧場と化す。百歩譲ってミュータントの巣窟ってとこだな。或いは


〇両性ニンフ

 量産ウィッチの地獄になる?


〇肥満オーク

 もっとも救いようがない未来だな。いっそ負けて支配された方がマシだろ


〇両性ニンフ

 まあ、それは同意

 でも何で子孫には力が継承されないのにクローンだとOKなんだろうね


〇肥満オーク

 さあな。運営にでも聞かないと分からないんじゃねぇか?


〇両性ニンフ

 僕らを連れて来た運営も運営で謎の存在だよね

 あ、そういやさ。何で地球と商売しないの?

 少なくとも暫くは安泰だって思ってるんでしょ?


〇肥満オーク

 あの、やり取りがな……商社の営業マン的な挨拶を向けられた途端、吐き気が


〇両性ニンフ

 あっ(察し)


――――――――



 ショップのレビュー欄によく出没する肥満オークさんとの交渉に成功して、僕の箱庭の食料と彼の箱庭の鉱物とを物々交換する事になった。

 魔素さえあれば幾らでも植物を生やせる僕と違ってオークである彼は箱庭の資源を取り尽くしてしまったら後がないんだけど、最初から箱庭の環境を改変するつもりだったから問題はないのだとか。僕みたいな環境改変型モンスターを導入するみたいだけど幾らで購入出来るんだろう。ニンフみたいに大量の魔素を放出しないなら桁違いの額にはならないとは思うけど。小精霊だって環境改変型に区分されるしね。


 そこまでしてイノシシに拘ってるのはアレか。イノシシが肥満オークさんの進化デーモンなのかな。

 うっ。肉は欲しいけど絶妙に食べたくない。想像しなきゃ良かった。


 でも、地球滅亡の危機か。何か実感湧かないなぁ。

 天の川銀河のみで放送してるローカル番組インベーダーTVの切り抜き動画に映る魔法少女は毎回、楽勝で戦闘に勝利しているし。

 何時まで経っても陵辱されない魔法少女の姿に視聴者からテレビ番組にクレームが入るレベルで。宇宙人の倫理感よ。


「でも、あそこまで断言されると不安になってきた。今のうちに買える物は買い漁っとこう」


 まずは貧乏くじミュータントに連絡してフルーツの詰め合わせを買わせて……。ああ、現金払いじゃなく現物納入も今なら可能だな。

 購入した食料を数倍にして返すって連絡すれば困窮してる彼なら乗るでしょ。品種改良した植物性の食べ物を片っ端から用意させよう。バナナのキャベンディッシュ種と丼物に合う米『きらら397』にタマネギと紅ショウガからラーニングしたショウガの多年草だけじゃ全然足りない。


 8世紀のフランク王であるカール大帝に最低でも90種の野菜や果樹を栽培するよう言われたんだ。彼の遺志を無下にしちゃいけない。


 そうタマネギからの電波にうんうん頷いてショップアカウントのメールを開いた。

 でも、ニンフの歴史ラーニング、端から見たらガチで怖いだろうな。タマネギを口にした後、無意識に跪いていたぞ僕。存在しない人物と会話してただろうし目の瞳孔も開いてたと思う。


「ん?」


 手間賃代わりの食料提供を打診していると、同時に開いていたショップ画面に思わぬものが映って僕は目を瞬かせた。

 見間違いかと新規商品欄を拡大して該当の商品をクリックしてみても表示が大きくなるだけで変わらない。気のせいなんかじゃなかった。


「遂に来たか」


 そのページにはでかでかと人間の写真が写り込んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る