【アーサー王視点】スタンピード②
それでも魔法と矢の雨の攻撃でゴブリン部隊を順調に倒していったが、ゴブリンの勢いは止められない。
ゴブリンは、南門への攻撃と、はしごによる南門周辺の城壁への進行を同時に行った。
「わが軍の魔法攻撃部隊、魔力が切れつつあります」
く、やはり数が多すぎる。戦闘の準備をする期間が短すぎた!
魔力ポーションの出し惜しみはせず、後先考えず使っていた。それでもゴブリンの勢いを止められないか。
厄介なのはゴブリンキングだ。
かつて多くの英雄がゴブリンキングに殺されている。
成長したゴブリンはゴブリンキングとなり、軍を使い、捨て石のようにゴブリンを使い捨てにしながら人間を蹂躙してくる。
ゴブリンは弱いが成長したゴブリンとなれば話は別だ。
ゴブリンキングの危険度は一気に跳ね上がる。
最弱のゴブリンが成長すれば最強になりえる。
これまでの歴史がそれを証明している。
多くの英雄がゴブリンに殺されてきた。
「南門の壁が壊されます!」
「く、ウォール、セイラに任せる」
そして、ついに南門に穴が開いた。
空いた穴からゴブリンがなだれ込んだ。
ゴブリンが城門を抜けまっすぐ進み、道なりに左に曲がると、そこは行き止まりで詰まる。
壁の上には弓兵が構えていた。
「弓を放てえええい!」
南門内に侵入してきたゴブリンは、混乱状態に陥り、後退しようとした。
だが、後ろから南門内に侵入してくるゴブリンとぶつかり、さらに混乱状態に陥った。
アーサー王は叫ぶ。
「罠にかかった!一気につぶせ!」
本当は分かっている。
これで勢いを止められない。
決定打にはならない。
だが、私は兵の指揮を維持する為大げさに喜ばねばならん。
兵士の士気を維持する為大げさに叫ばねばならん。
その間にも兵士が死んでいく。
拳を握りしめる。
「ウイン殿はまだ来ないか?」
兵は首を横に振った。
来ないか。
何人死ぬ?
ウォールも、セイラも、皆死なせてしまうかもしれん。
◇
【ゴブリンキング視点】
その頃ゴブリンキング率いる精鋭部隊
ゴブリンキングは異変に気付いた。
「おかしい!城門内で進軍が詰まっている?中に入って行かない」
「俺!見てくる」
「おれがみる!」
「俺だ!」
「おれがみる!」
2体のゴブリンが喧嘩を始めそうになったタイミングでゴブリンキングが指示を出す。
「お前ら2人で見てこい!部下も一緒にだ!」
「お前ら!」
「でばんだ!」
「うおおおおおおおおお!」
ゴブリンの精鋭300体による攻撃が始まった。
恐らく罠がある。
だが、こいつらに行かせる。
うまくいけばよし。
うまくいかねば次の手を考える。
あの中にはブラックホールを使う者がいる。
食らっても俺が死ぬことは無い。
だが傷を負わされるだろう。
その状態で決死の人間どもに囲まれるのは厄介。
他の者に攻撃させる。
俺の軍が街の中に攻め込む時。
それが奴らの終わりだ。
中にいる男を殺し、女を孕ませ部下を増やす。
その後はこの周辺を蹂躙しつくし、他の国を潰す。
敵の攻めを見るに、この街に戦える者は多くない。
兵士さえ殺せば終わりだ。
ゴブリンキングは口角を釣り上げた。
◇
【セイラ視点】
「300の精鋭が来ます!」
「来たわね!私が行くわ」
私の力は竜化の能力。
竜化する事で戦闘力が上がるが弱点もある。
的が大きくなり、弓や魔法に当たりやすくなるのだ。
その為防壁の外の戦闘には参加できなかった。
今が力を使う時。
「俺も戦う!」
ウォールが叫ぶ。
「私が竜化してコールドブレスを使えば周りを巻き込むわ。まず私がなだれ込んだ敵を攻撃し、その後に攻撃を始めて頂戴」
「む、分かった」
私は服を脱ぎすてて叫ぶ。
「竜化!」
青いドラゴンに変身した。
ゴブリンの精鋭は弓の攻撃でも勢いを殺されることなく、まっすぐ城門の中に侵入してきた。
「まっすぐのあと!ひだりにまがるといきどまり!わなだ!このかべうすい!こわせる!」
短剣を持ったゴブリンが壁の薄さを見抜いた。
「俺!壁壊す!」
ハンマーゴブリンは壁を攻撃しだした。城門内の壁は、突貫工事の為、防壁ほどの丈夫さは無い。壁をどんどん壊されていく。
「おまえら!かべこわせ!」
斧やハンマーを持つゴブリンがハンマーゴブリンと協力して壁を攻撃し始めた。
そこに巨大な青い竜が現れ、氷のブレスをまき散らす。
「弓を!弓を打て!」
『無駄よ!
私は連続でブレスを放ち、一気にすべての魔力を放出した。
ブレスを撃ち尽くすと、ハンマーゴブリンに急降下し、一気に噛みつく。
「ぐげえええ!!!」
ボキボキと骨が折れる感触がして、ハンマーゴブリンが動かなくなる。
短剣を持ったエースゴブリンに迫ろうとすると、一瞬でエースゴブリンは下がっていった。
私は残ったゴブリンに噛みつき、尻尾を横なぎに振るい足で踏みつけた。
私の竜化が解かれる。
竜になった状態のダメージは一切残らないのだ。
エースゴブリンが取り巻きを引き連れて戻ってきた。
「あいつ、りゅうぞく、へんしんきれると、よわくなる。いっきにころせ」
部下を私にけしかけてエースゴブリンは壁を蹴って昇り上にいる弓兵を倒していく。
「く!待ちなさい!」
私はゴブリンに足止めされて戦う。
ウォールがエースゴブリンに迫るが、エースゴブリンはそれも相手にせず逃げながら弓兵を倒し続ける。
「げげげ!おまえら、かべをこわせ!りゅうぞくとこいついがい、みんなよわい」
「卑怯者が!俺と闘え!」
「げげげ!おこったおこった」
「にげるなあああああ!」
私は囲まれ動きを封じられ、エースゴブリンはウォールからも逃げ続け、弓兵を倒し続ける。
突貫工事で作った罠の壁も壊され、後続から来るゴブリンがなだれ込む。
なだれ込んだゴブリンと乱戦状態が始まったのだろう。
壁の外から剣の打ち合う音と叫び声が聞こえる。
このままでは一気にやられる!
呼吸が苦しい。
後ろからゴブリンが斬りつけてくる。
背中、腕、切り傷が増える。
「うおおおおおおおおおお!」
ウォールが雄たけびを上げ、ゴブリンを突き飛ばしながら大剣を振り、私を掴んだ。
ウォールは片手で剣を振り、片手で私を抱きかかえて包囲を突破しつつ街の中側に向かって走った。
ウォールが私を兵士に投げ、「セイラの治療を行え!」と叫ぶ。
戦場に戻るウォールの背中には何本も矢が刺さっていた。
ウォールの体から血が出ている。
体が動かない。
弱いのは嫌。
悔しい。
私は意識を失った。
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