不平等という平等

 この世界に、完璧な人間など存在しない。


 出来のいい人間と悪い人間が、ただ存在しているだけだ。


 そして、残念なことに僕は出来のいい人間ではない。


 どう甘く見積もっても出来が悪くて、劣等感ばかりが積み重なっている。


 しかし、出来の悪い人間が存在しなければ、


 出来のいい人間というのは成立しない。


 ただの引き立て役であったとしても、役割が何もないよりはいいだろう。


 だから僕は、自分の出来の悪さを認めることにした。


 認めるだけではなく、それが自分なのだと受け入れることにした。


 もって生まれた才能も取り柄もなくて、努力することも頑張ることもできない。


 そんな自分を変えようともしなくて、最初から自分の可能性をあきらめてる。


 もし仮に何かあったとしても、それはダイヤの原石ではないだろう。


 ちょっと珍しい形の石ころ程度で、どんなに磨いてもダイヤに変わりはしない。


 それとも、磨き続けていれば石ころも多少は輝いていたのだろうか。


 その答えを知るにはもう遅く、まだこれからだなんて思える情熱の炎もない。 


 たまに小さな火が胸の中にともっても、すぐに降りだす雨のせいで消えてしまう。 


 ずぶ濡れになった僕は膝を折り、うずくまって震えることしかできない。


「……申し訳ないけど、ごめんなさいとしか言えないです」


 僕にはきっと、もう何もない。


 でも、だからこそ思う。


 僕にないものをもっている人は素晴らしいし、

 

 その人たちが幸せになってくれたら十分だ。


 そう考えるだけで、僕の冷えきった世界に温かな光が射しこむ。


 夢や幻のようなものであっても、確かに感じられるのなら現実と変わらない。


 出来の悪い僕でも、手に入れることのできるものがある。


 その事実だけで僕は満足だし、幸せを感じながら逝くことができる。 


 残念なことに選んではもらえなかったけど、


 一度は神様の手に持ってもらえたのだから。

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