ディアブロ王国へ

 俺達はディアブロ王国に向かって進む。

 だが早速牛の魔物と闘う。

 交易路も道沿いに魔物はいなかったが、俺とルナが魔物を感知した。

 ルナが走って魔物に向かって行ったのだ。


 ルナのレベルは99だ。

 後1レベル上げれば次のジョブを選択できる。

 そうなれば一気にレベルアップ出来る。


「ベリー、エムル、今までは魔物の殲滅を優先してきたが、ルナのレベルアップを手伝ってくる。ここで休んでいてくれ」


 俺は突撃してくる牛の足を狙って転倒させ続ける。

 止めは出来るだけルナに任せるのだ。

 ルナは時間をかけながらも確実に魔物を倒していく。


 魔物を倒すと、ルナが固まった。

「……上がりましたわ!」

「レベル100になったか!」


「はい!やりましたわ!!」

 ルナが俺に抱きつく。

 ルナは泣いていた。




 合流するとルナは他の2人とも抱き合う。

「ルナ、次はどのジョブにするの?」

「戦士にします。ずっと決めていましたわ」


 戦士か。

 斥候はダガーやナイフなどの軽い武器しか扱えない。

 どうしても攻撃力が不足する。

 だが戦士になれば、剣や槍などの攻撃力の高い武器を扱えるようになる。


 今までの攻撃力不足を解消したいという思いが伝わってくる。



「いいと思う。武器は何がいい?」

「ウインの使っている刀がいいですわ」

 俺はすぐにストレージから刀を取り出した。


「用意していたのですか?」

「なんとなく、刀を選びそうな気がした」

 ルナはまた俺に抱きついて泣いた。




 ルナは泣き止むと嬉しそうに刀を振っていた。

「ねえ、魔物を倒しながら進みましょう」

「そうだな、ゆっくり進むことになるが、エムルは大丈夫か?」

「ルナを見ていたら、ダメとは言えないよ」


 こうして一か月かけて魔物を狩りつつディアブロ王国の首都にたどり着いた。

 ディアブロ王国の魔王城は周りのみんなの移住が終わった後放棄された。

 デイブックから離れたアーサー王国寄りの西の地に首都が設けられた。


 両国の移動は近くて快適になっている。

 館に向かうと魔王とセイラが出迎えた。

「お帰りなさいませ」


 セイラの態度は普通だが、魔王の機嫌が悪い。

「魔王、どうした?」

「カニとエビは、無いか?」


「アーサー王国の食料不足の為に全部配った。それにディアブロ王国にも配っただろ?」

「すべて飢餓の国民に配った。だがウイン」

「ん?」

「私は、カニとエビが好きだ。次は持ってきてくれ」


「わ、分かった」

 俺は閃いた。


「魔王、ルナがお土産として用意したお菓子がある。各種類100セット置きたいがどこに置けばいい?」

「セイラ!紅茶の準備を頼む。皆も座って休んでくれ」

 魔王の態度がよくなった。

 分かりやすい奴だ。



 俺達は座ってお菓子を囲む。

 ルナの食べるペースが早いが、そっとしておこう。


「魔王、最近政治は落ち着いたか?飢餓問題は解決しただろ?」

「飢餓問題は解決した。だが毎日15時間働いて公務だけで時間が過ぎていく。魔物が出て私が倒しに行けば次の日から18時間公務をこなさねば公務が終わらん」


 それは機嫌も悪くなるよな。

「エムルを手伝わせよう」

 一瞬セイラと魔王が固まった。


「くう!背に腹は変えられないか!!」

 魔王は悔しさで震えている。

 そんなにエムルが嫌か。

 ならなぜ俺に押し付けた!


 俺はエムルに向き合って両肩を強めに掴んだ

「エムル!魔王の公務を手伝え!!迷惑はかけるなよ!まじめにやれ!」

 俺はエムルを思い切り睨んだ。

 魔王のやり方に怒りを覚えたままエムルにきつく言った。


「はあ、はあ!これだよ!これ、ふぉおおおおおおおおおおお!やるよ!」

 エムルはやる気満々で公務に向かって行った。


「大丈夫でしょうか?」

 セイラは、まるで厄災を野に解き放って大丈夫でしょうか?

 と言う言い方に聞こえる。


 俺はとんでもないモノを解き放ってしまったのでは?

 いや、考えすぎだろう。

 魔王を見るとまた不機嫌になっている気もする。


「よろしいでしょうか?」

 黙っていたルナが口を開いた。

「言ってくれ」

「話を聞かせてもらおう」


「ガルゴン様が苦しんでおられるのは2か国間会議の議題にも出た文官不足によるものでしょうか?」

「うむ、その通りだ」

「でしたら、アーサー王国への支援要請の連絡を送りましょう。それと、長期的に考えて文官を育成するための教育も必要ですわ。アーサー王国の学校に通わせるのがいいですわ」


「だが、資金が無いのだ」

「なあ、俺達が売った魔物の素材を寄付する形で資金を確保出来ないか?」

「それはアーサー王国へ納入した魔物の素材で文官や学生の学費や給料を賄うという意味ですか?」

「そうだ」


「それは助かる」

「文官は何人必要で学生を何人送り込みたいんだ?」

「欲を言えば文官500と、学生2000だ」

「俺が手紙を書いて連絡を送ろう。断られるかもしれないけどな」


「紙とペンを持ってくる!」

「ふふふふ」

「ルナ、どうした?」

「ウインが手紙を書いたら、ある程度の要求は通りますわ。自信無さげに言わなくても大丈夫ですのよ」


「その通りだ。ウインが言えばその通りになる」

「魔王、戻ってくるの早くないか?」

「走ってきた」

「さあ、書いてくれ!今すぐにだ!セイラ、ウインが手紙を書いたらすぐに連絡を送ってくれ!


 魔王の圧が凄い。

 それにみんなも見つめてくる。

「書きづらい。あんまり見ないでくれ」



 ……誰も言う事を聞かない。

 俺は黙々と手紙を書いた。


 ルナと魔王は書いた手紙をチェックする。

 特に魔王は前のめりで手紙をチェックした。

「大丈夫だ!問題無い!」

 すぐにセイラが手紙を持ってアーサー王国に出発していった。

 ディアブロ王国を離れるセイラはエムルと距離を取れて嬉しそうに見えた。


「なあ、セイラは笑顔だったけど、エムルと距離を取れて嬉しそうに見える」

「うむ、その通りだ。あの2人は相性が悪い」


 エムルの発言でセイラはいつも真っ赤になっている。

 セイラはエムルがいると出来るだけ黙っている。

 エムル、問題を起こさないでくれ。

  

「所でウイン、アーサー王国の問題は片付けてきたのか?」

「そうだな。次はしばらくここを手伝う予定だ」

 魔王の機嫌が良くなっていく。


「うむ、育成を頼みたい者がいる。入ってくれ」


 そこには体調メートルほどの大男が入ってきた。

「紹介する、オガだ」









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