進展

私達が留学先の候補としているドイツとアメリカ。


実はこの二国で迷うのはかなり珍しいこと。


それはそうよね。ドイツとアメリカでは地球のちょうど反対側。


人々の性格も環境も全然違うんだから。


もちろん、出身の作曲家や流行ってきた音楽だって全く違う。


私は、今のところどちらも良さそうだけど、こんな半端な気持ちじゃ駄目なこともわかっているつもり。


きっとどちらに行っても良い経験はできるだろうけど、そんな軽い気持ちで留学なんてできない。


ドイツなら、クラシックを学ぶならまず間違いはないと思う。


オーケストラは盛んだし、オケの数も日本と比べて桁違いに多い。


そこはアメリカよりも恵まれているかもしれない。


けど、アメリカには有名なソリストがたくさんいることも事実。


う〜ん…でもそもそも、私はソリストになりたいわけではないしなぁ…。


かといってオケに入りたいかと言われると、入りたいけれど…。


やっぱり、私がやりたいのは吹奏楽だな。


そうだ!アメリカって、確か…吹奏楽曲の作曲家って、確かアメリカ人が多かったはす!


世界的に見たら日本が特殊なのかもだけど、少なくとも日本の吹奏楽はアメリカから伝わってきたものなはず。


だったら、そのルーツを辿ってアメリカに行くというのは、一つの正解だと思う!


よし、ここまでわかったら、ジュリアーノにどんな先生がいるかと、学校に留学経験のある先生がいないか探してみよう!




ということで、まずは学務部へ。


うちの学校の先生には、なんと1名ジュリアーノへの留学経験がある先生がいるみたいだった。


早速その先生に、と思ったんだけど学務部の事務員さんからのアドバイスで、まずは私がクラリネットを習っている先生にお話することになった。



『え?留学?』


「はい。」


山賀先生。


私のクラリネットの師匠だ。今までで1番驚いた顔をされている。


それは、そうか…。


『うーん。なるほど。急すぎてちょっとびっくりだけど、どこに行くつもりなの??』


「はい。すみません。まだ決まってはないのですが、アメリカの、ジュリアーノへ…」


そんなに意外でもなかったのか、ここは大きな反応もなかった。


『あぁ、峰岸さんは吹奏楽好きだもんね。その点アメリカというのは、納得だな。』


と言いつつ腕を組んで考え込んでいるようだった。


『まぁ、僕としては寂しい気もするけど、決めるのは君だからね。どうなっても応援するよ。』


「ありがとうございます。先生のお知り合いで、ジュリアーノか、ベルリンか、カールスルーエへの留学経験のある方はいらっしゃいませんか?」


『ん?ドイツも視野に入れてるのか?一応、どこにもい知り合いはいるけど、今から準備を始めるのであれば、もう絞った方がいいよ。ドイツとアメリカでは求められるものが違いすぎるからね。』


「なるほど、そうなんですね。」


『うん。焦っても仕方ないけど、時間はそんなにないと思った方がいいね。決まったらちゃんと紹介するからそこは安心してね。』


「ありがとうございます。」


そっか。けどまぁ、私達の場合は2人で留学するわけだし、決めて動いたほうがよさそうね。


どうだろう?私としてはアメリカ寄りだけど…。


考えていても仕方がないので、恒星にメールを打つことにした。


【お疲れ様。留学のことで話したいんだけど、今日会えるかしら?】


返信はすぐにあった。


今日ならいつでもとのことなので、早速校門で待ち合わせをした。


いつものカフェに向かう。


「どう?考えはまとまってきた?」


『うん、詳しくは店に着いたら話すけど、かなり具体的になってきたよ。結は?』


「私も、まとまってきたわ。」


けど、これ考えが一致してなかったらどうしよう…


なんて考えていたら、お店に着いた。


飲み物を注文したら早速本題に入る。


「それで、留学先についてはどう?」


恒星はちらっとこちらを見た。


察したみたい。


『うん。アメリカに、行きたい。』










っほ。


良かった。


「よかった。一致してた。」


じわっと拡がるように喜びが沸き起こってきた。


『おぉ!ほんとか!良かった!』


恒星も嬉しそう。


「うん、実は今日、山賀先生にお話したのよ。そしたら、まずは留学先を決めた方がいいって。ドイツとアメリカでは、求められるものが違いすぎるから。」


『うん。俺も安藤先生に相談して、同じことを言われた。それに…』


それに?


『俺のサウンドや音楽性はアメリカの方が合ってそうだって。自分では全然自覚なかったんだけどな。』


「へぇ!それはすごいじゃない!もう今の段階で音楽性が出てるなんて!」


私もちょっと思ってはいたけどねw


『うん、だから、俺も早いうちに結と答え合わせをしたかった。ありがとう』


「んん、全然!こちらこそありがとね。山賀先生曰く、お知り合いにジュリアーノへ留学されてた方がいらっしゃるみたいなの!」


『そうか!それはよかった。実際に経験がある人が近くにいると強いよな!』


「うん、今度、ちゃんと紹介してもらって会いに行こう!」


こうして、私達の留学準備は進んで行く。


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君との恋の物語-Blue Ribbon- 日月香葉 @novelpinker

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