7.「まだ日常会話がやっとなのですが」
「あ、ヤシロッチ!」
「遅いよ~」
ドアを開けた途端に絡まれた。
武野さんと鞘名さん。
我が矢代興業が誇る未来人。
金のタマゴを産むニワトリだ。
今のところ2人しかいない未来人の存在は矢代興業の中では
なぜならこの二人、どうやってるのか知らないけど株価や為替の変動なんかを予測出来るらしいんだよ。
それだけじゃなくて、どうも社会的に重要な事件や物事をある程度予知出来るんじゃないかと思われているそうだ。
例えば宝神国際大学の買収なんかもこの二人の強力な示唆の結果だったと聞いている。
加原くん率いる
本人たちの説明では「えーと。未来だとCMとかの技術が発達していてパターン認識が育っているから」ということになるんだけどさっぱりだ。
もはや超能力なのではないかという方向に傾きつつあるけど本人たちは違うと。
「武野さんと鞘名さん、心理歴史学って何か知ってる?」
聞いてみた。
「知ってるよ」
「ちゃんとググッた」
さいですか。
つまり用語は知ってるけど意味は知らないわけね。
まあいいか。
僕は後ろの席に並んで座っている美少女たちに手を振った。
「Hey! Daichi」
「How do you do?」
見た目はロシアの美少女スケーターそっくりのこの二人はアメリカのロンズデール姉妹だ。
何でもロンズデール・グループとやらのご令嬢で、矢代興業とも事業で繋がりがある。
アメリカ行った時に色々お世話になったからなあ。
ご本人たちは双子であるだけではなく
宇宙人と言ってもむしろ「地球外知性体」といった所で、どうも生物じゃなくて
この人たちの仲間は結構いて世界中に散らばっているらしい。
と言っても全員同じ星? の出身とかじゃなくて、それどころか世界も違うそうだ。
当然だけど性能にも差がある。
使い捨ての無人探査機からこのロンズデール姉妹みたいな、ええとクラウド型AI搭載の広域偵察艦隊まで満遍なくいるそうで。
ちなみに宇宙人の特徴は双子だ。
それも一卵性。
つまりそっくりな二人が
本人たちによればお互いが万一の場合のバックアップで、よく判らないんだけど
何の事だか判らないけど(泣)。
まあいいか。
僕は気を取り直して言った。
「ここは日本だから日本語で言ってよ」
アメリカで話した時にバレてるんだよ。
日常会話的には日本語もうペラペラでしょ?
「……そうです、ね」
「まだ日常会話がやっとなのですが」
やっぱし。
僕の英語は
しかも
まあ帝国語とか王国語とか話すのもいるけど、そういうのは他の学生には判らないだろうし。
僕も(泣)。
「英語では僕がついていけないし。他の人も無理だから。お願いします」
「仕方有りませんね」
「努力します」
良かった。
それにしても信楽さんが言っていた通りになったな。
学生名簿には載ってなかったけどロンズデール姉妹も心理歴史学講座に所属することになるらしい。
そういえば宇宙人ってロンズデールさんたちだけなんだろうか。
日本にももっといたと思ったけど。
如月高校の何とか探求部の人たちとか。
爽やかスポーツ少女系の人たちとか。
「荒間先輩たちはぁまだ高校3年ですぅ。入学は来年になりますぅ」
何でも知っている信楽さんが教えてくれた。
そうそう、荒間姉妹だった。
如月高校の僕の後輩で何とか探求部を作ったという。
他の高校だけど短髪褐色系の美少女もいたっけ。
外見に反してインドア派だったけど。
名前忘れた。
「そういえばそうか。あれ? 宇宙人の人たちってみんな同じ歳じゃなかった?」
宇宙人だけじゃないけどね。
今まで見つかった中二病患者ってなぜか前世の種類ごとに年代が統一されているんだよ。
未来人や超能力者もそう。
前世がゲームキャラというキテレツな服部さんたちは僕より3つ上だ。
その法則によれば宇宙人はまだ今年高校3年だから宝神に入れないはずでは?
「ロンズデール先輩たちはぁアメリカのハイスクールを飛び級で卒業してますぅ。宇宙人の人たちはぁ大抵そうみたいですぅ」
何と。
そういうことね。
ロンズデール姉妹は如月高校の3年に強引に編入してきたんだけどあの時はまだ16歳だったと。
「宝神に入っていいの? 日本の大学は18歳になってないと入れないんじゃ」
「問題ないですぅ。そもそもぉロンズデール先輩たちはぁアメリカの大学の入学許可を得てますぅ。宝神ごときが入学を断れるはずないですぅ」
そりゃそうだ。
ロンズデール姉妹を伺うと揃ってニコニコしていた。
こいつら絶対自称より日本語判ってるよね。
「そういやスタンフォードはどうするの?」
聞いてみた。
「ええと休学? 入学保留? 日本語では上手く言えないです」
「その辺りは、家の者に任せてます」
淀みなく応える美少女の双子。
さいですか。
まあいいや。
外国の大学生にはそうやって世界の大学を放浪する人もいるって聞いたことがあるからね。
大金持ちのお嬢様なんだからどうでもいいんだろう。
そもそも
ロンズデール姉妹は放置することにして教室を見回してみたけど他に人影はない。
「高巣さんや
比和さんや宮砂さん、シャルさんたちは講師側だから来られないのは判っている。
退屈したのかスマホを弄っている未来人たちに聞いてみたけど知らないという返事だった。
「さぼりじゃないの」
「大学生に自主休講は付きものだって聞いたし」
いやオリエンテーションを
信楽さんを見たら言い訳された。
「静姫様はぁ
いや違うと思う(笑)。
どっかで迷っているとみた。
「
信楽さん、やっぱ
いや別に不思議はないんだけど。
静村さん、外国に行っている間に
いやあれは仏教用語だから違うか。
ラノベ的に言うと魔獣を使役するみたいなもので。
「もうすぐ来るはずですぅ」
信楽さんが言うと同時にドアが開いた。
「おう、ダイチ。この教室でいいのか」
でかい手提げ袋をぶら下げて入ってくる
外見は相変わらず女子中学生だけど眼光と態度が帝国将軍の威圧感を漂わせている。
続いて入ってくるどことなく気品を漂わせた美少女。
高巣さんはもうどこからみても王国王女だ。
日本人だけど(笑)。
「ここでいいんですね。信楽殿」
「はいですぅ。ご苦労様ですぅ」
信楽さん。
王国と帝国の貴顕も支配下ですか(泣)。
高巣さんは何も持ってないと思ったら後ろにつき従っている近衛兵たちが巨大な箱を担いでいた。
何かちょっと見ない間にまた成長してない?
「「お久しぶりです!! 矢代理事長!!」」
はいはい。
そして最後に入って来たのはタカラヅカの男役めいた外見に似合わず軽い態度の
「遅れてすみません! 信楽さん。これ、ここに置いていいですか?」
魔王を従えるって信楽さん、魔神?
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