【勇者視点】バグズの侵攻

 俺は気分がいい。

 ガーディーとマリーが俺と勝負を受ける事になった。

 南部に向かう馬車に揺られ、青い空を見る。


 気持ちのいい風だぜ。

 これから俺が完全に勝利し、ガーディーとマリーは落ちていくだけだ。


 今回のゴブリン狩りはゴブリン3万、しかもゴブリンは小さい個体が多いらしい。

 対して人間側の戦力は1万。


 簡単な話だ。雑魚ゴブリンを1人3体倒せばおしまいだ。

 だが今回は勝負がある。

 前のめりに前に出る必要がある。

 早くゴブリンの元に行かないと倒す得点が居なくなる。


 


 ◇




 ゴブリンの群れのいる位置に行くと、ガーディーとマリーが居た。

 あいつら!先に到着して戦っていたのか!

 卑怯者が!


 俺は馬車から飛び降りるように前に出る。

「せこい奴らが!そんな事をして調子に乗るなよ!!」


「のろまが!今ごろ到着したか!」

「あんたがぐずなだけじゃないのよ!!人のせいにしてんじゃないわよ!」

「何だと!貴様らあああ!!」


「お、大きい声を出すとゴブリンに察知される」

 冒険者の一人が注意した。


「黙れ!」

「何様だ!」

「うるさいわよ!!」


「おい、あいつらから距離を取れ、悪名高い勇者パーティーだ」

「あ、あれが、通りで」


 冒険者達が離れていく。


 罵り合いながらも順調に魔物を狩っていくと、手ごわいゴブリンが現れる。

 そのゴブリンは漆黒の槍を持っていた。

 背は小さいが動きが早い。


 うおおおおおおおおおおおおお!

 漆黒の槍を持ったゴブリンが叫ぶと、ゴブリンの群れが集まってきた。


 100体、500体、どんどん増えて1万を超える部隊が現れる。

 何が起きている!


 報告ではたった3万の部隊だったはず。

 もう全滅させていてもおかしくはない。

 その瞬間更に異常が起こった。


 アオール!嘘の報告をしたのか!


 3人が勝負の為につけていたブレスレットが黒い光を放ち始めた。

 これは、魔物をアーサー王国に誘導した時と同じ光か!

 ブレスレットから声が聞こえる。


『ゴブリンを、アーサー王国の王都まで誘導してください』

『ゴブリンを、アーサー王国の王都まで誘導してください』

『ゴブリンを、アーサー王国の王都まで誘導してください』


 なんだと!アーサー王国の国境までなら誘導出来るが、王都となると話は別だ。

 アーサー王国の王都は遠すぎる!

 俺はデイブックの首都に向かって走り出した。

 

 『西に向かってください。デイブックの首都から離れてください。制約に反すると、苦痛を発生させます』

 体が痛くなってくる。

 足を止めて西に向かうと苦痛が止まる。


 ゴブリンが俺をターゲットにする。

「くそくそくそくそ!くそがあああああ!」


 俺は西に向かって走った。

 ガーディーも少し遅れてついてくる。


「あんたたちいい!!!待ちなさい!助けなさいよおおおお!!!」 

 マリーがゴブリンに囲まれる。


 マリーは終わったな。

 もっと粘ってターゲットを取れよ!

 すぐに死ぬな!

 おとりの役目を果たせ!


 俺はブレイブタイムを発動させる。

 一気にガーディーを引き離してぶっちぎって西へと逃げる。


「そうだ!このブレスレットを破壊すればいい!」

 俺はブレスレットを剣で破壊する。

 だが、黒い光がおれにまとわりつき、更に呪印の紋章が腕に刻まれたままになっている。


「くそ!駄目か」

 後ろを見るとガーディーがターゲットにされている。

 俺はブレイブタイムの効果が切れる前に全力で逃げた。


「ブレイブ!待てえええ!」

「ふざけるなふざけるな!誰が止まるか!」


 俺は全力で距離を取って逃げる。



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