家族の絆
友達よりも恋人よりも家族が大切です。
そんなことを語る人をテレビで見るたびに、
僕は別世界の人を見るような気分になってしまう。
彼らの感覚がまったく理解できないし、違う国の言葉よりも耳に馴染んでこない。
家族の絆というものがわからなくて、それが失われた結果ばかりを知っている。
そんな人生を送ってきて、どうして大切に思うことができるだろうか。
だけど、それは同時にひとつのことを物語ってもいる。
「かけがえのない存在ですし、やっぱり家族が一番ですよ」
そんな言葉が別世界のものに感じられる僕は、
彼らが知らない世界を知っているということだ。
だからといって何の自慢にもならないし、
何かの役に立つなんてこともないだろう。
少なくとも、生きていくうえではマイナスにしか働かない。
実際、何度も足をひっぱられているし、いつも苦労させられている。
しかし、それでもいいと僕は思っている。
家族の絆を知らない。
大切な存在だと感じたこともない。
知りたくても、感じたくても。
だけど、そんな僕だから知れたことがある。
この世界に住んでいなければ、出会えなかった人たちがいる。
だから、僕はかまわない。
恋人よりも友達よりも家族が大切です。
そんなふうに思うことができなくても、誇らしげに語ることができなくても。
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