【ルナ視点】攫われた王女

 アーサー王国の王女ルナは、30人の騎士の護衛の下、村を視察していた。


 ルナの魔眼。

 見た者の本質見抜く力で、未然に犯罪を予防していたが、

 そのせいで、盗賊から恨まれていた。


 視察の道中

「不審な者共の動きを察知しました!囲まれています!」

 盗賊たちがルナ一行の行く手を阻んだ。


「げへへ!ルナ王女をさしだせば、命だけは助けてやる!尻尾を巻いて逃げ出しな!」

「我らの命に懸けてルナ王女を守る!」



 盗賊が合図すると、木の茂みからぞろぞろと盗賊が出てきた。

 100……200……300以上!


「ぎゃはははは!ビビったか!俺達盗賊は結束した!今までのように数の力だけでやられはしない!」

「たった30人で何が出来る?逃げ帰れば許してやる!」

「王女様をお守りしろ!ぐは!」


「言いたいことはそれだけか?調子に乗ったやつから殺せええ!」



 30名の騎士は優秀ではあったが、多勢に無勢!

 瞬く間に騎士の数が減っていく。


「ああ!そんな!みんなを殺さないで!」

 騎士は角笛の魔道具を使った。

 この魔道具を吹くことで、周囲の兵士たちに危険を知らせる効果があった。


「くそが!こいつ仲間に知らせやがった!」

 角笛を吹いた騎士を盗賊が囲んで斬り殺した。


 数で勝る盗賊たちに30名の騎士は残らず殺された。

「おい!ここからずらかるぞ!急げ!げへへ!お前がルナか!確かに上玉だ!お前に受けた恨み、その体で返してもらうぜ!」


 ルナはがくがくと震える。


「アジトに着いたら気絶するまでかわいがってやる!なあに、二度と歯向かう気が起きねーように調教してやるよ!げへへへへへ」


「い、嫌!いやあ!」

 ルナはボロボロと涙を流した。





 ◇





【アーサー王国王城】


「ルナたんがさらわれただとおおおおお!」

 アーサー王はルナを溺愛していた。普段は知的な王だったが、この時だけは激怒した。


 王は鎧を装着し、剣を掲げる。

「何をされているのですか?」

「盗賊のアジトへと殴り込みをかける」


「お、お待ちください。王よ!どうか落ち着いてください。それにアジトの場所も正確にわかってはいません。」


「だまれええい!」

 アーサー王はぶんぶんと剣を振り回して城の外へと出ようとする。

 騎士たちが全力で制止し、王城は混乱に陥る。


 王は4人の騎士に押さえつけられた。

「ええい、そこを!!そこをどけえええい!!きぇえええええええい!」

 王城は収拾がつかない状況になっていた。


 ウォールとメアは対応に追われた。

「くそ、俺たちで救出隊を編成する!それと、ウインを呼んで協力を要請しろ!」

「すぐ近くに居るとは思いますが、盗賊のアジトの情報がまだわかりませんよ!」

「大丈夫だ、ウインはおそらく斥候レベルをカンストしている!ウインに知らせればアジトを見つけられる!良いからすぐに呼べ!」


「聞きましたね?騎士団全員で見つけ、救出要請をしてください」

「は!」

 騎士が素早く動き出す。




 ◇





 盗賊のアジト

「ゲへへ、おい、お前ら、こいつを押さえつけろ。」


「やめて!いや!」

 ルナは思いっきり抵抗した。


「おい、こいつの手足に麻痺の魔法をかけろ。泣き叫べるように手足だけにしろよ!」

 ルナは魔法をかけられ、思うように身動きが取れなくなった。


「げへへ!感謝しろよ。殴っておとなしくしてやっても良かったんだ。だがお前を毎日毎日飼って可愛がってやるために殴らないでいてやったんだ」


「今までさんざんやってくれたなあ!だがそのおかげで俺達盗賊は結束した。これからもっと規模を大きくする」

「夜だけじゃねーぜ。朝も昼もかわいがってやる!がはははははは!」


「は!ここじゃそんな上品なドレスは必要ない!」


 びりびりびりーーー!

 ルナの服が引き裂かれる。

 ルナは魔法で動きを封じられただけでなく、数人の盗賊に手足を押さえつけられて、身動きが取れない状態だった。


「やめて!いや!いやああああああああああああああ!」

「ゲへへへ!いい声で鳴きやがる!これから気絶して動かなくなるまでかわいがってやるよ!」





 ◇





 少し前、ウインは素早く盗賊のアジトを見つけていた。

「ここだな。ルナの反応がする」

 ルナの居る部屋まで最短距離で近づいて行く。

「な、なんだてめーは!何しに来た!」


「おい、斬り捨てろ!」

 30人ほどの盗賊が武器を構える。



 ウインは無言で進路上の盗賊を斬り捨てた。

「ひ!ひいい!」

 残った盗賊はウインから一目散に逃げだす。


 ウインは走ってルナの元へと向かう。

 扉を蹴り壊し、進路上にいる盗賊はすべて切り倒した。


「ルナ、助けに来た」

「ああ!ウイン様!!」

 ザン!

 ザン!

 ザン!

 ザン!


 ウインはあっという間に部屋にいる盗賊を斬り倒した。


 ルナを毛布でくるむと、あっという間に盗賊のアジトから脱出した。

 ウインを追って来ようとする者は一人も居らず、皆がウインを恐れて逃げ出した。


 ルナはウインに服を着せてもらいおんぶされながら王城への帰路についた。


「大丈夫だったか?」

「怖かったですうう。でも、ウイン様が来てくれて本当に助かりました」

 ルナはウインにしがみつき、震えていた。


「ウイン様、ありがとうございます。ぐすん!ぐすん!」

 ルナは恐怖から解放され、涙を流した。


 ウインは、しがみついたルナの手を優しく握った。

 ああ、ウイン様の背中、温かい。もう少しこのままでいたい。





 ◇





 アーサー王国王城

「離せええええ!ルナたんを助けにいくのだああ!!!」

 王城は混乱していた。


「王よ!ウイン殿がルナ王女を救出し、今この城に到着しました!!」


「なんだと!ルナたんは無事か!」

 王は剣を放り出して城の入り口へと向かう。





「ルナたん!!」

「お父様、私は大丈夫です。危ない所をウイン様に助けていただきました」


 ウインはルナをアーサー王に引き渡すと、素早くバックステップをした。

「それでは帰ります!お邪魔しました!」

 早口でしゃべりながら

 反転ダッシュでその場を後にした。


「ウ、ウイン様、私を連れて行ってください!!」

 しかしウインはすでにその場から消えていた。


「ああ、ウイン様!!」


 その様子を見ていたアーサー王は決心した。

 ルナたんの運命の人が見つかった!

 ウイン、彼にならルナたんを任せられる。

 しかし、逃げるように帰ったな。


「権力者への拒否感か」

「これは思ったより深刻なようですな」

 大臣は困ったような顔をした。


「ルナたんには、ウイン殿と結婚してもらいたい」

「……アーサー王、今ルナ様とウイン殿が結婚してほしいと言いましたか?」

「言ったが何か?」


「いえ、意外だったもので、てっきり、ルナ様を結婚させないおつもりかと思っておりました」

「私はルナたんの幸せを願っている。それと、ウイン殿との友好を深めておきたい」

「素晴らしいお考えです。私も出来る限り協力いたします」

 大臣は王に深々と頭を下げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る