【勇者視点】落ちる勇者パーティー
「あんたいい加減にしなさいよ!あんたのせいで私の評価が下がるじゃない!」
「うるさい!人のせいにするな!マリー!お前はいつも人のせいにして言い返せなくなると話を逸らす!現実を見ろよ!」
「人のせいにするのはあんたじゃない!」
「なら次はお前が指揮を取れ!」
「私は関係ないわよ!あんたのパーティーでしょ!」
「それだ!文句は言うが人のせいにするその態度をやめろと言っている!」
俺はギルドでマリーと言い合いをしていた。
マリーはわがままだ。
自分に甘くて他人に厳しい。
文句ばかりで自分では動かない。
今の依頼の時間超過の原因を俺に押し付ける。
俺の指示通りに荷物を持たずに言い合いになり、キャンプの用意を誰がするかで言い合いになり、怒鳴り声で魔物が集まり更に時間が遅くなる。
まったく、マリーとガーディーのおかげで依頼を失敗した。
最近はガーディーよりマリーの方がウルサイ。
マリーと話をすると、精神病の者と話をしている気分になる。
いや、異常者の方が近いか。
そのせいで勇者パーティーはCランクに降格した。
実力不足ではなく異常者の世話のせいで依頼を失敗し続けている。
おまけにマリーは目を離すとすぐに他の冒険者やギルド員を召し使いのようにこき使い始め、勇者パーティーの評判を落とす。
こいつらは首にするべきかもしれん。
そこにアオールがやってくる。
「やあ、君たちに依頼したいことがあるんだよ。力を持った者にしか出来ない依頼だ」
「話を聞こう、だが、マリーとガーディーを勇者パーティーから追放しようと思っている」
「うむ、うむうむ……そうか、ではこうしよう。ブレイブ・ガーディー・マリーの3人それぞれ個別で依頼を受けてもらい、力を競って欲しいのだよ」
「ふ、俺の圧勝だな」
「ガーディー君はどこにいるのかな?」
「今ギルドで酒を飲んでいる」
「飲みながらでも依頼を伝えたいのだよ」
「おい!ガーディーこっちに来い!」
「うるさい!指図するなクズが!」
「まあまあ、私が動こう。個別に話をしても構わないよ」
俺は渋々ガーディーの近くに行く。
「すまないね。3人に依頼したいのは、南部に現れたゴブリンの群れの討伐だよ。3人個別で依頼をこなしてもらい、誰が優秀か判断したいのだよ。最も結果は見えていると思うがね」
アオールは3人全員を見た。
ふ、俺が勝つことをアオールは分かっているようだ。
だが、2人は状況が理解できていないようだ。
「なるほど、この2人を余裕で圧倒すればいいのだな!」
「何言ってんのよ!私の回復魔法で皆を圧倒するわ。あんたそんなことも分からないの!?」
「待ってくれ。喧嘩はやめて、勝負で決着をつけて欲しいのだよ」
その通りだ。
今回の勝負で、皆を圧倒し、言ってやる。
お前らクズは追放だとな。
「では、全員個別参加で良いのだね?勝負のルールを説明してもいいかね?」
「構わない」
「君たち3人はこのブレスレットをつけてもらう。このブレスレットで行動の得点が自動で加算される仕組みだよ。ゴブリンの討伐が終わるまでこのブレスレットは外せないルールだ。無理に外した者は強制的に敗北となる仕組みだよ」
都合がいい。
このルールなら口でごまかすことは出来ない。
クズのガーディーとマリーは口でごまかせなくなる。
「それと、今回の依頼を断った場合強制的にDランクとなる。前回の被害から立ち直っていない南部へのゴブリン襲撃だ。皆の見本となるべき勇者パーティーのメンバーが民を守らず逃げたとあれば、批判は避けられないんだよ」
「分かった。参加しよう」
俺はブレスレットを装着した。
「この紙を見ながら宣誓をして欲しいのだ。皆を守る為ゴブリンと最後まで戦い、民に被害が出そうならアーサー王国に誘導すると」
「ん?アーサー王国に誘導する?ゴブリンの群れはそこまでの規模ではないはずだが?」
「これは最悪のケースを想定してあるのだよ。万が一にも再侵攻を許せばギルドも我らも批判を受けるんだよ。大人のルールだと思って欲しいんだ。それに宣誓をしないと勝負を開始できないよ」
「俺が倒すから問題は無いがな。皆を守る為ゴブリンと最後まで戦い、民に被害が出そうならアーサー王国に誘導する」
ブレスレットが光って発動した。
「ちょっと待ちなさいよ!これは制約の腕輪と同じことじゃない!」
「ふ、逃げてもいいんだぞ」
「そういうことじゃないじゃないの!」
「マリー君、断るならDランクになり、今までお情けで優遇していた勇者パーティー特権も消失するよ。確か今まで無利子で貸し出していた金が3億ゴールド以上あったはずだね。それと優先的にただで泊まれていた高級宿屋は使用できなくなるよ。更に高級アクセサリー店への予約なしでの来店も出来なくなるよ。3億の借金に利子が付けば、すぐに取り立てと利子でアクセサリーを全て売り払い、更に借金から毎日治癒をする仕事を魔力が切れるまですることになるだろうね」
「アオール、こいつは口だけで何もしない。早くDランクへの降格準備を進めてくれ」
「待ってくれ。マリー、やるのか、やらないのかどっちかで答えて欲しいんだ」
「そうじゃないでしょ!この宣誓は制約の腕輪と同じ事よ!」
「な、答えないだろ、時間の無駄だ。異常者はさっさとDランクに落とそう。マリーは一生奴隷として生きていくのがお似合いだ」
「マリーは依頼をやると言わなかった、依頼を拒否し、Dランクへ降格、っと。次はガーディー君」
「待ちなさいよ!やるわよ!」
「そうか、良かった良かった。危なく君の人生を終わらせるところだったよ。次にガーディー君、君はやるかね?やらないかね?」
「やる。ブレイブに目に物を見せてやる!」
「良かった。それではブレスレットを装着し、宣誓を始めて欲しいんだ」
3人はブレスレットをつけて南部へと向かった。
【アオール視点】
アオールはマスコミギルドの影の支配者、ヘイトの元に報告を急いだ。
ヘイトの屋敷を訪れると、ヘイトから珍しく声をかけてきた。
「勇者パーティーはうまくブレスレットをつけたか?」
「はい、何とかうまくいきました」
「宣誓もさせたな?」
「はい」
ヘイトは口角を釣り上げた。
ヘイトが恐ろしい。
逆らえば殺される。
気に障れば殺される。
余計な事を言ってはいけない。
「これで採算の取れない勇者たちは居なくなるか。下がっていいぞ」
「分かりました」
汗をびっしょりと搔きながら部屋を出ると、大きく深呼吸をする。
この瞬間生きている事を実感できる。
は、早くここを立ち去ろう。
アオールは急いでヘイトの屋敷を後にした。
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